日本の住宅では多く採用される引き違い窓。以前の住宅は引き違い窓しかなく、他のタイプの窓を知りませんでしたが、現在の住宅では、すべり出し窓、FIX窓(はめ殺し窓)、上げ下げ窓も採用したため、2 年経ってわかった窓種ごとのメリット・デメリットを紹介したいと思います。
断熱性能の違い
同じ窓シリーズでも窓のタイプによって断熱性能に差があります。タイプごとの熱貫流率のデータがリクシルの「代表試験体の試験または計算による熱貫流率」(PDF)に掲載されていたので、その一部を紹介します。
樹脂サッシの複層ガラス「エルスターS」の熱貫流率はカタログ値では 1.30 と表示されていますが、これは高性能な縦すべり出し窓の一例に過ぎません。すべり出し窓や FIX 窓などはこの数値ですが、引き違い窓では 1.46(約 1 割増)、上げ下げ窓では 1.58(約 2 割増)と、すべり出し窓より劣る断熱性能になっています。
この差は窓シリーズによっても異なりますが、意外と大きいなと思いました。
気密性能の違い
引き違い窓は可動部にすき間があるため、すべり出し窓と比べて気密性能が悪化します。『最高の断熱・エコ住宅をつくる方法』(西方里見著)によると、住宅 1 軒分のサッシをすべて引き違い窓にするか、すべて片開き窓などにするかで C 値 0.3 相当の差が出るそうです。
その程度の違いなら大したことはないと軽く見ていましたが、このすき間が意外とクセ者であると気づいたのは、住んでからのことです。
サッシが汚れる
白のサッシにしたことや、砂ぼこりの多い土地柄もありますが、サッシの汚れやすさ、掃除のしにくさは開き戸とは比べ物になりません。開け閉めしてもしなくても、下部のレール付近にはすぐに土ぼこりがたまってしまいます。放置するとよくないので定期的に掃除する必要がありますが、掃除機だけでは吸い取れず、水や歯ブラシやメラミンスポンジを使う必要があり、本当に面倒です。
虫が入る
網戸があって窓を閉めていれば虫は入らないものと思っていましたが、その認識は間違っていました。
なんだかコバエがいるなと不思議に思っていると、一部の引き違い窓のサッシに多く見つかることに気づきました。この虫をよく観察すると、ショウジョウバエとは違い、黒くて小さい、太った蚊のような外見をしています。
調べてみると、クロバネキノコバエ(Wikipedia)という、近年日本各地で局所的に大量発生している不快昆虫(見た目以外に特に害はない)のようでした。
キノコバエは小さいので、網戸をくぐり抜けるだけでなく、引き違い窓のすき間(特に下部レール付近)にある細かいブラシを潜り抜けて侵入することができます。わが家は家の中が負圧にならない第一種換気なのでマシですが、家の中が負圧になる第三種換気ではサッシのすき間から家の中へ向かう気流が発生するため、特にこの虫が侵入しやすいようです。発生の多い朝方、換気扇を止めることを勧めている自治体もあるほどです。
わが家の場合、2F の北側からの侵入がほとんどで、すべての引き違い窓から入るわけではありませんが、他のタイプの窓からは見つからないので、やはり引き違い窓のすき間に問題があるように思います。
この対策は、現在、試行錯誤中です。台所用中性洗剤を水に溶かすだけのトラップは少しは取れますが、効果的というほどでもありません。サッシの下部レール周辺にピレスロイド系の虫除けをかけておくと効くという情報がありましたが、樹脂サッシに薬剤が付着するとひび割れや剥がれが発生するおそれがあるとのことで、わが家では使用できません。
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その他気づいたこと
窓種に関してその他気づいたことを書いておきます。
上げ下げ窓に特有の問題
上げ下げ窓については、可動部があるため引き違い窓と同じような問題があります。キノコバエの侵入は見つかりませんが、開閉時にすき間のホコリが落ちるため、チリが落ちてサッシが微妙に汚れます。
白のサッシでは気になるレベルなので、なるべく開けたくないと思っています。が、あまりに開閉しないでいると、それはそれで問題になるようです。
水平方向に動く引き違い窓と異なり、上下に動く上げ下げ窓では、狂うと窓を開けたときにその場に留まらず、自重で落ちるようになることがあるそうです。2 年ではその現象は起きておらず、その場合にも自分で調整はできますが、意外と面倒なところがあります。
すべり出し窓は網戸が長持ちしそう
虫の侵入を防ぐために必要だと思った網戸ですが、わが家ではほとんど窓を開けないため、特に役に立っていません。しかし網戸は汚れ、劣化して美観を損なうため、定期的なメンテナンスは必要です。
そんな網戸ですが、すべり出し窓では網戸を家の内側に設置します。内側にあるので、汚れにくいし、紫外線を浴びにくいので、長持ちしそうな感じがします。これは大きなメリットだと思っていましたが、次のブログ記事を読むと、デメリットに感じる人もいるようです。
頻繁に窓を開ける家庭ではデメリットが大きく、ほとんど窓を開けない家庭ではメリットが大きいのかもしれません。
開き戸は危険か?
すべり出し窓は開けたときに外側に窓が出っ張るため、小さい子どもがいる家庭では危険だという意見があります。わが家の設計士さんはその点を考慮して 1 階にすべり出し窓を採用しなかったのですが、わが家の場合、そこまで気にする必要はなかったのかなと思います。
なぜなら、小さい子どもが外に出るときは親も付き添うし、そのとき窓を開けたままにすることはないからです。それに、わが家のモルタル外壁は触ったら痛いほどなので、壁付近を走り回ることは本能的に避けます。普段から窓を開ける習慣がなくなったのでそう思うのかもしれませんが、子どもの安全という観点からは、1~2 才児が開閉したがる重い引き違い窓のほうが挟まれる危険が大きいように思います(転落防止のしくみも重要です)。
そんなわけで、今になって思うと、わが家では引き違い窓はほとんど要らなかったな、と思います。FIX 窓やすべり出し窓の割合を増やしたり、いっそのことトイレや風呂は窓なしでよかった、とも思います。ただ、子どもにとっては、照明が消えているときに暗くなる部屋はオバケが出そうで怖く、窓からしっかり採光できる部屋が好きなようです。
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