HEAT20 G1・G2・G3の各基準について思うこととR-2000住宅

HEAT20(2020年を見据えた住宅の高断熱化技術開発委員会)という団体が、推奨される断熱性能のレベルとして G1・G2・G3 などの基準を発表しています。UA値で表にすると、以下のような基準です。

地域区分別のUA基準値
1234567
都市例旭川札幌盛岡仙台新潟東京宮崎
H28省エネ基準(参考Q値)0.46(1.6)0.46(1.6)0.56(1.9)0.75(2.4)0.87(2.7)0.87(2.7)0.87(2.7)
ZEH 基準0.400.400.500.600.600.600.60
HEAT20 G10.340.340.380.460.480.560.56
HEAT20 G20.280.280.280.340.340.460.46
HEAT20 G30.200.200.200.230.230.260.26

よく考えられた基準値だと思うのですが、3 種類以上もあると、施主にとってはどれがいいのかと悩むこともあるかもしれません。各基準の説明を見ても、「体感温度15℃未満となる割合が〇%程度」と言われてもピンと来ません。また、この基準は温暖地では間欠暖房、寒冷地では連続暖房を前提としており、温暖地で連続暖房(全館空調など)を行う場合はどうなのかもよくわかりません。

そこで勝手ながら、HEAT20 の各基準を暖房方式ごとに分け、それぞれについて個人的な見解を述べてみたいと思います。

断熱性能だけで一概に評価できるものではありませんが、傾向として考えていただければ幸いです。

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HEAT20 G1・G2・G3 レベルの項目別評価

HEAT20 の各レベルについて、暖房方式ごとに 6 つの観点から無理やり 3 段階で評価してみました。

断熱費用設備費用暖冷房費長期総コスト快適性一言でいうなら…
G1(間欠運転)最低限目指したいレベル
G1(連続運転)短期向きの贅沢な家
G2(間欠運転)〇+〇+可もなく不可もなく
G2(連続運転)連続運転の最低レベル
G3(間欠運転)究極のエコハウス
G3(連続運転)〇+リッチなエコハウス

◎=非常に良い(低コスト)
〇+=とても良い
〇=良い
△=良くない(高コスト)

以下に、それぞれの項目について補足します。

断熱費用

高断熱にするほど建築費用が高くなるのは当然のことです。G1 レベルなら木造で高性能ペアガラスを導入すれば実現できそうですが、G2 レベルではより高性能なサッシを採用したり、全体的な断熱レベルを上げる必要があるでしょう。G3 レベルでは、トリプルガラス以上を採用するだけでなく、壁内の充填断熱だけでは困難なので、外断熱も併用する必要があるでしょう。

ただしこれは、建築時にのみかかるイニシャルコストです。

設備費用

設備にもいろいろありますが、ここでは断熱性能に左右される暖冷房設備に限定します。高断熱住宅で連続暖房を行う場合、エアコン 1~2 台で住宅全体を暖房できるので、各部屋にエアコンを設置する場合よりも安価です。G1 レベルくらいで全館空調システムを導入しようとした場合、200 万円前後するような大きな設備が一般的なため、とても高価です。G1 レベルの間欠暖房でも、床暖房を多く導入するなどすると高くなります。

設備は壊れるものなので、イニシャルコストだけでなく更新費用もかかります。

暖冷房費

暖房費は同じ暖房方式の場合は高断熱ほど安くなります。むりやり評価してみましたが、間欠運転ではどれだけ使うかによって差があるため、G1 レベルで寒さを我慢せずに各所で暖房を使いまくった場合にはとても高くつく可能性があります。G3 レベルになると、暖房を使用する必要性がかなり減るため、非常に低コストです。

連続暖房の場合、暖房費は断熱性能(Q値)にほぼ比例します。ただし冷房期に関しては、快適性を求めると常に除湿や弱冷房を行うことになるため、いくら高断熱でもある程度の費用はかかります。G3 レベルで夏のエアコン使用を最小限に控えれば本当に省エネなエコ生活ができますが、高断熱住宅で除湿した夏の快適さを一度でも味わってしまうと我慢するのは難しい気がします。低コストで温度を下げずに除湿できる技術革新が起きればいいのですが。

この冷房費を下げるには、気密・換気・日射管理など、断熱性能以外の工夫が重要になります。

暖冷房費はランニングコストなので、長期的に考えるほど差が大きくなります。また、環境への影響を重視する方にとっては建材の選択とともに重要な項目です。

総費用

上記のイニシャルコストとランニングコストの合計を 60 年くらいの期間で大雑把に考えてみました。このあたりはちょっとした条件の違いで大きく変わるので、意見が分かれるかもしれません。この評価はあまり気にしないでいただきたいのですが、個別のケースは住宅会社に聞いたり自分で計算したりしてざっくり比較計算することが可能でしょう。

快適性

全館空調のような方式であれば暑さ寒さの悩みはほぼなくなります。細かく見れば G1 より G3 のほうが上でしょうが、どれも快適です。

間欠運転の場合、高断熱になるほど寒さの問題が小さくなりますが、一方で、夏を快適に過ごすための工夫は高断熱ほど徹底する必要があります。

HEAT20 G1・G2・G3 の各レベルについて思うこと

HEAT20 G1 レベル

ZEH レベルに近いので多くの大手ハウスメーカーの標準に近いレベルですが、設備費用と維持費用が高くなるため、全館空調のような全室暖房を採用することは長期的なコストを考えるとお勧めできません。木造住宅では、高価な全館空調システムを入れるのであれば、窓の断熱レベルを上げて G2 レベル以上にし、安価に連続暖房できるようにするほうがお勧めです。

間欠暖房では快適性を△としましたが、まだまだ寒い省エネ基準レベルと比べればずっと快適です。高断熱な窓を採用することはメリットが大きいので、予算や工法の制約により G2 以上の断熱レベルが難しい場合でも、窓にこだわることで達成しておきたいレベルだと思います。

HEAT20 G2 レベル

温暖地では北海道の省エネ基準レベルに相当します。木造なら充填断熱だけでも実現可能なレベルであり、安価な全館空調を導入することもできるので、連続暖房を採用するのであれば実現したいレベルです。

このレベルでは比較的低コストに全室連続暖房を行うこともできるので、間欠運転にするか、全館空調的なエアコンの使い方はするかは悩みところです。

G2 レベルの連続暖房で暖房費が高いか安いかは微妙なところですが、工夫しだいでは安くすることもできると思います(次回の記事にする予定)。

ただ、連続暖房にするのであれば、もう少し上の断熱性能にするほうがどちらかというとお勧めです。

HEAT20 G3 レベル

断熱性能が高いと暖房費を下げることはできますが、高ければ高いほど良いわけでもありません。この暖房費を極限まで下げられるちょうどよい断熱性能のレベルが G3 レベルなんだろうと理解しています。

初期費用が高くなってもできるだけ環境負荷の小さい生活をしたい方にお勧めです。

ただし、このレベルになると、日射熱や内部発熱の影響も受けやすくなります。年中常にエアコンを入れておけば一年中快適にはなりますが、省エネの観点からは微妙なので、エアコンへの依存度を下げるためにはさまざまな配慮が必要になります。ここは住宅会社の腕が問われるところです。

個人的なお勧めは R-2000住宅レベル

以上、HEAT20 のレベルはどれも一長一短があり、どれがベストなのかは人によるところだと思います。

個人的には、温度差が小さく快適になる連続暖房方式は非常にお勧めです。連続暖房となると、断熱性能は G2 ~ G3 の範囲が適していて、G2 レベルでは暖房費がやや高く、G3 レベルでは建築費がやや高い傾向があります。理想は G3 レベルであり、住宅業界はここを目指していくべきだと思いますが、このレベルの住宅は坪単価が高いのが現状です。トータルコストやエコの観点も大事ですが、若いうちに無理して高いローンを組んで高価な住宅を購入するのもどうかと思うので、現実的には G2 と G3 の中間くらいの断熱レベルがベストだと思っています。

温暖地なら、UA=0.34 くらい、Q 値で表すなら 1.36 前後でしょうか。木造住宅では、充填断熱だけであっても、高性能な断熱材やトリプルサッシ、熱交換換気などを採用すれば実現可能なレベルです。

R-2000住宅という基準をご存じでしょうか。高断熱住宅の世界基準というと最近はドイツのパッシブハウスが有名ですが、R-2000住宅はカナダで 1982 年に策定された基準です。詳しくは「R-2000住宅」でググっていただくとして、簡単にいうと Q 値 1.4 以下、C 値 1.0 以下の住宅であり、私の理想とまさに一致しています。

日本でこの基準を標準仕様でクリアしている住宅会社は今でも少数派であり、昔からこの住宅基準を守っているビルダーには先見の明があると感じます。

私は自宅を建てる際、大手ハウスメーカーの設計士に「R-2000 住宅レベルの家を建てたい」と伝えたところ、「R-2000 なんて久しぶりに聞いた」と鼻で笑われたものですが、その大手ハウスメーカーは現在もこの基準をクリアしていません。いろいろと妥協した結果、R-2000基準に満たず反省点の多い中途半端な住宅に住んでいますが、もう後戻りはできません。

なお、R-2000住宅について調べていたら、「日本の暑い夏には合わない」という意見を見かけました。この問題は Low-E 遮熱ガラスが広まった現在はマシになったものの、高断熱住宅すべてに当てはまる課題でもあります。この問題と対策についても、今後改めて書いていきたいと思っています。

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