地震の繰り返しに耐える住宅とは(変位角と耐震性)

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東日本大震災や熊本地震のように何度も繰り返す地震に耐えるために必要なことは何でしょうか。

中学生の時に習ったフックの法則を覚えているでしょうか。”ばね” の伸びが力に比例する現象を説明する法則です。この法則はすべてに当てはまるわけではなく、比例する範囲には限度があります。”ばね” は一定の限度(比例限度)までは力に比例して伸び、力を解放すれば元に戻ります。しかし、ある限度(弾性限度。比例限度より大きい)を超える力を加えると、力を解放しても元の状態には戻らなくなります。このときの “ばね” には、一見損傷はなくても、実際には小さな破壊が発生しています。

住宅の耐震性についても、この現象から考察することができます。住宅の力学的挙動は単一の弾性材料である “ばね” ほど単純ではありませんが、ミサワ MJ ホーム(木造軸組工法)が、力と変位の関係を示す以下のグラフを公開しています(★は書き加えたものです) 。

MJウッドの耐震性試算値

このグラフの横軸の「変形角」とは、水平方向の変位量を高さで割った割合のことです。たとえば、高さ 2m=200cm のある点が地震で 1cm 水平に動いたとすると、その変形角は 1/200 となります。層間変形角と呼ぶこともあります。

フックの法則が成り立つ比例限度は 1/200 程度で、1/120 以上の変形が生じる力を加えると構造体の損傷が発生することがわかります。1/200 ~ 1/120 の範囲では、構造体に影響は出なくても、内装材が損傷を受ける可能性があることもわかります。内装材の損傷とは、石膏ボードの釘の浮きや割れ、壁紙(クロス)の “しわ” や切れが生じることを指します。建物の構造上の強度には影響しませんが、程度によっては補修が必要になります。外装材も、種類や工法によっては損傷を受けることがあります。

ここで “ばね” の力と伸びの関係を当てはめて考えてみると、変形角 1/120 までの地震力であれば、地震が収まれば建物は元の状態に戻るものと推測できます(内装材の損傷は受けますが)。つまり、何度も繰り返し地震力を受けたとしても構造上は劣化しないということです。一方、1/120 を超える変形が生じる地震力を受けると、構造体内部が破壊されて脆弱になり、繰り返し地震を受けると破壊が蓄積されてどんどん弱くなると考えられます。

この関係を理解すると、どの程度の耐震性を確保すればどのくらい地震に耐えられるかが大まかに予測できるようになります。たとえば、耐震等級 3 の木造軸組工法であれば、大地震(おそらく阪神レベル)が起きても変形角は 1/120 以内に収まるため、内装材の損傷が発生することはあっても、何度地震を受けても倒壊する可能性は低いことがわかります。また、耐震等級 2 では、大地震が発生すると 1/120 以上の変形が生じるため、何度も同レベルの地震を受けると被害が増していく可能性があることがわかります。

グラフからは、制震装置(MGEO-N)があると変形に対して強くなることもわかりますが、耐震性能を上げることでも、同様に変形に対して強くなることがわかります。つまり、耐震性能が非常に高い場合、制震装置がある場合と同様に、変形に対しても、繰り返しの地震に対しても強くなるということです。

ちなみに、グラフの★は、制震装置なしの木質パネル接着工法のミサワホームの耐震強度の参考値です(詳細はこちらの記事を参照)。また、枠組壁工法(ツーバイ)は標準で耐震等級3を確保でき、大まかに言って木造軸組工法より2割程高い耐震性があります。このレベルであれば、大地震が発生しても 1/120 未満の変形に抑えられるため、多くの場合、補修の必要なくそのまま住み続けられることが期待できるでしょう。

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