湿度は相対湿度で表すことが一般的ですが、除湿や加湿について考える場合は絶対湿度が便利です。ただ注意が必要なのは、絶対湿度には容積絶対湿度と重量絶対湿度の 2 種類があるということです。
容積絶対湿度は空気に含まれる水蒸気の密度で、単位は g/m3 です。
重量絶対湿度は乾燥空気(Dry Air)の質量に対する水蒸気の質量の比であり、単位は g/kg(DA) または kg/kg(DA) です。g なのか kg なのかにも注意が必要です。
詳しい説明は Wikipedia の「湿度」の項目をご覧ください。
この 2 種類の使い分けははっきりしておらず、混在しています。計算式は Wikipedia にも書いてあるので、これを参考に以下の計算フォームを作成してみました。
計算式の詳細については、次の記事をご覧ください。
・絶対湿度の計算式について【Excelで使用可能】
※この上に計算フォームが表示されていない場合、バグが発生しています。手動で修正する必要があるため、こちらのページから送信ボタンを押してお知らせいただけると大変助かります。確認次第、すぐに修正します。
重量絶対湿度の式は 2 つ見つかったので、両方の計算値を出せるようにしました。
どちらも結果はだいたい同じであり、どちらが正確なのかはわかりませんが、よく使われている湿り空気線図(Wiki)と比べると最初の式がフィットすることから、最初の式を【お勧め】としました。
単位は g/kg(DA) としましたが、kg/kg(DA) がよければ 1/1,000 にしてください。
重量絶対湿度は気圧の影響を受けますが、試算すればわかるように、大きな差は出ないので、既定値のままでも実用上は問題ないかと思われます。台風直撃時とか、標高の高いところでは多少影響します。
一定の温湿度に対する露点温度を調べたい場合、まず絶対湿度を計算します。次に、相対湿度を100%に設定して温度を下げていき、同じ絶対湿度になる温度が、露点温度です。重量絶対湿度を出してから空気線図を読み取る方法もあります。
絶対湿度の計算式として2通りの方法を掲載していましたが、高温域でズレが発生していました。
この問題は、「乾燥空気比」で割ることにより解決しました。この計算を含む詳細は次の記事で説明しています。
容積絶対湿度と重量絶対湿度の差
国際的に絶対湿度というと容積絶対湿度を示すようで、医療系では容積絶対湿度も使われていますが、空調関係でよく使われる空気線図は重量絶対湿度なので、建築系では重量絶対湿度がよく使われている傾向があります。調べていたら、1 つの論文内で統一されていないケースまでありました。
似たような指標であるにもかかわらず数値の異なる 2 種類の絶対湿度が共に使用され、しかも「グラム」としか表記されないことがあるのは非常にやっかいです。かんたんに換算できればよいのですが、この 2 種類の絶対湿度は温度と相対湿度に依存するため、単純に換算することはできません(追記あり)。
そこで、容積絶対湿度と重量絶対湿度とでどの程度の差があるのか、上記ツールで計算して比較してみました。
気圧、相対湿度を一定とした場合の計算結果は以下のとおりです。

青(容積)と赤(重量)、灰色(容積)と黄色(重量)とで比べてみてください。
ここからわかるのは、容積絶対湿度(g/m3)のほうが重量絶対湿度(g/kg(DA))より大きいということです。
ただし、単純に 2 g の差などとはいえません。割合でみると、容積絶対湿度のほうが 2 割ほど大きい傾向がありますが、その割合は高温になるほど小さくなるようです。
なんとも微妙な差です。
換算の詳細は次の記事をご覧ください。
【参考】住宅に快適な絶対湿度
気温や相対湿度は 1 日の間に大きく変動するものですが、外気の絶対湿度を計算してみると、日変動は意外と小さいことがわかります。問題は季節差で、日本では蒸し暑い夏の絶対湿度が非常に高く、低温になる冬の絶対湿度は非常に低くなります。地方によって差はありますが、この季節差は世界的にも激しいものです。空調を利用せずに換気した場合、家の絶対湿度は外気に近づき、夏も冬も快適とはいえない空気になってしまいます。
