除湿能力・コストの比較【エアコン、除湿機、熱交換換気、エコカラット、デシカ】 | さとるパパの住宅論

除湿能力・コストの比較【エアコン、除湿機、熱交換換気、エコカラット、デシカ】

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夏の除湿にはコスト(電気代)がかかるものですが、湿度を下げる方法としては、エアコン、除湿器(コンプレッサー式、ゼオライト式など)、全熱交換型第一種換気システム、エコカラットなどの調湿材、デシカなど、さまざまなタイプがあります。

ここでは、これらの除湿能力と費用対効果(初期費用を除く)について検討してみたいと思います。

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夏、換気によって侵入する水分量はどのくらいか?

コスト比較に入る前に、高温多湿な空気にどれだけ水分が含まれているのか、それを換気時に快適な空気にするためにどれだけの量を除湿する必要があるのかを確認したいと思います。

水分量は、絶対湿度(g/m3)で確認でき、絶対湿度は相対湿度と気温から算出できます(気圧は常に 1 気圧と仮定)。相対湿度は 1 日の間で大きく変動しますが、絶対湿度はそれほど変化がありません。

東京の気象データを確認すると、2018年の夏の絶対湿度はおおむね 21 g/m3 程度でした。ちなみに確認したなかでの最大値は、8 月 6 日の朝 8 時(気温 29.9 度、相対湿度 83%)で 25 g/m3 でした。

室内空気の目標を室温 27 度、相対湿度 60% とすると、その絶対湿度は約 15 g/m3 です。

つまり、この室内環境を維持するためには、換気時に空気 1 m3 あたり 6 g (最大時 10 g)の水分を除湿する必要があることになります。

仮に 24 時間換気の量を 180 m3/h とする(注)と、1 時間あたり 1,080 g(最大時 1,800 g)の水分を除湿する必要がある計算になります。1 日に換算すると、約 26 L です。

実際には炊事や入浴や人体などからも水分が発生するため、夏に快適な空気を維持するためには相当な量の水分を除湿する必要があることがわかります。ちなみにこれらの水分は 4 人家族で 1 日 9.4 L とのこと(『最高の断熱・エコ住宅をつくる方法』p.226)。

これもそのまま考慮すると、平均して 1 時間あたり 1.5 L の除湿能力が必要、となります。

なお、上記計算ではすべての換気空気が換気システムを経由することを想定していますが、計画換気外の漏気がある場合には除湿がかなり難しくなることが想像できます。湿度管理には、高気密であることは欠かせません。

この換気量は一条工務店のロスガード90の風量仕様を参考にしました。1 時間に 0.5 回の換気回数で計算すると、35 坪(116 m2)の気積は 2.4m x 116m2 = 278m3 となり、必要換気量は 278 x 0.5 = 140 m3/h となりますが、換気不足にならないよう、通常は多めに設計されているのでしょう(有効換気量率の関係?)。ちなみにわが家のレンジフードは住宅の常時換気を代替するモードを選択できるのですが、その仕様風量は 170 m3/h でした。

除湿方法ごとの性能を比較する

続いて、除湿方法ごとに、1 時間あたりの除湿量、消費電力、効率(除湿量/消費電力)について比較してみたいと思います。

電気代で比較したい場合は、消費電力(W)を 1000 で割って kW に換算し、1 kWh あたりの電気料金の単価(30 円とか)を掛け算すると 1 時間あたりの電気代が計算できます。

除湿器の除湿性能

一番売れているらしい除湿器(シャープ CV-H71)のスペックを確認すると、1 日あたりの除湿能力 6.3L、消費電力 165W とあります。

1 時間あたりのデータは以下のとおりです。

除湿量:260 g
消費電力:165 W
効率:1.6 g/W

この除湿器はコンプレッサー式なので、他のタイプ(ゼオライト式、ハイブリッド式)よりは消費電力が小さく高効率なほうです。
しかし、これだけで家中の全除湿をするとなると明らかに能力不足で何台も必要ですし、うるさいので現実的ではありません。除湿器は基本的に狭い空間用と考え、エアコンがある部屋ではエアコンを使ったほうが効率的でしょう(詳細は次節)。

エアコンの除湿性能

エアコンの除湿は補助的な機能なので、メーカーの説明書には除湿量が記載されていません。2009 年と古いデータですが、東京電力 技術開発研究所の調査(PDF)で冷房能力 2.8kW のエアコン(COP 4.95)における除湿量の実測値(除湿量、コスト)が紹介されています。

