暖房負荷から必要なエアコン能力(kW)を計算するツール

エアコンを購入するときは、部屋に合った冷暖房能力のエアコンを選ぶ必要があります。

ここでは、エアコンの木造 6 畳などの表記に問題があることを紹介し、エアコンを選ぶ際に参考となる情報を提供したいと思います。

後半には、Q 値(熱損失係数)などから算出する暖房負荷を基に必要なエアコン能力を計算する方法(およびツール)も掲載しています。

このツールは主に高断熱住宅でエアコンを連続運転するケースを想定しています。その他の一般的な住宅で最適なエアコン能力を検討している方は、次の記事をご覧ください。

エアコン畳数と断熱性能の関係(一般的な住宅の場合)

スポンサーリンク

エアコン畳数は参考にならない

エアコンの仕様を見ると、暖房能力、冷房能力(2.2 kW など)の表記とともに、木造 6 畳用などの部屋のサイズの目安が書かれています。しかし、部屋のサイズはあくまで目安であり、これは当然、断熱性能や気密性能、日射条件、寒冷地かどうかなどによって変わってくるものです。

枠組壁工法住宅工事仕様書』によると、次の説明があります。

断熱等性能等級 4 の仕様においては、暖冷房設備の能力は、対象となる室の暖冷房負荷に応じたものとすること

この等級 4 とは、温暖地(地域区分 5 以上)で UA 値が 0.87 未満(Q 値 2.7 以下相当)ほどの断熱性能のことであり、最近の新築住宅の多くはこれに該当します。

実は、エアコンの木造~畳などの目安は、何十年も昔の低断熱の住宅を想定したものです。このため、高断熱住宅でこれを目安にエアコンを選定すると、能力過剰になってしまいます。本当は、もっと出力の小さいエアコンでも十分な効果を発揮できるのです(特に連続運転時)。

それでは、高断熱住宅のエアコン能力はどのように選べばよいのでしょうか。

エアコン能力を決める方法

エアコン選定支援ツールを利用する方法

電力中央研究所というところが、次のエアコン選定ツールを公開しています。

電力中央研究所 実際の使用環境を考慮したエアコン選定が可能な「エアコン選定支援ツール(ASST)」を公開

ここでは、居住地域の気候、部屋の広さ、好みに合わせて最適なエアコンを選定することができます。多くの要素を考慮して選定できるので、これはお勧めです。

ただし、断熱性能については、次世代省エネ基準(上記等級 4 相当)までしか考慮することができません。住宅の断熱性能がこれ以上の場合、別に計算が必要です。

暖房負荷から計算する方法

この計算方法として、『ホントは安いエコハウス』の著者、松尾和也氏が次の記事で紹介している概算式を紹介します。

エアコン選び 「余裕持って大きめ」は間違い
みなさんはエアコンをどうやって選んでいますか。木造か鉄筋コンクリート造か、畳数はどのくらいか――。これだけしかチェックしていないとしたら、過大な能力の機種を選んでいるかもしれません。住宅の断熱性能や

必要暖房能力 = (Q値 + C値/10) x その部屋の面積 x (設定室温 – その地域の年間最低温度)

これを利用した計算ツールを後半に設置しましたので、ご自由にお使いください。

ただし、この記事中でも説明されているように、この方法だけでエアコンを選ぶことには問題があります。以下に注意事項を示します。

暖房負荷から計算する場合の注意事項

日射が多く入る場合は冷房負荷のほうが高くなる

「設定温度と外気温の温度差」は夏より冬のほうが大きくなりますが、夏の冷房には日射熱の侵入を考慮する必要があります。多くの住宅では日射遮蔽がきちんと行われておらず、上記の方法では冷房能力が足りなくなることも多いようです。

北向きの部屋や窓が少ない部屋では問題ないと思われますが、西日が入る部屋などは特に日射遮蔽を徹底するか、計算より高い能力のエアコンを選定する必要がありそうです。

上で紹介した「エアコン選定支援ツール(ASST)」の結果も加味し、総合的に判断することをお勧めします。

参考
夏のエアコン連続冷房時の最大消費電力を調べた結果、再熱除湿はやはり高い
温暖地でエアコン能力を決めるのは暖房と冷房のどちらか?

