高断熱住宅で全館暖冷房を行う場合、エアコンに関して、大は小を兼ねるものではありません。エアコンの効率は出力によって左右され、低い出力だと効率(燃費)が大きく悪化してしまうからです。
ここでは、わが家のケースで使用電力量の実態を調べた結果から、最適なエアコン能力を選ぶ基準について考察したいと思います。
効率的なエアコン運転条件とは
最初に、エアコンの能力と効率の関係について紹介しておきます。これについては松尾先生の著書『ホントは安いエコハウス』の p.77 以降に詳しい説明があります。また、やや専門的ですが、次のページの中程にも同様の説明があります。
要点だけ述べると、エアコンの効率が最も高くなるのは定格能力の 0.7~0.9 あたりで運転しているときです。
そして、定格能力以上でもやや効率が落ちますが、特に効率が落ちるのは定格能力の 0.5 を下回る運転状況のときだそうです。
エアコン能力が過剰だと非効率になるというのは、そういうわけです。
わが家のエアコン能力と使用実態
それでは、わが家のケースでエアコン能力と使用電力量の実態を確認してみましょう。
以下は、気温が -1 ~ 10.5 ℃(平均 5 ℃)という標準的な冬の 1 日における、暖房のみの時間帯別電気使用量です。
わが家のエアコン(全館空調)の定格消費電力は 2.63 kW(灰色のライン)なので、だいたい青枠内の範囲が一番効率的な運転状況ということになります。
ご覧のとおり、青枠内で運転している時間帯はゼロです。ほとんどの時間帯は、非効率とされる定格能力の半分以下で運転されています。朝の 5 ~ 7 時については、設定温度を 2 ℃上げた後のため、フル稼働に近い状態になっています。どちらにしても、効率的な運用になっているとは思えません。
参考までに、暖房機の定格暖房能力は 11.2 kW(最小 2.6 ~ 最大 14.0 kW)で、家庭用ルームエアコンの最大サイズを少し上回るくらいの能力です。これでもシリーズ中最小規模の全館空調システムなのですが、わが家にとってはそれでも過剰です(わが家の最適能力については後述します)。
三井ホーム標準の断熱仕様で広い住宅の場合には適正な能力になるのでしょうが、高断熱仕様や小規模の住宅にとっては過剰ではないでしょうか。住宅の高断熱化は今後も進んでいくのですから、全館空調を提供している会社はより小規模な全館空調システムを出してもいいように思います。
最適なエアコン能力の選び方
結論からいうと、高断熱住宅で連続暖房を行う場合に最適なエアコン能力は、地域で要求される必要暖房能力に合わせるのが良さそうです。
必要暖房能力は、こちらのツールで計算できるとおりです。
わが家のケースで、理論上の最大暖房負荷と、厳寒期の実際の消費電力とに大きな差がなかったことは、こちらの記事で紹介しています。
冷房能力はどうか
冷房はどうなのかという疑問はありますが、これは日射熱の遮蔽がしっかりと行われているかどうかで大きく異なります。
参考までに、夏の日射をホドホドに遮蔽しているわが家の場合で確認したところ、冷房連続運転時の消費電力は猛暑日でも暖房以下でした(追加記事:夏のエアコン連続冷房時の最大消費電力を調べた結果、再熱除湿はやはり高い)。
ケースバイケースですが、一般的に、エアコン選定においては温度差の大きい冬の暖房能力のほうを重視してよいのではないでしょうか。
関連記事:温暖地でエアコン能力を決めるのは暖房と冷房のどちらか?
わが家の場合
わが家の必要暖房能力を上記ツールで計算すると、6.2 kW と算出されました。エアコンのカタログを見ると 18 畳用のルームエアコンの暖房能力が 6.7 kW くらいなので、もし 1 台ならその程度の能力がちょうどよいことになります。そのクラスの定格消費電力は約 1.5 kW なので、上の実際の電気使用量に当てはめると、多くの時間帯で効率的な暖房運転を行うことができそうです。
上記のグラフでは使用電力量が大きくなっている時間帯もあるため、使用状況によっては能力が不足するのではないかという心配もあります。しかし、とある 18 畳用エアコンの仕様をよく読むと、定格の暖房能力は 6.7 kW でも、最大暖房能力は 11.6 kW もあります。これなら、設定温度を変えたときにも多少の余力があるのではないでしょうか。
全館空調とルームエアコンとでは送風の仕組みが異なるため、全館空調を 18 畳用のルームエアコンに置き換えて問題がないわけではありません。高断熱住宅の温度差については、次の記事をご覧ください。
・高断熱ペアガラスでエアコンを連続運転するとどうなるか?【アンケート結果】
・断熱仕様を変えずに家中の温度差を小さくする方法
わが家が将来もし全館空調を更新しないなら、エアコン 2 台設置がいいかなとか考えています。
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