全館空調を安く導入する 3 つのコツ

全館空調は快適なものですが、問題はコストです。初期の導入費用だけでなく、維持費用(電気代、フィルタと設備の更新費用)も高額になりがちです。しかし、工夫しだいでは費用を抑えることも可能です。ハウスメーカーの全館空調を導入し、毎月電気代の請求と闘っている者として、全館空調を安価に導入する方法について考えてみました。反省を込めて。。

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断熱性能を上げて設備費用を削減する

省エネ基準を少し上回る程度の断熱性能の住宅会社で全館空調システムを導入しようとすると、その導入費用は 200 万円前後になるケースはよくあります。ハウスメーカーではキャンペーン値引きで安く導入できることもありますが、これは他で値引きできる余地があるというだけのことなので、実際の費用で考える必要があります。

こうした全館空調が高いのは、空調機に冷房能力 10kW 以上の特別な設備が採用されていることが大きく影響しています。家庭用ルームエアコンの冷房能力は、最大サイズの 23 畳用で約 7.1kW です。全館空調では、家全体という、23 畳よりずっと広い空間に空調を効かせるため、10kW 以上になるのも無理はないと思われますが、実際には、高断熱住宅での連続運転で必要とされる設備能力はそれほど大きくありません。

参考 暖房負荷から必要なエアコン能力(kW)を計算するツール

そのことに気づいている住宅会社や施主は、エアコン 1 ~ 2 台による全館空調を採用しています。換気やダクトを含むシステムとして設置するケースと、単に開放的な間取りでルームエアコンを使用するケースなどがありますが、いずれにしても、家中を暖房することにより温度差の小さい快適な住まいにする点は同じです。こうした安価な全館空調などについては、以下の記事で紹介しています。

参考
三井ホームの新しい全館空調システムについて【エアコン1台の全館空調いろいろ】
桧家住宅のZ空調について全館空調ユーザとして思うこと
高断熱ペアガラスでエアコンを連続運転するとどうなるか?【アンケート結果】

これらの導入費用はだいたい、数十万円~百万円程度です。安いのは初期費用だけではありません。従来の全館空調システムではいずれ特注の設備を更新する必要がありますが、その費用は初期費用ほどでなくてもエアコンよりはずっと高額です。

安価な全館空調では、特殊な空調機ではなく汎用的なエアコンを使用するため、その更新費用も安く抑えることができます。ルームエアコン 1 ~ 2 台を更新するだけで済むのなら、従来のように部屋ごとにエアコンを設置する場合よりも安く済む可能性すらあります。

従来型の全館空調を採用する場合よりも断熱性能を上げる必要があり、そのために追加の初期費用がかかる可能性はありますが、長期的に考えると、従来型の高価な全館空調システムを選ぶメリットはあまりないのでは、と思います。

参考 HEAT20 G1・G2・G3の各基準について思うこととR-2000住宅

このような全館空調を選択する際の注意点は、それができる住宅会社を選ぶことです。私が自宅を建てた当時の三井ホームには「スマートブリーズワン」がなかったため、従来型の全館空調しか選択肢はありませんでした。ルームエアコン 1 台での全館空調的運用も理論的には不可能でないと思っていましたが、周りにそのノウハウがなく、「そんなことできるわけない」と思われているなかで採用する勇気はありませんでした。

こうした選択肢や情報が増えている現在は、うらやましい状況です。

窓対策でバランスよく高断熱化する

ただし安価な全館空調システムであっても、どの住宅にも無条件に勧められるわけではありません。やはり高気密・高断熱である必要がありますが、これはどの住宅会社もクリアしている条件ではありません。

参考 ハウスメーカーが全館空調に向いているかどうかを見極めるポイント

特に重要なのが、窓です。窓は熱貫流率で比べると断熱の一番の弱点になるため、断熱性能に大きく影響します。断熱性能が不十分な窓では床が冷えやすくなるため、全館空調のメリットを最大限に享受できません。

また、結露やカビの問題も生じるため、省エネ建材等級4(Uw≦2.33)をギリギリ満たす程度の窓では不十分です。最低でも、樹脂サッシ(樹脂スペーサ仕様)か、サーモスXくらいの高性能複合サッシを採用したほうがよいと思っています。

参考
APW330で床温度が上がる効果をアルミ樹脂複合サッシと比較してみた
APW 330に発生してしまった黒カビの対策

なお、同じ窓シリーズであっても、窓の種類に注意したり、南面以外の窓面積を減らしたり、トイレや浴室の窓をなくしたりすることでも、断熱性能や温度差は改善することができます。

