築後に気密性能を向上させようと思い立ってからいろいろと試行錯誤し、ようやく満足できるまでに作業が完了しました。作業のたびに簡易気密測定を行い、どれだけ気密性能を改善できたのかを測定してきたため、結果としてわかったことを紹介したいと思います。
改善できた隙間の面積
簡易気密測定の精度にはいろいろと問題があるものの(以下記事参照)、施工前後で負圧下のドア開放力が増すことが確認できれば、気密性能は高まったと見なすことができます。
初期状態のドア開放力は 1.65kgf だったのが、最終的には 2.6kgf になったので、なかなかの気密改善が達成できたと自負しています。
推計では、C 値 1.4 くらい、相当隙間面積 200cm2 くらいだったのが、C 値 1.0 くらい、相当隙間面積 140 cm2 くらいになったものと思います。
改善できた隙間はコンセントボックス(詳細記事)が最も大きく、約40cm2 相当の改善効果がありました。
そのほか、0.1 kgf 以上のドア開放力の変化(数 cm2 相当)を確認できた箇所は、床下点検口(詳細記事)、分電盤・情報分電盤(詳細記事)でした。
また、床と壁の間の気密に問題がある(気密シートをテープ留めしていない)ことがわかり、巾木の一部をコーキングしたところ、気密が改善したような気がするのですが、施工前後の気密測定でミスを犯してしまった(同条件でない測定を行ってしまった)ため、その改善程度は不明です。
なお、気密改善を行っても、まだ 140 cm2 ほどの隙間が残っています。これには、隙間の存在がわかっていても後処理で塞ぎきれなかったところと、後処理では手の施しようのないところがあります。コンセントボックスや床下点検口は、手を加えたものの、隙間の全部を埋めることができたとは思えません。床と壁の間、壁と天井の間などは、内装材を剥がさないと確認することもやり直すこともできないので、手付かずです。屋根裏にも、侵入できない箇所が多くあります。窓枠まわりも隙間はありそうですが、これも諦めています。
C 値 1.0 くらいなら、私としては満足です。
参考になる情報をご提供くださった方々に感謝いたします。
作業を通じて気づいたこと
気密改善のために上記以外の箇所もいろいろと調査・補修してみたのですが、労力の割に改善効果が確認できなかった箇所もありました。それでも、多くの発見がありました。
隙間には偏りがある
気付いたことの1つは、隙間は均等に分布していないことです。
かつては、将来的に全館空調が壊れたら負圧にして第三種換気にすれば各部屋に給気できるだろうと考えていました。
しかし、いくつかの箇所に大きな隙間があるままで負圧をかければ、多くの外気がその隙間を中心として侵入してしまいます。そこが外気によって冷やされる壁内などであれば、結露が発生する恐れもあり、決して望ましいことではありません。第三種換気を行うなら、こうした隙間は極力なくすべきでしょう。
偏在する大きな隙間は、わが家で気づいた例でいうと、床下・床上点検口、分電盤・情報分電盤、そしてコンセントボックスです。コンセントボックスでは実際にサビが発生していたため、放置して悪化する前に気づくことができて良かったと思います。
お勧めできない築後の改善箇所
改善できなかった箇所は、ユニットバス周りの隙間です。床下やユニットバス周囲には大きな隙間があると予想していたのですが、苦労してテープで塞いだりしたものの、ドア開放力の変化は生じませんでした。
参考 初めて床下に潜ってユニットバスまわりをチェックしてみたら…
もっとも、大きな断熱欠損をふさぐことができたので後悔はしていませんし、住宅によっては改善の余地がある場合もあるのかもしれません。
なお、床面の気密については、床下の断熱材と木材の隙間を気密テープで留めたら改善するかもしれないとは思いましたが、床面はたしか接着剤で気密処理されているはずだったし、狭い床下での作業が大変そうなので諦めました。
その他のお勧めできない箇所としては、巾木(壁と床の取り合い部分)の隙間のコーキングです。アースコークという、用途にピッタリのコーキング剤を見つけたと思ったのですが、床材と巾木の色が異なる場合にキレイに施工することが困難です。幸い、ユニットバス周りは巾木と床材が同系色だったのできれいに隙間を埋めることができましたが、リビングなどでは見た目の問題で断念しました。
関連 セメダイン目地シール(かべシール)とヤヨイジョイントコークAの比較
巾木の隙間もそうですが、築後に気密を改善しようとすると、本来の気密層の位置より内側で隙間を塞ぐことしかできないケースが多々あります。気密層から離れた内側の隙間を埋める場合、C値は改善できても壁内などに外気が入ることまでは防げないことがあるため、意味がないという意見もあります。
しかし、私はそうは思いません。内側で隙間を埋めたとしても、隙間が減った分、その箇所を流れる空気の量が減るからです。空気の流量が減れば、結露のリスクも漏気による熱損失も減らすことができます。もちろん、施工時に気密層で隙間を防ぐのがベストであることは言うまでもありませんが。。
築後にできるお勧めの改善箇所
築後にできるお勧めの改善箇所は、やはりコンセントボックスまわりです。見た目に影響せず、壁内への空気の侵入を大幅に減らすことが期待できます。
コンセントボックスが気密処理されておらず、壁に繊維系断熱材を使用している場合は、ここだけで大幅に気密を改善できる可能性があります。
詳細は以下記事をご覧ください。
築前に処置しておきたかった箇所
後悔先に立たずですが、築後の気密改善を試みてつくづく実感したのは、最初から高気密仕様にしていればよかったということです。
ここを最初から気密テープ等で処理してくれていれば…と思う箇所が、取り合い部を中心にいくつも見つかりました。温暖地のハウスメーカーの気密処理は、細部の処理が本当にいい加減です。
細部の処理をいちいちチェックするのが面倒なら、せめて構造用合板の面で気密を確保してしまえば簡単だったかもしれません(ツーバイ工法やパネル工法の場合に適用可能)。
また、床下・天井の点検口や、分電盤、情報分電盤などは、高気密用のタイプや専用部材が販売されています(高気密仕様のものは寒冷地用などと表記されていることもあります)。自宅を建てた当時は、これらに隙間があることや、こうしたものがあることすら知りませんでしたが、これらを採用していればよかったと後悔しています。
以下は関連の外部参照ページです。
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