この資料から計算すると、1 時間あたりのデータは以下のようになりました。

冷房運転時
除湿量:2.3 kg
消費電力:480 W
効率:4.8 g/W

ドライ(弱冷房除湿)運転時
除湿量:1.1 kg
消費電力:180 W
効率:6.1 g/W

再熱除湿運転時
除湿量:1.5 kg
消費電力:650 W
効率:2.3 g/W

冷房は温度が同時に下がるので同一に比べることはできませんが、除湿器を圧倒的に上回る除湿能力があることがわかります(再熱除湿でも除湿器より高効率です)。

このデータのエアコンの冷房能力が 2.8kW(10 畳用)でしかないことを考えると、エアコンには家中の湿度をコントロールするのに十分なポテンシャルがありそうです。

関連 空調機の除湿量をチェックしてみたら除湿機の比ではなかった

全熱交換型換気の除湿性能

全熱交換型の換気システムでは、湿度を交換することで室内の空気の湿度を維持する効果があります。厳密には除湿しているわけではありませんが、効果としては夏は除湿されるようなものです(冬は加湿)。

どの程度の湿度を交換してくれるのかというと、一条工務店で採用しているロスガード 90 では夏に湿度を 80% 回収するそうです。わが家の全館空調より高性能ですが、これについて検討してみたいと思います。

先ほどの仮定条件で換気空気中の 80% の水分が回収されるとすると、その除湿量は約 860 g/h にもなります。消費電力は 68W なので、1 W で約 13 g の除湿も行ってもらえる計算になります。

1 時間あたりのデータは以下のとおりです。

除湿量:860 g
消費電力:68 W
効率:13 g/W

一見すると非常に効率的です。

ただしこの仮定では、室内空気と外気とで湿度に差があることを前提としています。この前提の室内空気の状態(27℃、60%)を実現するには、エアコンなどで除湿する必要があります。つまり他の除湿との併用が前提であり、併用すると少ない消費電力で低湿度を維持できるということなので、単独で考慮すべきではなく、合計で考える必要がありそうです。

また、実際には、全熱交換型換気で熱交換されるのは全換気量のうちの一部だけ(詳細記事)という問題があります。仮に全熱交換型換気とは別に局所換気が同量あり、その分は外気の水分がそのまま入ってくると考えると、1 時間に約 0.9L の水分が回収されるとしても、侵入する水分は通常の倍の約 2.2L になります。

これでは結局 1 時間に 1.3L の水分が増えることになるので、実質的な除湿効果はないどころかマイナスということになってしまいます。このことからは、「実は全熱交換型のメリットは大きくない」、あるいは「全熱交換型換気を経由しない局所換気の量を減らすことがいかに重要か」ということがわかります。

上記の仮定が正しければ、トイレを 1 箇所にして風呂の常時局所換気を止めるなどすれば効率的な除湿が期待できそうですが、そうでもしなければ特にメリットはないかもしれません。

関連 冷房期の第一種換気のデメリット?【熱交換換気と再熱除湿の関係】

デシカホームエアの除湿性能

ダイキンから全館調湿・換気ユニットとしてデシカホームエアという商品が展開されています。高額になるうえ本体とダクトにスペースを取られ、冷暖房が別途必要になるので普及はしていませんが、鵜野日出男氏のブログを読んでいた方ならご存知かもしれません(以下参考記事)。

ユウキ邸の年間空調+デシカ電気代=5万7000円(33円換算で) (上): 鵜野日出男の今週の本音2013〜2015
ご案内のとおり、当初 「家庭用デシカは、何とかして30万円台でビルダーの手に渡るようにしたい‥‥」 との担当者の発言を信じて、私は懸命にデシカを 「ヨィショ」 してきた。 しかし、発表された定価は100万円超。 ダクトの工事費を加えると25...

