三井ホームの新しい全館空調システムについて【エアコン1台の全館空調】

ネット上ではまだ正式な発表が見つかりませんが()、三井ホームが実験を経て、ルームエアコン 1 台による安価な新しい全館空調システムを全国的にスタートさせたそうです。三井ホームを検討している方からパンフレット資料を拝見させていただきました(ありがとうございます)。

※追記:三井ホームからも「スマートブリーズワン」として正式に発表されました(広報 PDF)。

すでに体験できる住宅もあるようなので詳細は三井ホームのモデルハウス等でご確認いただくとして、ここではその概要と感想、YUCACO システムなどとの違い、共通する気になる点などを書いておきたいと思います。

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新しい全館空調システムの概要

新しい全館空調システムは、ルームエアコン 1 台(ダイキン指定?)で全館空調を行う仕組みです。パンフレットの図によると、2F に空調室を設けて普通のルームエアコンを設置し、そこから送風ファンとダクトで各部屋に空調された空気を送り込んでいます。熱交換気も採用しています。

ルームエアコン 1 台で全館空調というと、坂本雄三先生が係わっている YUCACO システムマッハシステムなどがありますが、三井ホームの新システムはこのマッハシステムによく似ています。

ルームエアコンとファンとダクト、熱交換気を組み合わようとするとこうなるのは自然なので、たまたま似てしまっただけかもしれません。が、マッハシステムは特許を取得しています。特許によりこうしたシステムの安価な普及が妨げられてほしくはありませんが、その関係は大丈夫なんだろうかと少し気になってしまいます。

従来の全館空調との違い

従来のスマートブリーズ(東芝またはデンソー)と比べて何が変わるかというと、200 万円くらいかかっていた初期費用が 130 万円程度になり、より高効率な最新のエアコンを採用できるためか、消費電力も 20% 削減できるそうです。

年に 1、2 回必要だったメーカーによるメンテナンス(年間 2 万円とか)の費用もかかりません。それに加え、他社を意識したのか 10 年保証まで付いています。

従来のスマートブリーズは高断熱住宅には大きすぎて非効率だと書いてきましたが、その点も解消されます。

ルームエアコンなので更新も簡単ですし、トータルコストは圧倒的に安くなります。もう、従来のスマートブリーズを選ぶ人はかなり減るのではないでしょうか。

ただし、1 台 7 役(冷房・暖房・加湿・除湿・換気・空気清浄・脱臭)をうたっていた従来のスマートブリーズからは 2 役が失われます。

脱臭加湿がありません。加湿については後で詳しく述べます。

また、新しい全館空調には空調面積 40 坪までという制約があります。階別の二世帯住宅などでは厳しいでしょう。これ以上になると従来のスマートブリーズになるようです。マッハシステムでは 65 坪などでも運用されているので、この制約はどうにかならないものかと思いますが、東芝やデンソーへの配慮なのでしょうか。

もう一つ気になったのが、図を見ると局所排気がないことです。図で省略されただけなのかもしれませんが、風呂やトイレの空気も熱交換換気に組み込まれている可能性があります。塩素系洗剤などを使うと熱交換素子の寿命が縮まるかもしれませんが、臭いの問題が解消されていればそのほうが熱収支や湿度管理の点ではずっと有利になりそうです。

参考
全熱交換型換気で熱交換されるのは一部だけという問題と対策
除湿能力・コストの比較【エアコン、除湿器、熱交換換気、エコカラット、デシカ】

他の安価な全館空調システムとの違い

全館空調ブームの近年では、従来の全館空調に代わる 100 万円前後の安価な全館空調システムがいろいろあります。それらとの違いを考えてみました。

マッハシステムとの違い

マッハシステムの仕組みの図では空調室が小屋裏にありますが、三井ホームの場合は 2F です。ただしマッハシステムでも画像検索すると 2F に空調室を設けるケースもあるようなので、大した違いではありません。

マッハシステムの場合、床下にも空調された空気を送り込むという特徴があります。床断熱の床下空間は確かに高湿になります(参考記事)。三井ホームは床には吸湿性のない断熱材を使っており、それで長期間まったく問題ないのかどうかはよくわかりませんが、マッハシステムはそこまで考えているという違いがあります(ただし空調費も少し増えると思います)。

また、マッハシステムでは排気口が複数ありますが、三井ホームの場合は図では一か所だけです。換気経路が計画どおりになるのかどうかもやや気になります。

YUCACO との違い

ヤマト住建などで採用されている YUCACO もまた、ルームエアコン 1 台で行う全館空調システムです。こちらも空調室にエアコンを設置して送風する発想は同じですが、基礎断熱にして床下空間を利用し、ダクトをあまり使用しない点に特徴があります。

YUCACO も良いシステムだとは思いますが、やや高コストな基礎断熱と屋根断熱を採用することになる点が少し気になります。床を暖めるイメージによって消費者受けが良さそうですが、床断熱の全館空調住人からすると高断熱住宅で全館連続暖房していれば床の寒さなど気にならなくなる人がほとんどだと思います(体験宿泊をお勧めします)。また、床下空間にカビが生えないように注意したりホコリを気にするのも面倒です。このため、個人的にはマッハシステムや三井ホームの新システムのほうがどちらかというと好みです(「マッハシステム」という名称は好みではありません)。

