自宅の建て替えを機に家づくりについて調べ続けてきて 5 年以上になり、当サイトの記事も 300 を超えました。あまり難しいことは書いていないつもりですが、なかには多少の前提知識がないとわかりにくいことも書いているかもしれません。
そこで、初めて読んでいただける方の参考になればと思い、今だからこそ思う、家づくりを考え始めた頃の自分に言いたいことをまとめてみました。
ここではさわりだけ紹介するので、詳細は各セクションでリンクしている関連記事をお読みください。
(なお、このページやリンク先の内容は随時見直す予定です。)
住宅業界は大手が良いとはかぎらない
家づくりを考え始めた頃は、こう考えていました。
- 高価格な大手ハウスメーカーの住宅は技術的にも最先端に違いない
- 改正を続けてきた建築基準法に準拠した最近の住宅に問題はない
でも今は、そうは思いません。大手ハウスメーカーの住宅は魅せ方が上手なだけで、欠点は探せばいくらでも見つかります。住宅性能評価の基準で見ると最高レベルであり、一般的な建売住宅よりは高性能ですが、その基準を上回る住宅を作っているのはむしろ、一部の先進的な工務店・設計事務所のほうです。
国の基準で最高等級というのはすごいと思われがちですが、いろいろ勉強した結果、気密性能・断熱性能に関しては国の基準で十分だとは思えません(後述)。大手ハウスメーカーや業界団体には国の基準強化に抵抗できる政治力もある、ということも念頭に置いておく必要がありそうです。
また、最近の住宅は、見る観点によっては、必ずしも昔の住宅より優れているわけではありません(後述)。耐震性に関しては少しずつ改善しているとは思いますが、住宅に関するあらゆる選択にはメリット・デメリットがあり、すべてが完璧な住宅仕様などはありません。
どんなタイプの住宅会社がどのような住宅を建てられるのかを知り、できるかぎり各工法の特徴を理解したうえで、家族全員が幸せになれる住宅会社を見つけることが肝心だと思います。
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快適な住宅には高断熱であることが不可欠
昔の木造住宅の生活体験から、寒くない住宅に住みたい、という思いは強くあり、以前はこう考えていました。
- ペアガラスの最近の住宅なら十分暖かいに違いない
- 小難しい高断熱住宅オタクになるほどの暇はないし、その必要もない
いま思うと、暖かい住宅とは何か、以前はよくわかっていませんでした。今ならば、こう答えます。暖かい住宅とは、家中の温度差が小さい住宅である、と。
そんな住宅を実現するカギは 2 つあります。北海道レベルの高い断熱性能と、連続暖房です。
断熱性能が高いほど、家中の温度差は小さくなって体感温度が上がるので、本当に快適になります。しかし、従来どおり、寒くなってから一部の空間だけ暖める方法(間欠暖房)では、温度差を小さくするのにも限度があります。快適性を追求すると連続暖房は欠かせないし、その場合、暖房方法だけでなく、効果的な間取りまで変わってきます。
「最近は住宅の省エネ基準が上がっているので十分ではないか」と思うかもしれません。しかし、この基準についてよく確認すると、寒冷地では連続暖房が前提となっているのに対し、温暖地では間欠暖房が前提となっています。温暖地の一般的な住宅会社も、間欠暖房を前提とした家づくりを行っています。
このことが、温暖地でふつうに家を建てるだけでは高断熱住宅の恩恵を十分に受けることができない大きな理由です。
温暖地でこの恩恵を受けるためには、このことに気づいている数少ない住宅会社を選ぶか、自分で工夫するしかないのです。
自分で工夫する場合、知っておいたほうがよいことは山ほどあります。望ましい断熱レベルとそのための初期費用、効果的な暖冷房方式とランニングコスト(電気代)の関係、気密性能や換気の影響などです。
なお、高断熱住宅というと、高価格な印象があるかもしれません。スウェーデンハウス、一条工務店、三井ホームなどの住宅は決して安くはありません。しかし、工夫次第で安く建てることはできるし、電気代を含めたトータルコストやその恩恵を考えれば、むしろ安いともいえます。
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高断熱住宅に適した暖冷房方法は?
高断熱住宅では生活が変わります。ただし、一口に高断熱住宅といってもいろいろな暮らし方があり、目的によって最適な暖冷房の方法も変わります。
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一番低コストな方法は、ただエアコンを連続運転する方法です。高断熱住宅に必要なエアコン能力は小さいので、初期費用もかかりません。
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ただし、全部屋の温度を同じにするためには、間取りなどさまざまな工夫が必要になります。
三井ホームなどではだいぶ前から全館空調というシステムを提案しています。
しかしこれは費用などの問題もあるため、最近ではこの中間的な、安価な全館空調システムが広まってきています。
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耐久性を考えると高気密・高断熱住宅に行き着く
住宅が長持ちするかどうかは、木材の乾燥がしっかりできているかにかかっています。これには、住宅の断熱・気密仕様と暖房の使い方、適切なメンテナンスなどが関係してきます。
外気温と室温が変わらず、すき間の多い低気密な住宅では、結露が発生しないので住宅は長持ちします。しかしこれでは不快なので、暖かい家にしようとすると、温度差が生じるところで結露が発生するので、その対策がどうしても必要になります。
重要なのは、軸組工法であれば、まず適切な「気流止め」です。そのうえで、高気密であることや、通気層工法、ある程度の窓の断熱性能も要求されます。
しっかりと対策された高気密・高断熱住宅は、長持ちする住宅でもあります。それなりに快適に長く住める住宅を建てたいならば、H11次世代省エネ基準(H25省エネ基準、H28省エネ基準相当)レベルは必須です。
▶ 結露が発生する条件および対策
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気密性能はやっぱり大事
一般的な住宅会社で気密について聞いてみても話にならないほど、温暖地の住宅業界では気密性能が軽視されています。しかし、断熱と換気の効果を高め、快適な湿度をコントロールするためには欠かせない要素です。
▶ 気密性能を示す相当隙間面積(C 値)は意味がない?
▶ 気密性能はどこまで求めるべきか(C値)
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耐震性能も欠かせない
家や家族を守るためだけでなく、上記の高気密・高断熱住宅のメリットを受け続けるためにも、高い耐震性能は必要と考えています。
▶ 耐震等級3を超える耐震性能を求める理由
▶ 地震の繰り返しに耐える住宅とは(変位角と耐震性)
耐震性能は、工法だけで決まるものではなく、住宅ごとに確認する必要があります。木造住宅で耐震性を高めるカギは、耐力壁の量と質(壁倍率とバランス)です。そのため、壁を基本構造とする工法は有利な傾向があります。
▶ 鉄骨住宅 vs. 木造住宅
▶ 制震装置の費用対効果と間取りの制約を考える
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高断熱住宅の換気と湿度管理に関する注意点
全館空調を備えた高断熱住宅などでは熱交換型の第一種換気が採用することがありますが、特徴をよく知って採用する必要があります。
暖房費の節約効果は、実際には大きくないケースもあります。
また、湿度をコントロールしやすくなることは大きなメリットですが、この恩恵を受けるためには、高気密であることと、換気が適切に設計されていることが前提です。
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以上です。
その他は、全記事一覧などから気になった記事を読んでいただければ幸いです。よろしくお願いします。
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