全館空調住人が全館空調のあらゆる疑問に答えてみた | さとるパパの住宅論

全館空調に関するまとめ(記事紹介)

三井ホームの全館空調「スマートブリーズ」(東芝)を採用した経験から、全館空調の導入を検討している方に向けてさまざまな疑問に答えたいと思います。全館空調にはメリット・デメリットがあるため、慎重に検討し、よく納得したうえで採用するかどうかを決めることをお勧めします。

このページでは、当サイトの記事を紹介しつつ、全館空調についてまとめてみました。

全館空調とは

全館空調とは、家中にダクトを張りめぐらせ、換気と冷暖房を 1 台の装置でまかなうシステムのことです。セントラル空調などとも呼ばれ、欧米ではよく採用されています。

我が家で採用した三井ホームの全館空調については、次のページで紹介されています。

健康・快適 | テクノロジー | 戸建住宅 |〈公式〉三井ホーム(注文住宅、賃貸・土地活用、医院・施設建築、リフォーム)
戸建て住宅のテクノロジー「全館空調システム」のページです。三井ホームはオーダーメイドの注文住宅をはじめ、賃貸・土地活用、医院・施設建築、リフォームなど、ご要望に沿って専門のスタッフがデザイン性と快適さを両立した住まいをご提案。非常に高い耐震...

が、上記ページを見てみると、ツッコミどころ満載でした。詳細については、以下の記事をお読みいただければご理解いただけることと思います。

全館空調のメリット・デメリット

全館空調のメリットは次のとおりです。

・ほとんどの部屋(*)に冷暖房が入るので家中の温度差が小さい
・寒い部屋や暑い部屋がないので全室を有効に利用できる
・エアコンがないため見た目がすっきりする
・室外機が一箇所にまとまるので外観もすっきりする
・清浄な空気を取り込むことができる
寝室に蚊が寄ってこない

トイレと浴室には入りません。前記の三井ホームのページで部屋ごとの温度の実測値にこれらがないのは意図的でしょうか…。ただし、通常はエアコンを入れないことが多い洗面室(脱衣所)にも冷暖房が入るのはメリットと言えます。関連記事:「全館空調の部屋間の温度差を測ってみた

一方、次のデメリットもあります。

・コストがかかる
・部屋ごとの細かい温度調整が難しい
・半畳ほどの設置スペースが必要(小屋裏収納できるタイプもあり)
・配管スペースの分、天井高が低くなる
寒い部屋がないので食糧貯蔵に少し困る
・故障時に困る→停電を体験しました

住み始めて最初に感じたことは、次の記事で紹介しています。

全館空調の家に実際に住んでわかったこと
全館空調の三井ホームの住宅に実際に暮らして判明したメリット・デメリットとして、結露、床の温かさや冷え性、音の問題や湿度調整の難しさについて率直な感想を述べます。また、全館空調に関するお金の問題・代替案などについての記事も紹介しています。

関連記事
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全館空調のコスト

全館空調の最大の問題はコストです。初期費用のほかにかかる電気代、メンテナンス費用も無視できません。ただし、維持費用については、各部屋にエアコンを導入してしっかりメンテナンスを行う場合と比較すると、大差はないかもしれません。詳細は次の記事をご覧ください。

三井ホーム・全館空調のメンテナンス費用と総費用
三井ホームの全館空調(東芝スマートブリーズ・プラスII)にはメリット・デメリットがありますが、問題はお金です。お金を気にしなければ採用するメリットの方が大きいとは思いますが、コスパはやはり重要です。三井ホームでは過半数の人が採用するようです...
全館空調の電気代(2017年1月~12月)
三井ホームの全館空調を導入したわが家の1年間の月ごとの電気代(空調・換気のみ)をご紹介。電気代はケースバイケースなので、条件によってどの程度電気代が変わるのかも説明しています。導入すると電気代がどの程度になるのかの参考になれば幸いです。

全館空調のメンテナンス

全館空調はフィルターが詰まると換気まで機能しなくなってしまうため、定期的に清掃を行う必要があります。フィルター掃除は面倒でサボってしまいそう、という方にはお勧めできません。

全館空調のメンテナンスはちょっと面倒
三井ホームの我が家で採用している全館空調「スマート・ブリーズ・プラスII」(東芝)のメンテナンスについて紹介します。入居時にメンテナンスの説明を聞いたときは大したことないと思っていましたが、実際に住んでみると注意が必要だなと感じることが多々...

