冷房が効かない原因?内部発熱の影響をワット単位で考える | さとるパパの住宅論

冷房が効かない原因?内部発熱の影響をワット単位で考える

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住宅内の温熱環境に影響する要因は、住宅の断熱性能と冷暖房、日射熱取得だけではありません。住宅内では、家電や照明からの発熱、人体発熱、台所からの熱も発生しています。これら内部発熱は、冬には暖房負荷を軽減するメリットとなる一方、夏には冷房負荷を増加させる原因にもなります。

これらは総量として大きなものではなくても、限られた時間に局所的に発生する場合には注意が必要です。それぞれどの程度の影響があるか、適当な数値を使ってワット数に換算し、検討してみたいと思います。

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人体からの内部発熱

1 日に必要な摂取(=消費)カロリーは、成人男性で 2,500 kcal、成人女性で 2,000 kcal、こどもで 1,500 kcal くらいです。おおまかに 1 人一日 2,000 [kcal] = 8,368 [kJ] とします。
1 日の時間(60 x 60 x 24 = 86,400 秒)で割ると、一人につき約 0.1 [kJ/s] = 0.1 [kW] = 100 [W] です。

運動すれば増えるし、不在ならゼロです。

リビングに 4 人いれば、400 W の発熱になります。

1 日の総発熱量:5,000 Wh(在宅人数x時間による)
ピーク時の発熱量:400 W

キッチンからの内部発熱

キッチンには発熱するものが多数ありますが、特に影響が大きそうなものを取り上げます。

ガスコンロ

キッチンコンロでの都市ガスの年間消費量は、大阪ガスの Web ページによると 88 m3 とのことです。
都市ガスの熱量は約 11,000 kcal/m3 だそうなので、1 日あたり 11,100 kJ にもなります。

これが調理時間 1 時間に発生すると仮定して 3600 秒で割って計算すると、約 3,000 W もの発熱になります。

最近のガスコンロの熱効率が 56% とのことなので、この熱のうち、調理に使われる熱は半分くらいなのでしょう。

調理に使われた熱でも、捨てられるお湯や油の熱は室温に影響しません。食材に残る熱は食べても冷めても室温に影響しますが、多くはないでしょう。

調理にも使われない余分な熱を 44% とすると約 1,300 W になりますが、その多くは換気扇で外に排気されると思いたいものです。換気扇がどれだけの熱を回収しているのかはわかりませんでしたが、熱を外に捨てるためには以下のポイントが重要だと思います。

  • 適度な火加減
  • 適度な風量
  • 定期的な掃除

ただ、それでも熱量が大きいため、どうしてもいくらかは室温に影響してしまうでしょう。

わが家ではよく汚染防止のために以下のようなアルミ製レンジパネルを使用していますが、これは換気扇による熱回収の割合を高める効果もあるのではないかと勝手に期待しています。

1 日の総発熱量:3,000 Wh
ピーク時の発熱量:1 時間の平均で 2,000 W くらい?
※室内環境に影響するのは上記の一部(レンジフードによる排熱、捨て湯などがあるため)

IH クッキングヒーター

IH クッキングヒーターの場合の年間消費電力は、大阪ガスの Web ページによると 780 kWh とのことです。1 日あたり 2137 [Wh] = 7693 [kJ] = 2140 [Wh] です。
ガスより高効率なので、熱量も少なめです。

ガスと同様に 1 時間に発生する熱として計算すると、約 2,100 W の発熱になります。

IH の熱効率を 8 割とすると、調理に使われない熱は約 400 W です。よくわかりませんが、これはトッププレートなどが熱くなる分なのでしょうか。一部は換気扇で排出できそうです。

IH の室内空気への影響は、ガスコンロと比べるとだいぶ少なくなりそうです。

1 日の総発熱量:2,140 Wh
ピーク時の発熱量:1 時間の平均で 1,400 W くらい?
※室内環境に影響するのは上記の一部(レンジフードによる排熱、捨て湯などがあるため)

IH のよいところは、必ずしも換気扇を回す必要がないことです。

暖房期にお湯を沸かすときは、換気扇を止めていれば暖房や加湿器の足しにすることができます。お湯を捨てなければ、消費電力はすべて内部発熱になるはずです。ただしこの暖房効率は電気ストーブやスチーム式加湿器と同じようなものでエアコンより悪いため、あくまで副次的な効果と考えるべきでしょう。

参考 エアコン暖房が低コストである理由

ガスにしろ IH にしろ熱量は多いので、夏の加熱時間はなるべく短縮したいものです。煮物などの加熱時間を減らすには、圧力鍋(Amazonリンク)が便利です。

食器洗い乾燥機

ビルトイン式の食洗器からの発熱は、価格コムで一番人気の商品の標準コースで 1 回 100 分、消費電力 520 Wh でした。
1 日 2 回運転するとすると、以下のようになります。

1 日の総発熱量:1,040 Wh
ピーク時の発熱量:1 時間の平均で 300 W くらい?