インフルエンザなどの流行は、相対湿度よりも絶対湿度と関連していることが多数報告されています。住宅の室内空気を快適に保つには、夏はエアコンで除湿し、冬は加湿を心がける必要があります。熱交換式第一種換気は高コストですが、この補助的な効果があります。
鵜野日出男先生はかねてより、夏の(重量)絶対湿度を 13 g/kg(DA) 以下(できれば 10 g/kg(DA))とし、冬は 8 g/kg(DA) 程度を目指すべきと提言していました(参考ブログ記事:ただしここにも重量絶対湿度と容積絶対湿度の混同による混乱が見られます)。
容積絶対湿度であれば、夏は 15 g/m3 以下、冬は 10 g/m3 以上を目指すとよいかもしれません。
追記:冬は 8 g/m3 以上というのが現実的で効果のあるラインだと思われます。
ただ、世に出回っている温湿度計のほとんどは、相対湿度(%)しか表示できません。温度によって大きく変動する相対湿度では、本当に乾燥しているのかどうかがイマイチよくわかりません。
絶対湿度を知りたい場合は、上記のツールを使用するか Excel などで計算する必要があり、リアルタイムで確認できず、不便です。
以下の温湿度計「みはりん坊W」は、安価ながら絶対湿度を表示することができます(商品説明の「乾燥指数」=「容積絶対湿度」です)。
デジタルの温湿度計は多数販売されていますが、絶対湿度を表示できる温湿度計はほとんどありません。
購入して使ってみたところ、数値は他の湿度計と比較してほぼ正確でした(アナログ式の湿度計は要注意)。
縦置きしにくい点だけが残念ですが、お勧めです。
なお、経時データを取得したい場合は、こちらの記事で紹介している温湿度計が便利です(絶対湿度は算出する必要があります)。
湿度関連
・空気線図でわかる相対湿度と絶対湿度、結露と乾燥の関係
・絶対湿度がわかる温湿度計(絶対湿度計)のメリット
・東京・大阪・沖縄・ハワイの夏を不快指数で比べてみた結果
住宅関連
・高断熱・高気密住宅は乾燥する?
・インフルエンザにかかりにくい絶対湿度を実現するためには高性能住宅が必須
・高断熱住宅で加湿器に頼らずに乾燥を防ぐ方法
除加湿関連
・湿度管理でカビ・ダニ・ウイルスを減らす!
・除湿能力・コストの比較【エアコン、除湿器、熱交換換気、エコカラット、デシカ】
・高断熱住宅に向く加湿器の選び方
・ダイキンの「うるる加湿」の効果が期待できない理由
コメント
いつも楽しみに拝見させていただいております。素人考えなのですが、空気は温度か高いほど膨張して密度が小さくなるので、立米あたりの重量が小さくなるため容積基準と重量基準の差が小さくなるのではないでしょうか。換算については、容積基準絶対湿度の値を標準的な空気の重量1.2g/Lで除してあげれば、とりあえずは算出出来るのかなと思います。松尾氏も同様の計算をしていましたよ。
ttp://matsuosekkei.blog85.fc2.com/blog-entry-2886.html
空気の体積は絶対温度に比例する(理想気体の状態方程式)のでご指摘のとおりです。計算すると 1 気圧での空気の密度は 0℃で 1.29、10℃で 1.25、20℃で1.2 [g/L] となるので、部屋の空気を考える場合、「容積絶対湿度は 1.2 で除すと重量絶対湿度になる」と覚えておくのが実用的ですね。追記させていただきます。ありがとうございます。
独学で、外気を加熱供給しての乾燥機の風量計算をしております。
やっと高温域で、重量絶対湿度ほぼ整合する計算式に出会うことができました。
ありがとうございます。使用させていただきます。
因みに、空気線図や高温域での重量絶対湿度に整合しているのは「下式」でした。
Wikipedia などから拾ってきた式であり、どのような違いがあるかも忘れてしまいましたが、下式が参考になったとのことで幸いです。湿り空気線図と比べると確かに下式のほうが適合しているため、下式を推奨することにしました。ありがとうございます。
【追記】後に式の順序を入れ替え、コメント欄の「下式」を上に表示するようにしました。