全館空調とカビ

空調システムが汚染されると家中の空気が汚染されるため気になるところですが、特に問題はなさそうです。加湿機能が付いている場合はしっかりとメンテナンスを行うことが重要です。

三井ホームの全館空調スマートブリーズでカビ臭?
三井ホームの全館空調「スマートブリーズ」を採用するとなると、エアコンのようにカビ臭くなったりしないかどうかが気になるところです。私も三井ホームに何度か確認しましたが、「常に気流があるのでダクト内にカビが生えることはない」という回答だったと記...
カビとエアコンと全館空調
マンションに住んでいた頃、エアコンのカビは悩みの種でした。新品のうちは良いのですが、しばらく使っているとカビ臭くなります。ダイキン、東芝、パナソニックなどいくつかのメーカー品を試したり、内部クリーン運転機能付きのものを採用したりしましたが、...
全館空調でもカビは生えるしゴキブリは出る
いくら全部屋の温度・湿度をコントロールする全館空調と言えども高湿度の環境ではダニが発生することは前回書きましたが、それだけではありません。残念なことに、カビやゴキブリも発生します。 三井ホームの他の住人からは「管理が行き届いていないからだ」...

全館空調と結露

全館空調では家中の温度差がなくなるため、湿度の差も発生しにくくなります。しかしながら、冬場に乾燥を防ぐために加湿を行う場合、窓の結露は多少発生します。樹脂スペーサー仕様の樹脂サッシのペアガラスか、トリプルガラスにすれば、結露はかなり減らせると思われます。

全館空調と結露
結露は、快適、健康、丈夫な住宅の大敵です。濡れたままの状態が続くとカビが発生し、カビをエサにダニなども発生します。ダニやカビはアレルギー疾患を悪化させます。また、木材が濡れていると腐朽菌が増殖し、木が腐って住宅の寿命が縮まってしまいます。結...
ペアガラスの結露の発生量を実際の画像で比較する
わが家では、同じ部屋に断熱性能の異なる 2 タイプの窓を使用しています(窓種の制約のため)。 1 つは、YKK AP の「エピソード」というアルミ樹脂複合サッシで、多くのハウスメーカーの標準仕様になっている断熱レベルの窓です。リクシルなら、...

全館空調と乾燥

全館空調は室内が暖かいがために乾燥しますが、これはどの暖房方式でも同じことです。このことを理解するには、絶対湿度について考える必要があります。

高断熱・高気密住宅は乾燥する?
高断熱・高気密住宅は冬に乾燥するという話をよく聞きます。太平洋側の地域は特にそうです。 一条工務店、スウェーデンハウスに住んでいる人のクチコミなどでも、乾燥についての不満をよく見かけます。全館空調は乾燥するという声もあります。 エアコンのせ...

全館空調には三井ホームのように加湿機能があるものもありますが、十分な加湿能力はありません。加湿器を併用することになります。

高断熱住宅に向く加湿器の選び方
「高断熱住宅で加湿器に頼らずに乾燥を防ぐ方法」に書いたように、加湿器はできれば使わないほうが良いと思いますが、わが家のように「冬はどうしても乾燥してしまう」という場合には、やっぱりあると便利です。 現在使っている加湿器は気づいたら 10 年

いろいろ考えると、加湿には住宅の高気密高断熱が不可欠です。

インフルエンザにかかりにくい絶対湿度を実現するためには高性能住宅が必須
みはりん坊ダブルという絶対湿度(g/m3)を測定できる温湿度計を購入したところ、季節性インフルエンザの流行に関する指標として絶対湿度が用いられていました。 11 g/m3 以下で「注意」、7 g/m3 以下で「警戒」という具合です。 ここで...

