重量絶対湿度と容積絶対湿度の計算ツールで使用している計算式について補足します。
計算式がわかれば、Excel を使って自分で計算したり、関数電卓や Google 検索バーに式を入力して計算したりすることができます。
重量絶対湿度の計算式
重量絶対湿度は、「乾燥空気の質量に対する水蒸気の質量の比」であり、混合比(mixing ratio、以下「m」)とも呼ばれます。
この式は、Wikipedia の「重量絶対湿度」の項、およびWikipedia の「混合比 (気象用語)」で解説されています。
これによると、重量絶対湿度(m)は、水蒸気と乾燥空気をそれぞれ理想気体とみなして近似すれば、
\(m\approx \dfrac{0.622e}{P-e}\) [kg/kg] ・・・(1)
と近似できます。ここで、e は水蒸気分圧、P は空気の圧力 [hPa] です。
この m の値は小さすぎるので、分子を 1000 倍して単位を変えると、
\(m\approx \dfrac{622e}{P-e}\) [g/kg] ・・・(2)
とも表現できます。こちらをメインに使用します。
Wikipedia の「飽和水蒸気量」によると、水蒸気分圧 e は、飽和水蒸気圧 e(T) に相対湿度 RH [%] をかけることによって求めることができます。
すなわち、
\(e=e\left( T\right) \times \dfrac{RH}{100}\) ・・・(3)
ということです。
飽和水蒸気圧 e(T) は気温 T [℃] で決まり、Tetens(1930)のパラメータ値によるAugust他の式により、次式で近似されます(より複雑な式は多数あります)。
\(e\left( T\right) =6.1078\times 10^{\dfrac{7.5T}{\left( T+237.3\right) }}\) ・・・(4)
1式にまとめた計算式
以上より、重量絶対湿度 m [g/kg] は、(2)式に(3)式と(4)式を代入することにより、強引に次式で表すことができます。
\begin{aligned}622\times 6.1078\times 10^{\dfrac{7.5T}{\left( T+237.3\right) }}\times \dfrac{RH}{100}\\ m=\dfrac{}{P-6.1078\times 10^{\dfrac{7.5T}{\left( T+237.3\right) }}\times \dfrac{RH}{100}}\end{aligned}
これを Excel などの表計算ソフトで計算できる形式で表すと、次のようになります。
622*(6.1078*10^(7.5*T/(T+237.3))*RH/100)/(P-(6.1078*10^(7.5*T/(T+237.3))*RH/100))
関数電卓がなくても、3種の変数に値を代入して各種検索サイト(Google、Bing、DuckDuckGo など)の検索バーに入力すれば、同じ計算を行うことが可能です。
Excel ですぐに使える計算式
もっと手っ取り早く利用したい方のために、以下の状況の Excel 式も紹介しておきます。
この場合(B列に気温、C列に相対湿度があり、D列に重量絶対湿度の計算結果を表示したい場合)、1 気圧を 1013.25 hPa に固定した Excel 式は次のようになります。
=622*(6.1078*10^(7.5*B2/(B2+237.3))*C2/100)/(1013.25-(6.1078*10^(7.5*B2/(B2+237.3))*C2/100))
この式は、気温と湿度が並んでいる列さえあれば、どこであっても次の方法でカンタンに応用できます。
- この式をコピーし、Excel の D2 のセルに貼り付ける
- D2 のセルをコピーし、気温と湿度のデータの右に貼り付ける
実際に使ってみる方は、計算が合っているかを確認するため、以下の表などと照らし合わせてみることをお勧めします(単位 g/g にご注意ください)。
容積絶対湿度の計算式
ついでに、容積絶対湿度(Volumetric Humidity:VH)の計算式も説明しておきます。
Wikipedia の容積絶対湿度の項によると、容積絶対湿度 VH [g/m3] は「飽和水蒸気量に相対湿度をかけた値に等しい」とあります。
すなわち、容積絶対湿度 VH [g/m3] は、飽和水蒸気量 a(T) と相対湿度 RH [%] を使用すると、次式で表すことができます。
\(VH=a\left( T\right) \times \dfrac{RH}{100}\) ・・・(5)
飽和水蒸気量 a(T) は、Wikipedia の「飽和水蒸気量」によると、次式で示されます。
\(a\left( T\right) =\dfrac{217\times e\left( T\right) }{T+273.15}\) ・・・(6)
ここで使用されている e(T) は飽和水蒸気圧のことで、前出の(4)式のとおりです。
1式にまとめた計算式
したがって、容積絶対湿度 VH [g/m3] は、(5)式に(6)式と(4)式を代入することにより、強引に次式で表すことができます。
\(VH=\dfrac{217\times 6.1078\times 10^{\dfrac{7.5T}{\left(T+237.3\right) }}}{T+273.15}\times \dfrac{RH}{100}\)
変数は気温 T [℃] と相対湿度 RH [%] の 2 つだけです。
Excel などの表計算ソフトで計算できる形式で表すと、次のようになります。
217*6.1078*10^(7.5*T/(T+237.3))/(T+273.15)*RH/100
ちなみに、(6)式の係数 217 は、216.7 としている計算式もありました。
Excel ですぐに使える計算式
もっと手っ取り早く利用したい方のために、以下の状況の Excel 式も紹介しておきます。
この場合(B列に気温、C列に相対湿度があり、D列に容積絶対湿度の計算結果を表示したい場合)、Excel 式は次のようになります。
=217*6.1078*10^(7.5*B2/(B2+237.3))/(B2+273.15)*C2/100
前記の説明と同様、D2 のセルにコピペした後、目的の場所にコピペして使えます。
ご参考までに。