ちなみに YUCACO システムについての資料(PDF)を読むと、東京で Q 値 1.3、C 値 1 以下の高断熱・高気密仕様を採用しています。温暖地でもトリプルガラスくらいの仕様が理想的ということなのでしょう。これについては後で述べます。

Z 空調との違い

Z 空調は、ヒノキヤグループで採用している、天井埋込型エアコン 2 台を利用する全館空調システムです。

台風停電時に全館空調の完全停止を経験して大変だったので、故障時のことを考えると 2 台での運用のほうが安心です。

ただ、壁掛け式のルームエアコンのほうが選択肢は多いので、エアコンの機能にこだわるならルームエアコン式の全館空調が有利かもしれません。

参考
桧家住宅のZ空調について全館空調ユーザとして思うこと

エアコン 1 台での全館空調システムで気がかりなこと

三井ホームの新しい全館空調システムは、個人的には良いと思います。もっと早く、わが家を建てる前に開発してくれていたら、と悔しいくらいです。

ただ、居室のドア上などに CF(循環ファン、送風ファン)を設置すれば、ダクト不要でプライバシーを保ちつつ、もっと低コストな全館空調も可能だろうとも思います(間取りや換気扇の音には注意が必要です)。これならば、寝室の換気不足の問題に対応できるメリットもありますし、トリプルガラスにする必要性(後述)も大きくありません。

エアコン 1 台での全館空調で特に気がかりなのは、次の 2 点です。

湿度管理がうまくできるかどうか

現在のスマートブリーズプラスには加湿機能が付いていますが、それに加えて加湿器が必要になるほど、太平洋側の冬は乾燥します。前述のように局所換気がなく全熱交換換気で湿度を保持できるなら問題ないかもしれませんが、そうでないならやや気がかりです。全館空調では高気密が要求されるので、その点でも三井ホームはちょっと心配です(参考記事:全館空調に高気密が必要な理由)。

マッハシステムのように空調室に加湿器を置くことができれば効率的に全部屋を加湿できます(※)が、加湿器 1 台で足りないとなると給水が面倒でしょう。その点では、ダイキンの無給水加湿機能付きのエアコンを使用できるとよいかもしれません(外気の湿度が低いと加湿効果も落ちるので大きな期待はできない?)。

※ 加湿した空気をダクトに通すことに抵抗がある人もいそうですが、超音波式はともかく気化式の加湿器であれば問題ないと考えています。全館空調のダクトは室内にあるため、加湿された空気が急激に冷やされて結露が発生することは考えにくいからです。スマートブリーズの加湿機能も気化式です。そのために定期的なメンテナンスが必要になりますが、これは仕方ありません。

除湿についても、高断熱住宅では梅雨時や夏の夜間に冷房や弱冷房除湿で湿度を下げられないことがよく課題になります。

わが家の東芝のスマートブリーズの場合、温度を下げずに湿度を下げる再熱除湿機能があり、弱冷房除湿と比べて消費電力は約 1.5 倍(取扱説明書より)になるものの、快適な湿度を実現することができます(参考:夏の冷房の消費電力を抑えるプチ実験の結果)。逆に、ただの除湿機能や冷房モードでは、やや暖かいぐらいの気温のときに除湿はまったく効きません

そのため、梅雨時も部屋干しで洗濯物を乾かしたい場合などには特に、再熱除湿機能の有無が重要になってくると思われます。新しい全館空調システムのエアコンに採用可能かが気になるところです。

最近のエアコンには、再熱除湿が搭載されていないタイプが増えています。「再熱除湿=電気代が高い」というイメージが浸透したからか、ダイキンも再熱除湿から撤退し、「さらら除湿(新・ハイブリッド方式)」なるものを発表しています。これは少ない消費電力で除湿できるものの、室温の低下もあるため、高断熱住宅で梅雨時や夏の夜間にしっかり除湿できるかどうかはやや不安が残ります(価格.com の書き込みなどを読む限り難しそう…)。

【追記】かなりの高断熱にしないと温度設定が難しい?