全館空調と臭い

全熱交換型の熱交換換気システムの場合、臭いの問題があるとされていますが、生活上は特に問題は感じません。

全館空調の臭いの問題についての実体験
三井ホームの全館空調スマートブリーズにはデンソーと東芝の 2 種類がありますが、東芝の場合の換気システムは全熱交換型です。顕熱交換型では居室内の湿気をそのまま排出するため臭いの問題はありませんが、全熱交換型の場合、湿気とともに臭いも室内に戻...

全館空調の運転音

システムにもよるでしょうが、我が家のスマートブリーズの場合、説明書によると運転音は換気 31dB、冷暖房 44dB とのことです。大き目のエアコンのようなものなので、エアコンと同様の音が発生します。冷暖房が強めに稼働しているときにドア付近で実測したところ、44dB でした。

静かな夜間に近くで聞くと多少うるさく感じますが、普段は気になるものではありません。我が家の場合、ドアと壁を隔てて寝室がありますが、入居後すぐも特に気になることはありませんでした。

吹出し口からの風は静かで音は聞こえません。装置から離れた部屋ではエアコンよりも静かです。

全館空調での室内干し

全館空調での洗濯物の乾きについて紹介しています。干す場所と吹出し口を設計段階で考慮しておけば、年中部屋干しにすることは可能です。

全館空調で洗濯物は部屋干しで乾くか(冬期)
花粉症や外働きの人にとって、洗濯物を快適に部屋干しできるかどうかは重要です。高断熱・高気密住宅では部屋干しで洗濯物がよく乾くと聞きますが、本当なのでしょうか。ここでは、三井ホームの全館空調の家に実際に住んでみて検証した結果を紹介したいと思い...
全館空調(エアコン)で洗濯物は部屋干しで乾くか(梅雨時の湿度管理)
花粉症や外働きの人にとって、洗濯物を快適に部屋干しできるかどうかは重要です。高断熱・高気密住宅では部屋干しで洗濯物がよく乾くと聞きますが、本当なのでしょうか。三井ホームの全館空調の家に実際に住んでみて検証した結果を紹介したいと思います。冬季...

エアコンと同様、梅雨時などは再熱除湿を利用することで湿度を下げることができます(ただし電気代は少し増えます)。

三井ホームの全館空調

三井ホームの全館空調には、東芝製とデンソー製があります。どちらも同様の機能がありますが、細かい違いは結構あります。主な違いは以下のとおりです。

東芝製の特徴

・低圧電力の料金プランを利用できる(基本料は高いが単価は安い)
全熱交換型の換気システム
・半畳のスペースが必要
・更新は劣化した部品ごとに行う

デンソー製の特徴

顕熱交換型の換気システム
・小屋裏に設置することも可能
・更新はダクトと吹出口以外を全入れ替え

換気システムの違いの詳細については、次のページをご覧ください。

第一種換気と第三種換気 - 特徴とコスト、デメリット
住宅の換気が必要な理由、第一種換気と第三種換気の違い、それぞれのメリット・デメリット、そして気になる費用について紹介します。第一種換気については、全熱交換型と顕熱交換型、ダクトの有無による違いについても説明しています。

全館空調の家に引っ越してきてまず感じたこと(音、湿度の問題、床の温かさなど)は、次の記事で紹介しています。

全館空調の家に実際に住んでわかったこと
全館空調の三井ホームの住宅に実際に暮らして判明したメリット・デメリットとして、結露、床の温かさや冷え性、音の問題や湿度調整の難しさについて率直な感想を述べます。また、全館空調に関するお金の問題・代替案などについての記事も紹介しています。

三井ホームの全館空調の問題点

三井ホームの全館空調には次の問題があると思います。

能力過剰による弊害がある

気密性能がそれほど高くない(C 値 > 1.0)ため、湿度管理が難しい

・熱交換換気の消費電力が大きい

全館空調の電気代・維持費用を考える(暫定版)
三井ホームの全館空調 「スマートブリーズ」 の家に住み始めて半年以上経ちました。電気代がかさむ冬と夏の両方を経験したところで、電気代と維持費用について考えてみたいと思います。最初に結論を述べます。 ・年間の電気代は約 12 万円(空調のみ)...

