断熱性能は窓、壁、換気で決まる(部位別の断熱性能比較) | さとるパパの住宅論

断熱性能は窓、壁、換気で決まる(部位別の断熱性能比較)

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住宅の断熱性能を上げるためにはどうすればよいでしょうか。

まず始めに、壁と窓の熱貫流率(W/㎡・K)を確認し、比較してみましょう。熱貫流率とは、材料の厚みが考慮された、熱の伝えやすさを表す指標です。値が小さいほど熱を通しにくく、断熱性能が高いことを意味します。

熱貫流率と熱伝導率の違い

熱貫流率は、熱伝導率(W/m・K) と似ていますが、熱伝導率は材料の厚さが 1m のときの値のことであり、材料別の熱の伝えやすさを表す指標です。熱伝導率では、材料が分厚いか薄いかは考慮されません。

一方、熱貫流率は、材料の厚みが考慮された指標です。そのため、住宅の壁や窓からどれだけの熱が逃げているのかを把握するために重要なのは、熱貫流率になります。

材料の厚さが二倍になれば、熱を通しにくくなるため、熱貫流率は半分になります。反対に、薄いほど熱を通しやすいため、厚さが半分になれば熱貫流率は倍になります。つまり、熱貫流率は、厚さに反比例します。

熱貫流率は、熱伝導率を長さ [m] で割ることによって計算できます。なお、熱貫流率の逆数は熱抵抗値といいます。

参考 断熱材の熱伝導率と厚さから熱貫流率Uおよび熱抵抗値Rを計算するツール

次の表に、戸建住宅の外壁や窓によく使われる仕様ごとの熱貫流率を示します。

壁や窓の熱貫流率

この表からわかること

この表からは、全体的に窓は壁面と比べて大幅に熱貫流率が高い(=断熱性が低い)ことがわかります。

たとえば、ハウスメーカーで一般的なアルミ樹脂複合サッシのペア(二重)ガラスは、一般的な高性能グラスウール16Kの壁と比較すると、6倍も熱を通しやすいことがわかります。

この表からは、以下のこともわかります。

  • 窓面積が小さく壁面積の割合が大きい住宅ほど、断熱性能が高くなる
  • ガラス1枚の窓と高断熱な窓とでは、断熱性能の差が非常に大きい
  • 窓面は住宅の断熱の弱点→温度が低くなる→結露が生じやすい
  • 高断熱な窓では窓がそれほど断熱の弱点にならない
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一番大きい窓からの熱損失

関東の次世代省エネレベル(Q=2.7)程度の住宅では、家全体の熱損失のうち、窓からの熱損失が約半分を占めます。このことから、断熱性能を上げるには、窓の断熱性能を上げるか、窓の総面積を減らすことが一番簡単な方法であることがわかります。

窓が少ないほうが高断熱になるとはいえ、窓には採光・日射熱取得・通風などの役割もあるため、そこは総合的に考える必要があります。

参考 東西北面の最適な窓面積の目安について

また、窓をいくら小さくしても、低断熱な窓であれば結露やコールドドラフトが問題となるため、窓の断熱性は軽視できません。

参考 結露が発生する条件および対策

日本の窓の断熱性能は世界的に低いレベルでしたが、最近はマシになってきており、価格も下がってきています。とはいえトリプルガラスや真空トリプルはまだ高価であり、重量が増すという問題もあるため、関東以西ではLow-EペアガラスのサーモスXや樹脂サッシもお勧めです。この程度までのグレードアップは費用対効果が高いので、高断熱化を考えるならまず検討すべき項目でしょう。

参考 関東以西の温暖地でトリプルガラスは必要か?

ただし、一般的な木造軸組工法では、それだけで Q 値 1.6 を切るレベル(HEAT20 G2)はやや困難です。

次に大きい壁からの熱損失

多くの住宅では、窓に次ぐ熱損失は、屋根・壁・床から発生しています。なかでも壁は面積が大きい分、影響が大きいため、窓に次ぐ改善ポイントとしては壁の断熱性能が重要になってきます。

しかし、一般的な充填断熱(外断熱なし)では断熱材を入れられる壁の厚みが決まっているため、壁の断熱性能を上げることは簡単ではありません。

壁の断熱性能を上げるには、発泡プラスチックなどの高性能な断熱材(弱点もあります)を利用するか、外断熱を施すかといった対応になり、どちらにしても高コストです。

ツーバイシックス工法では、充填断熱だけでも 140 mm の厚みを確保できるため、グラスウールでもなかなかの断熱性能を発揮できるというメリットがあります。

そのため、ツーバイシックス工法を選択するか、グラスウールの付加断熱(新住協でやってます)を施すか、あきらめて他の断熱を強化する(トリプルガラスや次項の熱交換換気)といった対応も考えられます。

高レベルでは見逃せない換気による熱損失

換気による熱損失は、Q 値で表すと 0.4 相当になります。上記の方法で窓や壁の性能を上げると、相対的に換気による熱損失の割合が増え、1/3 くらいを占めるようになります。

換気による熱損失は、換気により排出される熱を回収できる熱交換式換気システムを導入することで減らすことができます。第一種換気システムが必要になり、初期費用が高くつきますが、80%~90%程度の熱交換率が達成できるようです。全熱交換型換気では湿度を制御しやすくなるので、それによる快適性のメリットも重要なポイントです。

とはいえ、熱交換型換気を採用しても換気による熱損失が 9 割も減るわけではないので、過剰な期待はできませんし、換気の設計には多くの注意が必要です(参考)。

ちなみに床や屋根の断熱も重要ですが、どこも標準で分厚い断熱材を使用しており、大きな差は出ない印象です

追記:屋根は夏の日射でかなりの高温になるため、屋根の断熱性能は高い必要があります。にもかかわらず壁程度の断熱性能しかないケースも多いようなので、このようなケースではまず屋根(または天井)の断熱を強化すべきでしょう。詳細は「屋根の断熱性能が低すぎるという問題を調べてみた結果」をご覧ください。

床にしても、低い場合は上げる必要があります。

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