前述のとおり、YUCACO では Q 値 1.3 程度が採用されています。ただの全館空調ならそれほどの断熱性能は必要ないないはず(参考)ですが、このレベルが推奨されているのはなぜでしょうか。

思うに、省エネのためもあるでしょうが、YUCACO などのような空調室を経由する全館空調システムの場合、かなりの高断熱にしないと温度設定が難しいのではないでしょうか。

一般的な全館空調なら温度センサーが居室にあるので設定温度と室温を同じにできますが、YUCACO などの空調室は暖房であれば居室よりも温度を高くする必要があり、エアコンの温度センサーも空調室になります(リモコンに温度センサーが付いているエアコンもたまにあります)。

設定温度を一定にしていて急に外気温が低くなった場合、従来の全館空調ならすぐに対応できますが、これらの全館空調では居室の室温は下がることが予想されます(実際、そういう感想が見つかります)。

このため、空調室経由の全館空調では、室温を一定に保つためには、ある程度外気温の変化に応じて空調室の設定温度を手動で上げる必要があるのではないでしょうか。タイマーで設定温度を変更できればよいですが、ルームエアコンにそういう機能は聞かない(アプリで可能?)ので、この調節は意外と難しそうです。ただ、この差は高断熱ほど小さくすることができます。Q 値 1.3 くらいが望ましいとされているのは、そういうわけなのではないでしょうか。

こう考えると、三井ホームの新システムでもトリプルガラスにアップグレードしたほうが無難な気がします。

以下の機能があるルームエアコンがあればよいのですが、すべて満たすものは現時点ではありません。

  1. 室温を下げない除湿ができる
  2. 設定温度を24時間プログラムできる
  3. リモコンに温度センサーが付いている
  4. 無給水加湿ができる
  5. 低出力時のエネルギー消費効率が高い

ちなみにスマートブリーズプラスIIは欠点も多くありますが、1~3 の機能は搭載されており、ダイキンのみの 4 はありませんが、水道管からの給水で加湿ができます(5 は不明)。

エアコンメーカーには、高断熱住宅の連続運転・全館空調に向いたルームエアコンを開発してほしいものです。4 はダイキンにしか採用できませんが、あったほうがマシかなという程度なので無くても問題ありません。3 は YUCACO や小屋裏エアコンなどの特殊な使い方以外では不要ですしうまく機能するかも不明ですが、技術的には可能なので選択できるようにすれば今後増える高断熱住宅において結構需要はあるのではないでしょうか。

コメント

  1. taikyu より:

    さとるパパさん

    ご無沙汰しております。
    エアコンのリモコンについてコメントされていたので我が家についてお伝えします。

    我が家は小屋裏エアコンでの冷房で、残念ながら再熱除湿機能はないダイキン製です。
    予定では必要なら床下エアコンで暖房を稼働して再熱除湿するつもりでしたが、
    冷気が1Fに予定外に下りず、できませんでした。。。
    ※逆にこれにより低温弱風冷房で室温が下がり過ぎずに除湿ができるという副産物はありました。

    それはさておき、ダイキン製は業務用なのでしょうか、ワイヤードリモコンがあります。

    これはリモコン本体に温度センサーがついており、エアコン本体もしくはリモコンのセンサー
    どちらでも使えるように設定変更が可能です。
    なので我が家は小屋裏から5m以上離れた2F階段あがってすぐにリモコンを設置して、
    その温度で小屋裏エアコンを稼働させています。
    これはとても便利で、床下エアコンの場合もエアコンの前にガラリなど設置し
    内部でショートサーキット気味になっても問題なく稼働してくれます。

    また記事を楽しみにしております。

  2. さとるパパ より:

    コメントありがとうございます。
    調べてみると、業務用エアコンにはリモコンに室温センサーが付いている機種が多いようですね。
    家庭用では旧SANYO製品で搭載されていたものの、最近は本体付近のセンサーが多く、富士通ゼネラルの「ノクリア」には室温センサー付きリモコンと再熱除湿の機能があるようです。

    わが家では再熱除湿が欠かせませんが、考えてみると小屋裏エアコンや YUCACO、スマートブリーズワンのようにエアコン設置空間の温度を居住空間より低くする場合には再熱除湿がなくてもしっかり除湿しやすいのかもしれませんね。適切なエアコンサイズを選定する必要もあり、温度と湿度のちょうどよい管理は奥が深いです。

    小屋裏エアコンで 1F が冷えなかった件は来年解決して記事にしていただけると参考になる人も多いと思うので、うまくいくことを願っております。

  3. はあちゃん より:

    さとるパパさま
    いつも参考にさせていただいております。
    新しい全館空調システムは、ルームエアコン 1 台(ダイキン指定?)とございますが
    ダイキンではない場合もあるのでしょうか?パナソニックとか?
    ハウスメーカー発表にはメーカー名について特に記載がございませんでした。
    何かご存知でしたら教えてください。

    • さとるパパ より:

      コメントありがとうございます。
      スマートブリーズワンの発表資料には明記されていませんが、エアコンの機能(自動掃除機能とアプリの遠隔操作)が一部紹介されていることと、価格や電気代(シミュレーション)の数字が出ていることから機種はある程度決まっているものと思われます。
      資料の中ではダイキン工業の調査結果が紹介されており、競合他社の名前を出すことは考えにくいことから、ダイキン製エアコンの可能性が高いと見なし、「(ダイキン指定?)」としました。
      消費電力が20%削減できるということで、スマートブリーズプラスII(東芝)のAPFが4.8なので、スマートブリーズワンはAPF=6くらいの機種と推測します。
      システム的に「指定機種でなければならない」ということはないと思いますが、三井ホームで施主選定エアコンを受け入れてくれるかどうかはよくわかりません。よろしくお願いします。

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