ハウスメーカー、工務店、設計事務所それぞれの違いと特徴

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注文住宅に対応できる住宅会社にもいろいろあります。ハウスメーカー、工務店、設計事務所とでは、家づくりの仕組みにそれぞれ違いがあるため、住宅会社を選ぶ際にはその特徴を知っておくことが重要になります。実際にはこの 3 つの分類の中間的な会社も多くありますが、ここでは、ハウスメーカー、工務店、設計事務所に大別し、それぞれの特徴と、どういう人に向いているかという情報を思いつくままに紹介したいと思います。

ちなみに以下に述べることは、自宅を建てる際にかかわった経験や、一般的に言われていることに基づく大まかな傾向であり、例外的な会社もあるということをご承知おきください。

ハウスメーカー

大量生産の規格住宅

住宅会社のなかで最も自由度が低いのがハウスメーカーです。いくら自由設計といっても、ハウスメーカーとはそういうものです。標準の仕様ががっちり決まっており、そこから外れるこだわりの仕様を実現することは困難です。契約までは「対応できます」と調子のいいことを言っていても、ハンコを押した後はさまざまな関門が待ち受けています。オプションで選べることにも多くの制約があり、特別仕様はコストが高くつきます。

しかし、このことはメリットでもあります。標準仕様から選択することで、同じ仕様の家に住んでいる人が全国にたくさんいることになるため、多くの情報を得ることができます。全国で多くの問題が発生していれば改善されるため、何らかの問題が発生するリスクを下げることができるし、アフターサービスも期待できます。

そして、大抵のハウスメーカーは標準仕様が高レベルです。性能は標準で長期優良住宅の条件を満たしていることが多いでしょう。どの面からみても、最低限保証されるレベルは高いと言えます。

耐震性能が高い

ハウスメーカーの耐震等級は最高評価の 3 がほとんどです。木造軸組工法の工務店で、耐震等級 3 を標準にしているところはそう多くはないでしょう。大地震が起きても内装材の被害もないことを推奨している当サイトの立場(参考記事)からすると、ハウスメーカーの耐震性能には問題があるところもあります。しかし、倒壊しなければ良しとするならば、ハウスメーカーの耐震性はほとんどの場合問題ないでしょう。

なお、工務店の耐震性能はピンキリですが、ツーバイフォー(枠組壁工法)の場合は別です。公開された技術仕様がきっちりと決められており、それさえ守れば耐震性能 3 以上が確保できるからです。一方、木造軸組工法の場合は、設計しだいで強くも弱くもなるため、注意が必要です。

規模の力

大手企業には中小企業にない強みもあります。それは大規模な保証です。建築中の家に大きな欠陥が見つかったとして、大手企業なら一から立て直すことができますが、中小企業ではそれは難しいでしょう。

私は全館空調というシステムを採用しましたが、工務店で建てていたら、おそらく採用しなかったと思います。日本では珍しい全館空調を思い切って採用できたのは、大手ハウスメーカーが多数の顧客に提供しているシステムである以上、長期にわたって最低限の保証は受けられるだろうと思ったからです。

商売上手

ハウスメーカーにとって重要なのは、契約件数と利益です。どこも好印象を持ってもらえるよう魅力的な仕様を開発し、売り込んでいます。しかし、本当に魅力のある仕様もありますが、中には見かけ倒しで住んでみると実際は問題が多いということもあります。そのような仕様は会社の目先の利益が優先された結果であり、顧客第一ではないと言えます。

ハウスメーカーにとっての利益を優先するか、顧客の利益を優先するかは担当者にもよりますが、3 つのタイプのなかでは、ハウスメーカーが一番、会社寄りの人間が多い印象です。

このことは予算についても言えます。ハウスメーカーでは、あらかじめ上限予算を伝えていても、それを上回る見積を提示してきたり、契約後も何かとオプションが付き、合計金額が上がる傾向があります。

工務店も商売ですからそういう面はあるでしょうが、営業力が高くなく、地元に根差しているため、ハウスメーカーと比べれば、消費者よりの正直なところが多いと思います。

また、設計事務所の建築士は、何から何まで顧客第一で考えてくれる傾向があります。

独自の魅力?

