エアコンを使わない場合の室温と外気温の温度差のことを自然温度差と呼び、「高断熱住宅は暖かくて快適」という宣伝にときどき使われます。また、エアコンや除湿器・加湿器を使わない場合の室内絶対湿度と外気絶対湿度の差のことは、私が勝手に自然絶対湿度差と命名しています。
詳しくは以下の記事のとおりです。
参考
・自然温度差の注意点とメリット
・自然絶対湿度差を考える
この度は、これらを測定し、その数値について検討してみました。
自然温度差と自然絶対湿度差の測定
自然温度差は通常、シミュレーション上の理論値ですが、実測もできます。わが家は全館空調なので空調を使わない時間というのがあまりないのですが、9月の電気使用量データを見ていたら、ちょうど丸一日近く全館空調が動いていない時間帯を発見したため、その期間から自然温度差と自然絶対湿度差の値を計算して検討したいと思います。
居室の温湿度データは SwitchBot温湿度計(紹介記事)で常に記録しているので、そのデータと近所の気象データを利用しました。
9月後半のこの日の天気はほぼ曇りで気温が安定していたため、冷房が不要だったようです。
まず紹介するのは、わが家の自然状態(換気のみ、冷暖房なし)の室温と外気温のグラフです。
外気温が下がっても室温はあまり下がらず、安定しています。
このため自然温度差は時間によって異なりますが、この期間で平均すると室温が 24.7 度、外気温が 19.9 度であり、平均の自然温度差は 4.8 度となりました。
次に紹介するのは、わが家の自然状態(換気のみ、除加湿なし)の室内絶対湿度と外気絶対湿度(g/㎥)のグラフです。
こちらは多少外気の影響を受けている感じがしますが、室内のほうが常に一定程度湿度が高くなっていることは確認できます。
この期間の平均絶対湿度は、室内が 14.5g、外気が 11.5g であり、自然絶対湿度差は 3.0g/㎥ となりました。
理論値と測定値の検討
今回の自然温度差と自然絶対湿度差の測定値は理論上の数値と比べ、どうだったのでしょうか。
今回の自然温度差について
測定した自然温度差は約5℃でしたが、理論上の自然温度差を計算し、比較してみたいと思います。自然温度差は理論上、次式で表されます。
自然温度差 =(日射取得熱 + 内部発熱)÷ 総熱損失係数
今回は曇りだったので日射取得熱は少なく、約5℃の自然温度差は日射取得熱の多い冬季より低く、最低レベルと考えられます。仮に今回の日射取得熱をゼロと仮定すると、内部発熱はどのくらいでしょうか。
内部発熱は、家電等の電力消費に伴う発熱と、人体からの発熱を考えます。家電等の発熱は、一カ月の電気使用量 [kWh] を時間 [h] で割ると、730W だったので、これを採用します。人体発熱は、平均 2 人在宅で 1 人 100W とすると、約 200W になります。合計で 930W です。
総熱損失係数は、Q 値× 床面積で、わが家の場合、だいたい 230 [W/K] です。
ここから計算すると、理論上の自然温度差は 4 ℃。大雑把な計算なのに、測定値とのズレは想定ほど大きくありません。実際にはガス使用による発熱や多少の日射取得熱があるでしょうから、納得できる数値です。
この自然温度差は冷房期には少ないほうがよく、適温期には通風が有効です。
参考 高断熱住宅は暑くてエアコンが欠かせないという問題【中間期の暑さ対策】
ここまで調べると冬の日射取得熱が多い時期(最大)の自然温度差も少し気になりますが、窓や間取りによってマチマチだし、冬に長期にわたって暖房を止めるのは嫌なので、測定の予定はありません。
今回の自然絶対湿度差について
自然絶対湿度差は、3 g/㎥ となりましたが、理論値と比べるとどうでしょうか。
理論値は生活での放湿量の推定が困難ですが、一般的な数値での計算例は自然絶対湿度差の記事で計算済みです。
換気回数が 0.5 回/h なら、自然絶対湿度差は 3.4 g/㎥ 前後とのこと。わが家の場合、換気量が多いため、もっと少なくなるのは当然なので、3 g/㎥ というのは妥当なところでしょう。
絶対湿度差 3 g/㎥ というのは、室温23℃では相対湿度 15% 分に相当し、結構あります。このおかげで11月頃までは加湿器なしでも問題ありませんが、12月中には加湿器が欲しくなってきます。わが家の場合。
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