断熱性能はどこまで求めるべきか(Q値とUA値)

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断熱性能はQ値(熱損失係数)またはUA値(外皮平均熱貫流率)で表します。Q値とUA値は計算方法が異なり、各ハウスメーカーは自社に有利な方の数値を使って宣伝しています。これらの違いは別の記事にまとめましたが、実際のところ、どの程度の数値であれば高断熱と言えるのでしょうか。断熱性能を高くするには費用がかかるため、どこで折り合いをつけるべきなのでしょうか。

断熱性能の必要性は寒冷地ほど高くなりますが、ここでは関東以西について考えてみます。

以下の説明は、エコ住宅で定評ある西方設計の西方里見氏の著書『最高の断熱・エコ住宅をつくる方法』の記述を参考にしています。

Q=2.7、UA=0.87:次世代省エネ基準レベル

これは関東で断熱性の最高等級4を得られるレベルです。最高等級と言えども基準が緩いだけなので、実際は家の中に温度差が生じます。トイレや脱衣所で寒さを感じるかもしれません。窓からくる冷気で足元が冷え(コールドドラフト現象)、床の温度が室温より低いので体感温度は余計に低くなります。吹き抜けがあるとより寒さを感じやすくなります。冬季には結露も問題になります。もし、この断熱性能で家全体を暖房するとしたら、部屋ごとに暖房する(以下、個別暖房)場合よりも倍のエネルギーが必要になります。必然的に個別暖房を採用することになり、ヒートショックのリスクがあります。昔の住宅よりマシとはいえ、高断熱・高気密住宅のメリットの多くは受けられません。残念なことに、多くのハウスメーカーの住宅はこのレベルにあります。

Q=1.9、UA=0.56:次世代省エネ基準の東北レベル

西方氏によると、関東以西ではこのレベルで「別の世界であるかのような快適な室内環境」がもたらされるそうです。足元と室温の温度差が少なくなり、結露も発生しにくくなるものと思われます。ただし、家全体を暖房した場合、個別暖房よりも高い光熱費がかかってしまいます。光熱費をあまり重視しない人や、日中家を留守にするために全館冷暖房を希望しない人には十分なレベルかもしれません。ちなみに、ネット・ゼロ・エネルギーハウス(ZEH)の基準はUA=0.60以下です。

なお、高断熱化にかかる初期費用と冷暖房費などを含めたトータルコストが最安になるのはこのレベルです。詳細はこちらの記事で説明しています。

Q=1.6、UA=0.46:次世代省エネ基準の北海道レベル

家全体を暖房しても、個別暖房と暖房エネルギー消費量が同じになります。エネルギーを浪費することなく、家全体を暖房することで大きなメリットが得ることができます。昔から高断熱に対応しているセキスイハイムのグランツーユーで建てた住宅はこのレベルだと思われますが、クチコミを見ると、暖かさが実感できておおむね満足しているようです。ただし、エアコンを複数台用意して間欠運転する方が多いので、1台で連続運転するとどうなのかという意見はなかなか見当たりませんでした。

Q=1.4、UA=0.4前後:カナダのR-2000住宅レベル

暖房エネルギー消費量がQ=1.6の3分の2程度になります。全館冷暖房を行っても冷暖房費を抑えられるため、エネルギーを浪費しているという負い目を感じる必要がありません。スウェーデンハウスで建てられた家はだいたいこの性能なので、そのクチコミが参考になります。夏はエアコンを効かせないと暑いというクチコミが多々ありますが、日射対策が不十分なことが原因です。

Q=1.0、UA=0.35前後

暖房エネルギー消費量がQ=1.6の半分程度になります。日射の管理を工夫すれば、パッシブハウス並みのエコ住宅を実現することもできます。

Q=0.7、UA=0.3前後:パッシブハウスレベル

暖房をほとんど必要としない究極のエコ住宅です。窓からの日射熱の影響を受けやすいため、春夏秋は遮熱を徹底するよう工夫する必要があります。

関東以西の温暖地では日射エネルギーが強いため、Q=1.6程度でも南面の窓を大きくとる(幅1間半を4つほど?)ことでパッシブハウスレベルの暖房負荷に抑えることができるそうです。ただし、夏の冷房コストは Q 値が高いほど高くつきます。関東では一般に冷房より暖房に多くのエネルギーを必要としますが、冷房コストを下げるためには日射の管理に注意を払う必要があります(日射管理の方法の詳細はこちら)。

以上を踏まえると、関東以西でも北海道レベルのQ=1.6を切りたいと思うのではないでしょうか。光熱費やエコ、費用対効果を考えると Q=1.4 程度が理想、というのが私の意見です。

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