ハウスメーカーにはそれぞれ、ほかには真似できない独自の売りがあります。たとえば、三井ホームのモルタル外壁、シャーウッドのベルバーン、一条工務店の廉価タイルなどです。こういうものは工務店では採用できません。ただし、ハウスメーカーの独自仕様には注意も必要です。その後のメンテナンスも、ハウスメーカーを通さなければならないおそれがあるからです。ハウスメーカーは商売上手であり、アフターサービスも割高なので、注意が必要です。

参考記事:建物の長期保証システムは必要か?

イメージがわきやすい

ハウスメーカーにはモデルハウスがあり、プレゼンテーション能力もあります。多くの建築事例を確認することもできます。このため、実際にどうなるかを具体的にイメージしながら家づくりを進めることができます。この点は工務店や設計事務所より有利でしょう。

ハウスメーカーに向く人向かない人

金額が高くなるのが難点ですが、手間をかけずに家を建てられ、一定の安心を得ることができるのはメリットです。ただし自由度が低いため、希望に合う標準仕様を提供しているハウスメーカーが見つからない人や、家づくりにさまざまなこだわりがある人には向いていないかもしれません。

一方、予算と希望条件に合う規格住宅を提供しているハウスメーカーが見つかれば、満足度は高いでしょう。

工務店

規模が大きくない工務店について紹介します。大手チェーンに加入している工務店もありますが、これらはハウスメーカーに近い性質をもつこともあります。一般的な工務店の特徴は次のとおりです。

低価格

ハウスメーカーで家を建てると坪単価70万程度がふつうですが、工務店で一般的な坪単価は55万円程度です。この差が出る
理由はいろいろありますが、一番大きいのは下請けに委託することにより発生する中間マージンです。消費者が大手ハウスメーカーに支払う金額は、下請け業者が受け取る金額の数割増しです。工務店で家を建てるということは、下請け業者に直接発注するようなものなので、価格を抑えることができます。

高い柔軟性

ハウスメーカーのように標準仕様ががっちり決められているわけではないため、好みの仕様で家を建てることができます。ただし、経験がないと施工が難しい場合もあるので、実績のない仕様を要求することにはリスクが伴います。自分の理想に近い家を建てている実績のあるところを選ぶことが大事だと思います。

営業力が弱い

ハウスメーカーのような CM もなければ、モデルハウスもありません。実際に建てられた家を見るには、数少ない家の見学会に参加するしかありません。このため、実際にどんな家が建つのかというイメージがわきにくいという問題があります。

また、営業専門の人がおらず、職人気質の担当者と家づくりを進めていくケースも考えられます。コミュニケーション能力に問題がある場合、長時間打ち合わせをする中でストレスが生じることもあるかもしれません。ただし、逆に、口がうまくて言い包められてしまうという問題も起きにくく、良く言えば正直で誠実な対応をとってもらえる可能性が高いとも思います。口先だけ達者な営業より信頼できるかもしれず、どちらが良いかは人それぞれかもしれません。

情報が少なくピンキリなので、見る目が必要

工務店の中には、伝統や天然素材にこだわるところ、独自の工法を採用しているところなど、実に多様な業者があります。少人数で運営されているため価値観の偏りやクセが強く、高級な住宅を建てるところもあれば、高性能ではない住宅を建てるところもあります。

大手ハウスメーカーなら口コミや検索でさまざまな情報が見つかりますが、中小工務店は大手と違って情報がありません。ホームページなどで公開されている情報も少ないため、限られた情報から会社の信用、技術力などを判断する必要があります。そのためには、住宅の知識に加え、人を見る目も必要になりそうです。

私が近隣で工務店を探していたときにも、良さそうに見えた業者がよく調べると問題があるということがありました。お客から大金を預かったのに家を建てずに逃亡し、訴えられている最中、という業者もありました。

とことん信頼できる業者でないと家づくりは任せられないので、業者探しには労力が要ります。

アフターサービスがよい

工務店は地元に根差して営業を続ける必要があるため、悪いことはできない傾向があります。そのため、良心的なアフターサービスを受けられる傾向があります。

ハウスメーカーのアフターサービスは前記のとおり問題も多いので、地元企業の方が安心できるかもしれません。

工務店に向く人向かない人

見る目は必要ですが、良い工務店はたくさんあると思います。工務店がおすすめなのは、それを見る目が自分にあると思える方です。自信のない方は、ハウスメーカーにするか、もっと知識を付けてから家を建てた方がよいかもしれません。