1 時間あたりのデータは以下のとおりです。

除湿量:2.7 kg
消費電力:520 W
効率:5.2 g/W

全館空調並みに初期費用がかかりそうなのが難点ですが、エアコン並みの除湿能力、効率があるのに温度が下がらず、夏場でも相対湿度 40% 台を維持できるところが魅力的です。

エコカラットプラスの除湿性能

調湿効果のある内装材はどうでしょうか。調湿壁紙や珪藻土などもありますが、これらのうち効果が高いとされているのは、珪藻土の 5~6 倍の吸放湿量を誇るエコカラットプラスです。

実験データから計算すると、10 m2 の 1 時間あたりのデータは以下のとおりです。

除湿量:167 g
消費電力:0 W
効率:∞

電気を使わないのでランニングコストはかかりませんが、効果は面積に比例し、効果を得るにはかなりの面積が必要になります。また、調湿材は吸湿を終えたら放湿する必要があるため、一時的な高湿の緩和はできても、常時入ってくる湿度を吸収し続けることはできません。効果はあくまで補助的なものでしょう。

デザインのアクセントとしてはお勧めです。詳細は次の外部サイトをご覧ください。

リクシル「エコカラット(プラス)」の価格/効果/施工例/人気の種類!リフォームでおすすめの場所は?

まとめ

以上の結果をまとめると次のようになりますが、数値の条件は同じではありません。タイプにより得意不得意な環境条件があり、それによって数値は大きく異なる可能性があります。各方式ごとの特徴を踏まえながら、参考程度にご覧ください。

除湿方法別の能力とコスト

この表だけ見ると全熱交換型第一種換気がもっとも効率的ですが、併用する局所換気の割合をいかに減らすかが課題になります。

一般的に除湿を最も効率的に行うことができるのはエアコンです。ただし、エアコン(全館空調を含む)が効果的といっても、温度を下げずに常に除湿を行うことは困難です(冷房がすぐに効いてしまう高断熱住宅では特に)。かといって家全体での再熱除湿(暖房併用)は電気代がかかります。あえて冷房がすぐに効かないように風量を絞ったり、あえて日射熱を取り入れつつ弱冷房除湿や冷房で除湿する方法もあるようですが、コントロールは難しそうです。

それでもエアコンは除湿機より高効率で除湿能力が高いので、エリアを区切ってエアコンで再熱除湿できる空間があるといいかもしれません。風が当たる位置に物干しを設置したり、サーキュレーターを併用したりすればすぐに乾きそうです。

あるいは、ガス乾燥機や洗濯乾燥機を併用して部屋干しの量を減らし、狭い空間で除湿機を使うのも一案です。

予算や設置スペースに問題がない場合、デシカホームエアは有力な選択肢になるかもしれません。このような設備を安価に導入できるようになればいいのですが。

参考記事:
第一種換気と第三種換気 – 特徴とコスト、デメリット
木材やエコカラットなどの調湿効果に対する疑問
全館空調(エアコン)で洗濯物は部屋干しで乾くか(梅雨時の湿度管理)
気密性能はどこまで求めるべきか(C値)
部屋干しで洗濯物を臭わず早く乾かす3つのポイント

コメント

  1. 匿名 より:

    全熱交換型換気だけ外からの水分流入を考慮するのは条件がフェアじゃない気がします。
    エアコンの場合も、実際にはその部屋の空気はなんらかの形で換気されているので、その分の水分流入を計算に入れないと比較できないと思われます。
    結局のところ、外から空気は入ってきて何もしなければ水分100%の空気が入ってくるところ、全熱交換型換気であればそれを50%?の乾いた空気にできるので効果はあると思いますがいかがでしょうか。

    • さとるパパ より:

      コメントありがとうございます。
      「まとめ」に書いたように同条件で得られたデータではないため、フェアではないという点はそのとおりです。ただ、換気による水分流入については、すべて同条件(第 1 節)で考慮しています。

      全熱交換型換気の場合、トイレや風呂では別の局所換気を使用する影響で、乾いた空気にできる換気量に加え、熱交換(水分交換)されない換気量が発生します。例外もありますが、そのため、住居によっては総換気量が過剰(わが家のケースで 2 倍くらい)になり、その分、水分流入が他の換気方式より多くなるのではないか、という疑問があります。第一種換気で実際に設計されていた換気量はこちらの記事に詳しく書いています。水分回収率 80% などのカタログ上の数値は(給気量)=(排気量)のときのデータですが、実際には(給気量)>>(排気量)となるケースが多く、(給気量)-(排気量) の分の熱交換や水分交換は期待できない感じです(参考:全熱型換気の熱交換効率が実際は低いのではと問い合わせた結果)。

      なお、厳密にいうと、上記の 2 倍という数字にはレンジフードによる換気増が含まれており、これは他の換気方式でも同様に影響することのため、フェアではありません。

      説明がわかりにくく申し訳ございません。記事を修正させていただきます。

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