気密性能はどこまで求めるべきか(C値) | さとるパパの住宅論

気密性能はどこまで求めるべきか(C値)

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気密性能は、相当すき間面積(C値)で表します。延床面積あたりの隙間の面積の割合であり、単位は cm2/m2 です。たとえば、延床面積 100 m2 の家の C 値が 1.5 cm2/m2 であれば、家のすき間の合計は 150 cm2(はがき 1 枚程度)あるということになります。

値が小さければ小さいほど隙間が少なく、気密性が高いことになります。

国の省エネ基準では C値を測定する必要がないため、その重要性にもかかわらず大手ハウスメーカーでも軽視され、ほとんど測定すらされていません。

ここでは、C 値のレベルごとの違いについて紹介したいと思います。

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気密性が低いとどうなるか

家の隙間が多いとどうなるのでしょうか。第一に、UA 値や Q 値がいくら低い高断熱住宅であっても関係なく、外気の影響を受けやすくなり、断熱性能の効果が薄れ、冷暖房が効かなくなります。

詳細 気密性能(C値)は断熱性能(Q値)にどれだけ影響するか

次に、風が強いときや、室内外に圧力差があるときに隙間から空気が出入りし、花粉や砂ぼこりも侵入します。

そして、換気システムが効果的に効かなくなり、家にたまる湿気や有害物質を追い出すことができず、ダニやカビが発生しやすい場所ができます。

空調が効きにくいので、夏の除湿、冬の加湿の効率も落ちます。
また、遮音性が損なわれ、家の外の音が大きく聞こえる問題も発生します。

要求される C 値

そのようなことにならないためには、どの程度の気密性が必要なのでしょうか。

具体的なわかりやすいデータがなかなか見つからないのですが、いくつか参考となる情報を紹介します。

第 3 種換気方式(排気にのみ換気扇を使用する低コストな方式で、多くのハウスメーカーの標準仕様。詳細はこちら)での換気については、以下の興味深いデータがあります。

kimitsu
画像:Panasonicの24時間換気システムの説明より

C 値が 1.0 でも、給気口から入る空気の割合は 50% に過ぎず、残りは「すき間」から入る空気であるというのです。これでは、換気扇から離れた部屋の換気が適切に行われることは期待できません。

C 値が 2 を切らない場合、換気設備の意味すらないのではないか、という気がしてしまいます。給気口の掃除をサボってフィルターが目詰まりしている場合、さらにひどいことになります。

各数値について見て行きましょう。

C 値 5.0 未満

日本で寒冷地を除く地域の省エネ基準とされてきた数値です。しかし前述の図を見ればわかるように、これでは計画的な換気は到底できません。第三種換気では、2階の給気口が機能せず、排気口となってしまうことでしょう。

C 値 2.0 未満

寒冷地の省エネ基準値であり、高気密住宅というとこのレベルを指すことが多いようです。換気システムを機能させるために最低限必要とされる気密性能がこの程度と思われます。

ただし、これは換気方式にもよります。第一種換気方式(詳細)では強制的に給気ができるので、この程度でも換気が不足する問題は起きにくい(むしろ換気過剰になりがち。熱回収率の観点では問題)ですが、第三種換気では換気の質という観点から問題が懸念されます。(詳細:「低気密・中気密は何がどう問題なのか」)。

参考までに、(高気密にしにくい)鉄骨住宅のハウスメーカーでこの性能を実現できると公表しているのは、おそらくセキスイハイムだけです。

C 値 1.5 未満

排気にのみダクトを使用する第三種換気システムで要求されるレベルです。この換気システムは各部屋に排気用の吸い込み口を設置するので一般的な第三種換気よりムラなく換気しやすい方式です。住友林業などで採用されています。

C 値 1.0 未満

最高の断熱・エコ住宅をつくる方法』(書籍*)では、一般的な第三種換気システムで必要なレベルとされています。断熱性のメリットを生かすためには、どの換気方式でもこの程度の気密性能は望ましいでしょう。カナダの省エネ住宅の基準である R-2000 住宅がこのレベルです。

千葉工大の小峰教授の研究では、C 値 0.7 以下であれば強風が吹き荒れる地域でも隙間風による熱損失の影響がないという報告があります。

*2019年に改訂版『最高の断熱・エコハウスをつくる方法 令和の大改訂版』が発売されています。

C 値 0.5 未満

高断熱・高気密住宅の先駆者である故・鵜野日出男氏は、湿度を管理するためには最低でも 0.9、できれば 0.5 という数字を出していました。これより気密性能が劣っていると、計画外の換気や漏気の量が大きく、効果的に湿度をコントロールすることができません。

夏に除湿し、冬に加湿することができると、とても快適な空間になります。ちなみに、ドイツの省エネルギー住宅であるパッシブハウスの基準では、これより厳しい 0.2 となっています。

これらを総合すると、換気の方式にもよりますが、1.0 未満を確保したいところです。隙間は、乾燥収縮などの経年変化や地震の揺れで悪化するため、できれば 0.5 を切りたいものです(地震の影響を少なくするには高い耐震性も必要です)。

日本の住宅の気密性能の現状

しかし、北海道以外の地域でこのレベルの住宅を供給できるところはあまりありません。
大手ハウスメーカーの多くは C 値を公開していないばかりか、測定すらしていません。C 値は建てた後の測定になるため、数値を保証することが難しいからでしょう。
気密性を確保しやすいツーバイフォーやパネル工法は比較的マシですが、木造軸組工法や鉄骨住宅では数値にバラツキがあります(参考:工法別のC値)。
高気密という点では、大手ハウスメーカーよりも、研究熱心な一部の工務店の方が高性能であることも多々あります。

C 値を測定し、公開しているハウスメーカーには、一条工務店、スウェーデンハウス、セキスイハイム、アイフルホームなどがあります。一条工務店が頭一つ抜けていて、他は 1.0 未満といったところのようです。
公開していない他のハウスメーカーは、それ以下の性能しか保証できないのでしょう。今後の改善を期待したいと思います。

次の書籍では、気密性能を上げるためのヒントも多数紹介されています。

なお、C 値の基準や求め方、工法による差、経年変化などについては次の記事をご覧ください。

C値(相当すき間面積)について

温暖地でC値を改善する方法は以下で紹介しています。

温暖地でC値を改善する方法

参考
第一種換気と第三種換気 – それぞれの特徴とコスト、デメリット
低気密・中気密は何がどう問題なのか
高断熱・高気密に対応するハウスメーカー等のQ値、UA値、C値の一覧

参考までに、わが家のC値は1を超えているうえ、その他の問題もあり、熱交換換気が真価を発揮できていないと感じています。換気による熱損失が大きく、湿度のコントロールが非効率です(乾燥期除湿期)。

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