住宅の知識がある方は、自由度の低いハウスメーカーでは満足できないこだわりポイントがあっても、工務店ならば実現できるかもしれません。近隣で、希望に近い住宅を建てている実績があり、信用できると思えるならば、低価格で良い家を建てられる可能性があり、満足度は高くなるのではないでしょうか。

設計事務所

施主の希望を重視

建築士との家づくりで一番違いを感じるのは、施主の利益を第一に考えてくれる点です。設計料が決まっているため、会社の都合を押し付けてくることがないのです。予算を伝えればその範囲で何とかしようと努力してくれますし、施主のためになるいろいろな提案をしてくれます。

自由度が高い

まず設計を考え、それからそれを実現可能な工務店を探してくれるため、施工可能かどうかという制約がありません。難しい建築条件であったり、工法にこだわりがあるなどしてハウスメーカーなどで満足いくプランを提案してもらえない場合、設計事務所なら何とかしてくれるかもしれません。

施工まで安心

建築士の仕事には、設計だけでなく、設計どおりにきちんと施工されたかという監理の仕事も含まれています。ハウスメーカーの工事担当者は多数の家を手掛けていて細かいチェックまでは期待できないため、これは安心です。

得意・不得意はある

ただし、建築士にも得意・不得意があります。おしゃれなデザインセンスと、構造力学、省エネ性能、住宅設備、施工などに関する幅広い知識をすべて高次元で備えている建築士などいません。やはり、重視するポイントで価値観が合う建築士を見つけることが大事だと思います。デザイン重視の設計士の場合、構造のチェックは第三者に委託するということもあります。

我が家を建てた三井ホームではデザイン力のある外部の設計事務所の建築士の方と主に打ち合わせをするのですが、三井ホームには社内の建築士に加え、工事担当の建築士もいます。我が家の場合、最初打ち合わせで決めた設計が、内部のチェックで耐震性や法令上の問題があることが発覚し、変更になることがいくつかありました。このようなことは、設計事務所の建築士だけと家づくりを行っていたら、問題があるまま家ができることになっていた可能性があります。

工務店と同様、設計事務所の場合も信頼できるかどうかを慎重に見極める必要がありそうです。

価格はやや高め

設計料がかかるため、工務店で家を建てる場合より高くなります。しかし、どの業者に施工を任せるかも建築士が決められ、競争させることができるので、安く調達できる面もあります。坪単価が 70 万を超えるようなハウスメーカーで家を建てる予算があるならば、検討に値するのではないでしょうか。

設計事務所に向く人向かない人

ある程度の予算があり、ハウスメーカーでは難しいこだわりがある場合、良い建築士に出会えればお勧めです。

我が家の場合

我が家を三井ホームで建てることになった理由については、以前、こちらに書きました。2 世帯住宅なので自分中心で業者を選ぶわけにはいかないため、多少高くても、デザイン力があり、家のイメージがわきやすく、それなりに良い家を確実に建てられるところを選んだつもりです。高気密・高断熱住宅を建てるにあたってはトラブルが多々ありましたが、最終的にはみな満足できる家が建てられたと思っています。

推薦図書

私がこの本を読んだのは家づくりを考え始めた頃だったのでだいぶ忘れてしまいましたが、改めて読んでみると基本的で重要なことがわかりやすく書かれていると感心しました。この著者は、不動産会社やハウスメーカーの営業を経験し、現在はハウスネットギャラリーという家づくり応援サイトを運営している方です。

本の内容はというと、資金計画から土地選び、家づくりの業者の選び方までの情報が特に充実しています。施主の性格からどこで家を建てるのが向いているのかといった情報から、坪単価の注意点、工務店などのさまざまなタイプの詳しい説明、業者のチェックポイントなどもあります。少し古い本ではありますが、消費者目線で基本に立ち返ることができる良本だと思いました。ちなみに、断熱性能や気密性能に関する情報はなく、特に重視されていないようです。

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