全館暖房を行った場合の 1 カ月の暖房費用(エアコン電気代など)を推計するツールを作成してみました。
誤差が生じる要因はいろいろとあり、例によって結果は保証できかねます。が、高断熱住宅で全館空調やエアコンの連続運転による全館冷暖房を検討している方にとって、多少の目安にはなるのではないでしょうか。
わが家の場合はほとんど計算どおりの結果となりましたが、実際と誤差が生じる場合には、その原因を考えてみるのも面白いかもしれません。
参考までに、年間暖房費が気になる場合、わが家の場合 10月~4月までの暖房費の合計(=年間暖房費)はピーク月の 4 倍超でした。
計算方法
計算方法は以下で紹介した方法とほぼ同じです。
少し違う点として、今回は気密性能(C 値)も考慮する仕様としました。この計算式は、以下と同じです。
この計算方法は常に暖房を必要とする条件を想定しているため、厳寒期のみが該当し、春や秋は当てになりません。
注意事項
以下の記事にも書いたように、Q 値が暖房費に比例するのは一定の条件下の場合のみです。
日射の影響はないものとしているため、日射熱をうまく取り入れることができれば、実際はもっと暖房費を抑えることができます。
一方、台所の換気扇をたくさん回したり、窓・ドアの開閉でたくさん換気を行う場合には、計算より暖房費が高くなることになります。換気計画に問題があり、換気回数が 0.5 回より大きい場合も同様です(関連記事:第一種換気の実際の換気回数は 0.5 回/h 以上なので弱められる?)。
今回のツールはエアコンの使用を基本としていますが、エアコン以外でも計算は可能です。
計算ツール
補足情報
Q 値:UA 値しかわからない場合は、Q = 2.67 x UA + 0.39 で換算できます(換算ツールはこちら)。この 0.39 は熱交換のない換気による熱損失に相当するので、熱交換型換気の場合は軽減できます。既定値(2.7)は、温暖地で義務化される次世代省エネ基準の値です。
参考 断熱性能を示すQ値とUA値の違いと注意点
なお、マンションの場合、Q 値も UA 値も不明です。区画の位置や玄関戸の材質、窓の種類が大きく影響します。ペアガラスなら 2 以下になりそうな気がします。
参考 マンションの断熱性能を考える
C 値:不明な場合、温暖地の次世代省エネ基準で 5.0 以下相当となっていることから、4 くらいの適当な数値を入れてください。C 値を測定しないほど気密性能を重視していない住宅では、壁全体に面材を貼る工法の木造住宅では 2 くらいになります。鉄筋コンクリートのマンションなら 1 くらいでしょう。この計算では Q 値ほど大きく影響しないので、だいたいで OK です。
参考 工法ごとの C 値
延床面積:1 坪はおよそ 3.3 ㎡ です。通常は延床面積に算入しない空間(階段、吹き抜けなど)の面積も含めて入力してください。
設定温度:20~24℃くらいが一般的です。気密・断熱性能が低いと足元が寒くなるため、温度を高くする必要があります。
参考 高気密・高断熱住宅に関するまとめ
月間平均温度:地域ごとの過去の気象データは気象庁のページで確認できます。
エアコンの暖房 COP:エアコンのカタログに記載されています。記載されていない場合も、暖房能力(kW)を消費電力(kW)で割ると計算できます。APF の場合、実際は 2 ~ 3 割低いことが多いようです。APF と COP についてはこちらの記事をご覧ください。
なお、灯油やオイルヒーターによる暖房方式を検討している場合、COP = 1 で計算することができます。
電気料金の単価:時間帯や使用量によって電気料金の単価は変わるため、平均的な単価を入力してください。灯油の暖房を検討している場合は、燃焼の熱量を kWh に換算して単価を計算してみてください(おそらく 9 円/kWh 前後)。
この計算式は、次の書籍で紹介されている式を参考にしています。
コメント