間欠運転ではなく連続運転を想定している

この方法では Q 値を基に暖房能力を計算しますが、Q 値は家全体の平均的な熱損失を示す値であり、部屋別に使用する場合には注意が必要です。特に窓が多い部屋で使用する場合や、隣接する部屋と温度差があり影響を受ける場合などでは、負荷は計算より大きくなります。また、記事中には書いてありませんが、この式はおそらく間欠運転ではなく連続運転で使用することを想定していると思われます。間欠運転で使用する場合には、暖まるまでの時間を考えると、計算より高い能力のエアコンを選定する必要がありそうです。

参考 冬のエアコンの最大暖房負荷を実測してみた結果

エネルギー効率の観点でも優れている

エアコンの省エネ性(冷暖房効率)の観点からは、定格能力を多少下回る程度で運転するのが効率的だそうです。適正サイズを選ぶべきなのは、定格能力を大きく下回る運転では効率が悪化するためでもあります。

上記の計算では最低気温(最高の必要能力)で考えているため、平常時は定格能力以下で運転できることになります。このため、暖房だけでみると、この選定方法はちょうどよいのではないかと思います。ちなみにエアコンの最大能力は定格能力より大きいものなので、多少効率は落ちますが、ある程度の余裕もあります。

参考 高断熱住宅に最適なエアコン能力を検討する

エアコン能力の注意事項

エアコンの能力(kW)は冷房と暖房とで異なる点にご注意ください。

通常、エアコンの型番の上位2桁は冷房能力を示していて、「22」と入っていたら冷房能力が「2.2 kW」であることを示しています。暖房能力は冷房能力より高いものです。

エアコン以外の暖房方式でも使える

エアコン能力としましたが、他の暖房方式にも応用できます。

ただし他の電気暖房では COP が 1 なので、暖房能力=消費電力となり、エアコンよりずっと非効率です。

参考 エアコン暖房が低コストである理由

高断熱住宅の全館暖房に応用できる

このツールは、部屋の面積を住宅の延べ床面積に置き換えることにより、全館暖房に必要なエアコン能力の算定にも応用することができます。全部屋の温度を均一に近づけるためには ZEH レベル以上の断熱性能が必要になりますが、エアコン 1 台で全館暖房を行うことは十分に可能であり、非常に快適です(詳細:断熱性能はどこまで求めるべきか(Q値とUA値))。

計算ツール

補足情報

Q 値:UA 値(外皮平均熱貫流率)しかわからない場合は、Q = 2.67 x UA + 0.39 で換算できます(換算ツール)。この 0.39 は熱交換のない換気による熱損失に相当するので、熱交換型換気の場合は軽減できます。既定値(2.7)は、温暖地の次世代省エネ基準の値です。
参考 断熱性能を示すQ値とUA値の違いと注意点

なお、マンションの場合、Q 値も UA 値も不明です。区画の位置や玄関戸の材質、窓の種類が大きく影響します。ペアガラスなら 2 以下になりそうな気がしますが、コンクリートに蓄えられている熱も影響するのでやっかいです。
参考 マンションの断熱性能を考える

C 値:不明な場合、温暖地の次世代省エネ基準で 5.0 以下相当となっていることから、4 くらいの適当な数値を入れてください。C 値を測定しないほど気密性能を重視していない住宅では、壁全体に面材を貼る工法の木造住宅では 2 くらいになります。鉄筋コンクリートのマンションなら 1 くらいです。この計算では Q 値ほど大きく影響しないので、だいたいで OK です。
参考 工法ごとの C 値

床面積:空調を効かせる範囲の面積です。吹き抜けがある場合はその分の面積も加えます。1 畳はおよそ 1.65 m2 です(地域によって違うかもしれません)。

設定温度:20~24℃くらいが一般的です。気密・断熱性能が低いと足元が寒くなるため、室温をより高くする必要があります。
参考 高気密・高断熱住宅に関するまとめ

地域の年間最低温度:地域ごとの過去の気象データは気象庁のページで確認できます。

最後に

このツールの結果はあくまで参考情報の 1 つです。

私が思いつく問題点は上記の注意事項に書きましたが、その他にも想定外の問題がある可能性があります。問題にお気づきの際はコメントをいただけると幸いです。

ツールの利用については利用者の自己責任にてお願いします。

参考までに、断熱性能から冬の月暖房費を試算するツールもあります。

効率的なエアコンの選び方、使い方、床下エアコンの方法などについての詳細は、以下の書籍が詳しくてお勧めです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました