家庭用の全館空調システムは、近年の住宅の高断熱化を考慮していないのか、能力が過剰である傾向があります。高断熱住宅の全館暖冷房に使用されるエアコン能力は 4kW(冷房能力、14 畳用クラス)程度であることが多いようですが、全館空調の冷房能力は 10kW~ ということが一般的です。
わが家の全館空調システムも、メーカーのラインナップのなかでは最小クラスではあるものの 10kW の冷房能力があり、過剰です。
エアコンの能力が高いと、すぐに設定温度に合わせられるというメリットはありますが、いくつかのデメリットもあります。
消費電力が高くなる
エアコンの能力が高すぎると、電気代が高くなります。
消費電力あたりの冷暖房効果はエネルギー消費効率(COP)や通年エネルギー消費効率(APF)で表されますが、この効率は条件によって可変であり、低出力時の効率は悪化する傾向があるためです。
これについての詳細は、「高断熱住宅に最適なエアコン能力を検討する(全館空調は非効率?)」に書いています。
安く除湿できない
除湿には再熱除湿と弱冷房除湿などがありますが、再熱除湿は冷房と暖房を同時運転する仕組みのため、どうしても電気代が高くなります(全館空調機の説明書によると、弱冷房除湿の約 1.5 倍)。
このため、低コストに除湿を行うカギは、弱冷房除湿をうまく活用することです。エアコンに弱冷房除湿機能がない場合は、冷房の設定温度を低めにし、風を弱くすることでも同様の運転ができます。
しかし、わが家で過剰能力の全館空調を使用していて思うのは、弱冷房除湿でも効きすぎる、ということです。10kW のエアコンの冷房能力の仕様をみると、カッコ書きで(2.6 ~ 11.2 kW) とあり、最低値も高めです。
外気温が 22~25 度くらいのときに使用すると、弱冷房除湿でもすぐに設定温度に到達して運転が停止し(サーモオフ)、除湿ができずに湿度が上がってしまいます。かといって、設定温度を下げると今度は寒くなりすぎます。
弱冷房除湿による除湿は、外気温が 26 度以上(だいたいです)あるときなど、限られた条件でしか利用できません。
そのため、梅雨時や夏の夜間は自ずと再熱除湿運転を使用せざるを得なくなり、電気代が高くなってしまいます。
また、除湿モードの設定変更は手動で行う必要があります。忘れて再熱除湿のままにしていることがあり、暑くなって気づいて後悔することがよくあります。手動で設定する場合、家にいるとわからない外気温と天気予報をチェックする必要もあり、なかなか面倒です。弱冷房(除湿)だけで高湿を回避して寒くならないようにできるなら、そのほうがいいなと思います。
冷房を自動風量で連続運転していると、冷房が強風になることはありません。最高気温が 30 度程度なら、弱冷房除湿だけでも日中に家が暑くなることがありません。最高気温が 35 度くらいの猛暑の昼に初めて、ちょっと暑いかな、と気づく程度です。
(追記:後日、最高気温 34 度の日に弱冷房ドライのみで過ごしましたが室温は常に 26 ℃以下でした。)
これは明らかに能力過剰でしょう。もっと能力の低いエアコンであれば、弱冷房除湿を使用できる条件範囲が広くなり、冷房も効率的な出力で活用できることが期待できます。
連続運転のエアコンに関しては、大は小を兼ねません。もっと能力の小さい全館空調があればよいのですが、無駄に高い買い物をしてしまった感があります。
一定レベル以上の高断熱住宅には、換気が別途必要になりますが、能力に見合ったダクト式エアコン、あるいはルームエアコンが適しているのかもしれません。
▶ 夏のエアコン連続冷房時の最大消費電力を調べた結果、再熱除湿はやはり高い【追記あり】
▶ 全館空調 vs. エアコン(全館空調のメリットが得られる条件)
▶ 暖房負荷から必要なエアコン能力(kW)を計算するツール
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