ただし、毎回 60 ℃のお湯を 9L くらい使い、そのお湯はほぼ捨てられるため、室内環境への影響が実際どの程度かはよくわかりません。

電子レンジ

電子レンジからの発熱は、価格コムで一番人気の商品で年間消費電力量が 70.4 kWh とあったので、1 日 193 Wh くらいです。平均的な消費電力を 1100 W とすると、1 日につき、温め時間 10 分くらいでしょう。

この消費電力はレンジ内部の発熱と食材が温まる熱の合計に相当し、いずれも結果的に室内を温めます。夕方の 1 時間くらいの間に集中して熱が発生すると仮定すると、このときの発熱は押しなべて 200 W くらいになると思われます。これらの熱はレンジフードからあまり排出されそうにないので、短期的には少し影響しそうです。

1 日の総発熱量:193 Wh
ピーク時の発熱量:1 時間の平均で 180 W くらい?

炊飯器

炊飯器からの発熱は、価格コムで一番人気の商品で消費電力量が 1 回 154 Wh とありました。1 時間かけて熱を出すとすると、平均して 150 W くらいの発熱です。

1 日の総発熱量:154 Wh
ピーク時の発熱量:1 時間の平均で 150 W くらい?

配置によりますが、レンジフードが蒸気や熱を回収してくれているかどうかは微妙なところです。回収率を高めて内部発熱の影響を抑えるには、炊飯器を使うより、IH 対応のご飯鍋(Amazonリンク)や圧力鍋(Amazonリンク)でコメを炊くのが効果的な気がします。

上記を総合すると、キッチンからの発熱は調理時には無視できない程度になりそうです。

家電からの内部発熱

家電からの発熱は、ほぼ消費電力に相当します。
消費電力が多いものはエアコン、冷蔵庫、テレビなどですが、エアコンは室外機が屋外にあるのでほぼ除外してよいのではないでしょうか。かつて多くを占めていた照明は、LED の普及によってだいぶ少なくなりました。

冷蔵庫からの発熱は、価格コムで一番人気の 411L の商品で年間消費電力量が 315 kWh とありました。1 日 863 Wh、平均消費電力は 36 W です。平均すると大きくはありませんが、旧型や大型では大きくなりますし、温度差の大きい夏、冷蔵庫をよく開け閉めする夕方などは多くなりそうです。

1 日の総発熱量:864 Wh
ピーク時の発熱量:1 時間の平均で 50 W くらい?

テレビからの発熱は、価格コムで一番人気の 55インチの商品で年間消費電力量が 160 kWh とのことでした。1 日 438 Wh となり、起動時間を 1 日 4.5 時間とすると約 100 W の計算になります。

1 日の総発熱量:438 Wh
ピーク時の発熱量:1 時間の平均で 120 W くらい?

なお、冷蔵庫やテレビなどの消費電力は一定ではないため、さまざまなカタログの年間消費電力量は一定の規格に従って測定されています。これらは実際より過小評価されている傾向があるので、実際の消費電力はカタログ値より大きいでしょう。

洗濯機は洗濯時の消費電力は大したことありませんが、乾燥時の消費電力は 1000 W 近くになります。この熱がすべて室内に放出されると考えると、影響は小さくないでしょう。ガス乾燥機の場合は排気が外に捨てられますが、室内にある機器も高温になるので影響がないとは思えません。冷房期のことを考えると、設置場所や換気空気の流れに注意が必要かもしれません。コスト的には、なるべく部屋干しでエアコンと気流によって乾かしたいものです。