なお、全熱交換型のほうが顕熱交換型や第三種換気より快適な湿度を保ちやすくなります。

採用する際は、次の点にもご注意ください。

全館空調の設計時は吹出口の位置と向きに注意
全館空調の設計は、基本的には空調の専門の方が行うものです。我が家の場合、三井ホームとの打合せで確認したような記憶はありますが、ほとんど提案されるがままにしたように思います。しかしながら、住んでみて、こうしたほうが良かったなと思うことがあった...
冷房期の第一種換気のデメリット?【熱交換換気と再熱除湿の関係】
第一種換気の熱交換換気は仕組みを知ると一見良さげですが、やや高コストであり、暖房期の省エネ効果はあっても年間の換気・冷暖房費合計の省エネ効果は実はあまり期待できなかったりします。北海道ほどの寒冷地でもあえて第三種換気が採用されているくらいな...

これらの問題は、全館空調を採用している多くの大手ハウスメーカーにも言えることです。

ハウスメーカーが全館空調に向いているかどうかを見極めるポイント
私が住宅を検討した数年前は全館空調といえば三井ホームの「スマートブリーズ」(東芝またはデンソー)か三菱地所ホームの「エアロテック」(三菱)くらいなものでしたが、この頃はさまざまなハウスメーカーが各々の全館空調システムを提供しています。 ざっ...

全館空調と断熱性能

全館空調を採用するには、ある程度高断熱である必要があります。冷暖房費がかさむためです。また、断熱性能が非常に高い場合はエアコン 1、2 台でも家中の冷暖房を行うことができるため、全館空調を採用しないほうが低コストで済みます。

全館空調 vs. エアコン(全館空調のメリットが得られる条件)
1台で全部屋の空調を管理する全館空調はとても快適です。高断熱住宅でのエアコンの連続運転と同様のメリットが得られるだけでなく、見た目がスッキリします。ただし高額なので、全館空調を選ぶかエアコンを設置するかは悩みどころです。私の見解では、最適な...

全館空調を採用しない場合

以下の記事では、三井ホームで全館空調を採用しない場合どうなるか、どうすればよいかについて検討しています。高断熱に対応できる業者であれば、三井ホーム以外でも同じことが言えます。

三井ホームで全館空調なしという選択
三井ホームの全館空調は人気の仕様でもありますが、その初期費用、維持費用はどうしても高くなってしまいます。我が家は全館空調を採用しましたが、正直なところ、少し後悔している面もあります。ここでは、全館空調を採用しない場合に費用や快適さがどうなる...
2019 年から三井ホームが低コストな新しい全館空調システム「スマートブリーズワン」を発表しました。気がかりな点もありますが、従来の全館空調の問題をいくらか解消しています。

一条工務店などで採用されている全館床暖房については次の記事で紹介しています。

【一条工務店】全館床暖房のメリット・デメリット。満足度が高い本当の理由
一条工務店で人気の全館床暖房。採用されている方の満足度は高く、改良を重ねて素晴らしいものになっているとは思いますが、誤解されている面もあるように思います。 簡単にいうと、以下のようなことです。 全館床暖房のメリットと思われていることの多くが...

追記:最近の低コストな全館空調システム

最近では、住宅の高断熱化に対応した低コストが全館空調システムがいくつも現れています。

桧家住宅のZ空調について全館空調ユーザとして思うこと【更新版】
近年急成長を遂げているヒノキヤグループの桧家住宅。 最近では「Z空調」(絶好調とかけて「ぜっくうちょう」と読む)という全館空調システムを積極的に宣伝しています。 それほど高くない価格帯で全館空調を採用できるというのは、なかなか魅力に感じます...

次の記事では、YUCACO やマッハシステムについても取り上げています。

三井ホームの新しい全館空調システムについて【エアコン1台の全館空調】
ネット上ではまだ正式な発表が見つかりませんが(※)、三井ホームが実験を経て、ルームエアコン 1 台による安価な新しい全館空調システムを全国的にスタートさせたそうです。三井ホームを検討している方からパンフレット資料を拝見させていただきました(...
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