参考 引き違い窓のデメリット【気密・断熱性能、虫の侵入】

暖房費に影響するパラメータを最適化する

ここまでは設備費用について考えましたが、長期的には暖房費用や冷房費用が、積み重なって大きなコストになります。

ある程度高断熱(Q値 < 1.6)、高気密(C値 < 1.0)な住宅であれば電気代が恐ろしく高いということはないと思いますが、これを小さくする工夫や努力も重要です。暖房・冷房それぞれで考える必要がありますが、一般的には暖房費のほうが高くなるため、ここでは暖房費について考えることにします。

冬の暖房費については、「断熱性能(Q値)から冬の暖房費用を推計するツール」で紹介しているように、ある程度は計算で推測できます。この計算は、家全体を連続暖房するのであれば、全館空調の方式を問わず共通するものです。

ここで使用している式は以下のとおりです。

熱損失:(Q + C/10) x 面積 x (設定温度 – 平均気温)

電気代:熱損失 ÷ COP x 24(時間) x 30(日) x 電気単価

つまり、暖房費を下げるには、この各項を最適化すればよいわけです。断熱性能というと UA値や Q 値(熱損失係数)にばかり注目してしまいがちですが、Q 値を 1 割小さくするのと、家の面積を 1 割減らすのとでは、暖房代の削減効果は同じです。エアコンの COP(エネルギー消費効率)を 1 割上げるのも、同様の効果が期待できます。

Q値、面積、内外温度差、COP、電気単価の 5 項目をそれぞれ 1 割改善すれば、0.9 の 5 乗は 0.59 なので、4 割以上も暖房費を節約できることになります。

各項を改善するヒントとしては、以下の記事が参考になるかもしれません。

(Q 値に関してどこをどう改善するのが効率的か)
断熱性能は窓、壁、換気で決まる(部位別の断熱性能比較)
Q値とUA値をざっくり計算するツール Ver.2.0

(建物形状しだいで Q 値は改善できる説)
ハウスメーカーが熱損失係数Q値を良く見せるカラクリ

(床温度を上げれば体感温度が上がるので設定温度を下げられる説)
床の温度とカーペットやマット、床材、床暖房の相性について
床下エアコンは理想的な暖房方式か?

(全館空調でも夜間の温度を低めにすると日平均の内外温度差が小さくなり節約できるうえ、よく眠れる説)
快適性重視と省エネ重視の 2 タイプの高断熱住宅
断熱仕様を変えずに家中の温度差を小さくする方法

(エアコンの効率には適正なサイズ選びが重要という話)
高断熱住宅に最適なエアコン能力を検討する(全館空調は非効率?)

(電力自由化でプラン選びも重要という話)
全館暖房の時間帯別電気使用量からお得な電気プランを考える

と、過去記事を振り返ってみて、一つ重要なことを書いていなかったことに気づきました。家をコンパクトにすることの重要性と注意点です。住んでわかった高断熱住宅特有の事情もあるので、そのうち書きたいと思います。

→追加記事:「高断熱住宅に特有の間取りの注意点【大は小を兼ねない】

なお、暖房費は日射熱取得を増やすことで節約できるという話もありますが、以下に書いているように、期待しすぎないほうがよいと思っています。ただこれはあくまでわが家のケースでの実感であり、もっと高断熱な住宅の場合には事情が異なるかもしれません。

日射熱による暖房費節約効果を消費電力と日射量計算から推定する
日射熱で暖まった床はいつまで暖かいのか確認してみた
南面の窓はトリプルよりペア?日射熱取得型と遮熱型はどっち?

記事タイトルでテキトーに「3 つのコツ」と書いたものの、細かく見ると注意点はたくさんありました。。

参考
全館空調に関するまとめ(記事紹介)

コメント

  1. 森水 より:

    いつも勉強させていただいております。
    こちらの記事内容で勉強した結果、全館空調はやめ簡易全館空調を取り入れましたので、紹介してもよろしいでしょうか?
    家のスペックとなりますが、建築地埼玉で、総二階建てに近い間取り、Ua値0.34、C値0.4の充填工法となっております。
    エアコン一台、一階のみの風呂場以外の全面床暖房、換気システムは、一種の顕熱換気です。
    この状態で、二種換気を別個にとりいれました。二種換気の吸気口をエアコン周辺に取り付け各部屋に配るように設計しました。こうすると、開放的な間取りにしなくても、エアコン一台である程度全館空調に近いものが出来ます。
    値段も20万程度ですので、高性能エアコンより安いぐらいです。
    難点は、ダクトがとても多くなることと、将来的な機械の取り替えやや難があるこです。
    このシステムだと、特許とかにも引っかからないのず、簡易にできるのでおすすめかと思いますがいかがでしょうか?

    • さとるパパ より:

      コメントありがとうございます。
      「二種換気を別個に」というのは、外気を給気するのではなく、住宅内の空調された空気を循環させるということですね。
      理屈上はシンプルなことですが、既存のシステムではなく独自に実際に導入されるとはすごいです。
      間取りによっては壁に送風ファンをつけてダクトレスにしたりといろいろ応用できそうですね。

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