参考 除湿能力・コストの比較【エアコン、除湿器、熱交換換気、エコカラット、デシカ】

家電はリビングなどに集中して配置されているので、積もるとそれなりに影響のある発熱量になっていることが推測されます。

風呂からの内部発熱

お風呂の熱は捨ててしまえば室内にそれほど影響しないでしょうが、お湯には結構な熱量があります。

たとえば、180 L 40 ℃のお湯が 20 ℃に冷めるときに出る熱量は、
180,000 [mL] x (40-20) [℃] = 3,600,000 [cal] = 3,600 [kcal] = 15,062 [kJ] = 4,184 [Wh] にもなります。

1 日の総発熱量:4,184 Wh(お湯を捨てない場合)

10 時間かけて冷めるとすると、平均して約 420 W です。これが室内にすべて移動してくれるわけではありませんが、ただ捨てるにはもったいない熱量です。

冬は最後にお湯を捨てずに浴槽のフタを開けておき、浴室換気扇を止めて風呂にサーキュレーターで空気を送るようにしてはいかがでしょうか。こうすれば、浴室を乾かしつつ風呂場の湿気と熱を居住空間に送ることができ、一石二鳥です。うちではやりませんが。。(汚れたお湯は早く捨てて洗いたいので)

参考 【カビ予防】浴室を早く乾かすにはドアを開けるべきか?【検証】

評価基準として冷暖房負荷と比較する

今回は内部発熱を無理やりワット数で表してみましたが、それが多いのか少ないのかはイマイチわかりにくいところです。

そこで、評価の基準として、一定の空間の冷暖房負荷が何ワットくらいなのかを計算してみました。

ここでは、温暖地の HEAT20 G2 レベル(Q 値 1.6 [W/(m2K)])の高断熱住宅で冷暖房を連続運転する場合で、14 畳(25.5 m2)の LDK について考えます。

内部発熱による暖房負荷軽減効果

冬に外気温 0 ℃、室温 23 ℃ とすると LDK の暖房負荷は、1.6 x 25.5 x (23-0) = 938 [W] です。

暖房負荷が 900 W で内部発熱が 500 W あれば、エアコンの暖房能力は 400 W で済むことになります。このときのエアコンの消費電力は、エネルギー消費効率(COP)で割ると 100 W とかになります。

内部発熱が 1,000 W くらいあれば、無暖房でも快適に過ごせそうです。

高断熱住宅は少しの熱で室温を変えられるので、内部発熱の影響を受けやすいことがわかります。

内部発熱による冷房負荷の増大

冷房負荷の計算はこれよりもやっかいです。
夏に外気温 34 ℃、室温 27 ℃ とすると LDK の冷房負荷は 1.6 x 25.5 x (34-27) = 286 [W] ですが、日射熱の侵入があればグッと増大するからです。

別の計算として、35 坪(116 m2)を 14 畳用(4 kW)エアコン 1 台で全館冷房するケースを考えると、LDK 面積分の最大冷房負荷は 4,000 [W] x 25.5/116 = 880 [W] と計算することもできます。この負荷を超えると、14 畳用エアコン 1 台では冷房が効きにくくなるかもしれません。

冷房負荷が 300 W でも、LDK に 4 人居てテレビを付けて料理しているケースを考えると、その内部発熱は以下のようになります(数値は独断で適当に決めました)。

(人体発熱)+(テレビ)+(コンロ)+(電子レンジ)+(炊飯器)+(冷蔵庫)
= 4×100 + 130 + 300 + 200 + 150 + 50
= 1,230 [W]

この場合、内外温度差から計算される冷房負荷を 300 W としても、合計の冷房負荷は 1,530 W となり、LDK 面積分の最大冷房負荷を軽く超えています

住宅全体で考えると、日射熱の影響がほぼないとして合計の冷房負荷は約 2,500 W となります。エアコン能力の 4,000 W は超えていません。

しかし、短時間に LDK で発生した熱が住宅全体ですぐに均等化されるかは未知数ですし、同時に洗濯乾燥機で 1,000 W の乾燥運転を行っているとすると合計 3,500 W となり、住宅全体でみてもギリギリになってしまいます。

上記は適当な数値を当てはめた試算ではありますが、夕食の時間帯に冷房が効かず暑くなってしまう、というのは夏には結構あることのような気がします。暖房は 23 ℃にするつもりが 20 ℃になってしまってもそれほど不快ではありませんが、冷房では 27 ℃のつもりが 30 ℃になってしまうと非常に不快です。

エアコン冷房が効かない恐れがある場合の対策としては、エアコン設置位置を発熱源から離しすぎないことと、発熱源を時間的・距離的に分散させることがおそらく有効でしょう。

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