木造住宅の寿命は20年~200年?住宅仕様と耐久性の変遷

木造戸建住宅の耐用年数は 22 年ですが、これはあくまで税務上の基準であり、実際の寿命を示すものではありません。

建て替えまでの期間は平均 30 年といわれていますが、これも寿命を意味するわけではありません。

近年では「200 年住宅」というビジョンが提言されていることを考えると、木造住宅の寿命は約 20 年~ 200 年ということになりますが、幅がありすぎます。

それに、昔の住宅と今の住宅とでは仕様が変わっています。最近の住宅仕様であれば、維持管理しだいで何年でも住めるものなのでしょうか。

これは長いこと疑問に感じていたことなのですが、室蘭工業大学名誉教授の鎌田先生の本を読んだらスッと納得できたので、その内容を一部紹介したいと思います。木造住宅の寿命はケースバイケースであり、使い方や施工などによっても変わるものですが、ここでは一般的な木造住宅の仕様の変遷から現在の木造住宅の寿命について考えてみたいと思います。

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古い木造住宅の実情

寿命の話に入る前に、私が最近泊ったことがある、築50年と築30年の木造住宅についての感想を書いておきます。たぶん、古い多くの木造住宅に共通することだと思います。

築50年の木造住宅

まず、築50年の木造住宅とは、わが家を建て替える前に取り壊した住宅です。「サザエさん家みたい」といわれたことがあり、まぁそんな感じです。

家の中は外より風がないだけマシというだけで、室温は外気温と大差ないので冬は非常に寒い家でした。大部屋ではエアコンが効かないので、暖をとるには石油ストーブにあたったりコタツに入ったりするしかありません。

雨漏りが発生することもありました。耐震性が低いので小さな地震でもやたら揺れ、不安で快適とは程遠いため、住み続けたい住宅ではありませんでした。

でも、家がすき間だらけの過換気状態で、内外の温度差がないためか、結露はほとんど問題になりませんでした。見える木材は特に劣化しているようには見えず、耐震設計に問題があるものの、構造材自体はまだまだ持ちそうだったのです。

築30年の木造住宅

一方、比較的新しい築 30 年の住宅は、近畿地方の祖母の家です。昭和 55 年(1980 年)の法改正以降の建物なので、耐震性はそれなりに考えられていて、断熱材が入っている点が築 50 年の住宅とは違います。

しかし、築年数が短いにもかかわらず、こちらの住宅は見るからに老朽化が進んでいます。木材は色が悪くなっているし、天井はシミだらけです。いま内装や設備をリフォームしたとしても、これから先何十年も使い続けることには大きな不安を感じるほどです。

また、断熱材が入っていても特にその恩恵は感じられず、冬はいつも石油ストーブにヤカンを置いていた記憶があります。

どちらの住宅にしても、2016 年の新築住宅とはまったく特徴が異なります。この違いはどこからきているのでしょうか。

長寿命のカギは高断熱住宅

木材が長持ちするかどうかのカギは、水分です。木材は水分を含むと菌や微生物が繁殖し、腐敗するからです。

そして、鎌田先生の『本音のエコハウス』を読んでいて知ったのは、長寿命化のカギは高断熱住宅の仕様にある、ということです。

1984年に寒冷地で提案された高断熱・高気密住宅には、主に以下の特徴があります。

  • 壁の上下に気流止めがある
  • 壁の室内側に気密層(防湿層)がある
  • 内部結露を防ぐ通気層がある(外壁側)

なかでも特に重要なのが、「気流止め」です。気流止めの問題の詳細はこちらで紹介したとおりです。

この高断熱住宅の仕様にすることでようやく壁内部や屋根裏に結露が発生しなくなり、木材が腐敗しなくなったのです。

つまり、住宅が長持ちするかどうかは、これらの仕様が取り入れられているかどうかにかかっているのです。

これが住宅の寿命のカギであり、長期優良住宅の認定を受けなくても、高断熱住宅をつくるだけで躯体を百年保たせることが可能になるとも書かれています。この経緯や研究成果については上記の本に詳しく書かれていて、読むと多くの実験や経験に基づく事実であることがわかります。

この指摘は、最初に紹介した古い木造住宅の印象にも合致しています。築 30 年の住宅では、石油ストーブとヤカンから出る水分が住宅内部へと移動し、腐敗が進行していたのでしょう。一方、築 50 年の住宅では、よりスカスカで広いために水分がたまらず、腐敗を免れていたのでしょう。

住宅を長持ちさせるには、室内を暖めず水分を出さずにすき間風のなかで生活するか、高断熱・高気密住宅の仕様を採用するかのどちらかになるのではないでしょうか。

しかし前者の生活はまっぴらです。そんなわけで、住宅の寿命を考えるうえで重要な問題は、この高断熱住宅の仕様がいつ取り入れられるようになったか、ということです。

高断熱住宅仕様の変遷

この高断熱住宅の仕様はまず寒冷地で標準化され、それから温暖地へと広がっています。

住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)のフラット 35 対応木造住宅工事仕様書を見ると、温暖地で採用されたのは平成 11 年(1999 年)の次世代省エネ基準仕様からです。これは義務ではなく推奨仕様ですが、平成21年(2009)に施行された長期優良住宅ではこの仕様を満たす必要があるため、それなりに普及しています。

2019 年現在、このレベルの仕様は、そろそろ義務化されるとかされないとか、なんとも微妙な感じです。とりあえず言えるのは、最近の住宅だからといって、必ずしも長持ちするわけではないということです。次世代省エネ仕様を満たしていない住宅は上記の築 30 年の住宅と大差がないため、その他の要因もあり複雑ですが、住み方しだいで 30 年も持たない住宅になることは大いに考えられます。

住宅の寿命を考えると、次世代省エネ基準を満たしているかどうか、気流止めが適切かどうかが非常に重要なことなので、この点はよく確認しておきたいものです。

ちなみに次世代省エネ基準の仕様では、気密に関して、北海道などの寒冷地仕様(C 値 2.0 以下相当)と、それ以外の地域の仕様(C 値 5.0 以下相当)があります。本によると、現行の H28 省エネ基準の仕様を満たす住宅では温暖地でも C 値 2.0 以下相当になるとのことなので、これがきちんと普及するのであれば、今後の木造住宅の耐久性は高くなることが期待できそうです。

関連記事:
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H25省エネ基準の最高等級4で高断熱住宅と言えるか

参考図書:
鎌田紀彦著『本音のエコハウス』(エクスナレッジ、2018)

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