冷房期の第一種換気のデメリット?【熱交換換気と再熱除湿の関係】

第一種換気の熱交換換気は仕組みを知ると一見良さげですが、やや高コストであり、暖房期の省エネ効果は実はあまり期待できなかったりします。北海道ほどの寒冷地でもあえて第三種換気が採用されているくらいなので。

詳細 熱交換型換気で暖房費はいくら節約できるのか

温暖地で結構採用する会社が増えているのは、乾燥する暖房期と、高温多湿な夏場の湿度管理の効果を期待してのことでしょう。しかし冬の乾燥対策としては、局所換気や自然換気の影響が小さくないことを考えると、総換気量をコントロールしやすい第三種換気より一概に優れているとは思えません。

詳細 低気密・中気密は何がどう問題なのか

残るメリットとしては高温多湿な夏場に室内に湿気を取り入れにくいことがありますが、これについてもやや疑問に思うようになったので、ここではその理由を書いてみたいと思います。

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第一種換気では除湿できない

わかっている人にとっては当たり前のことですが、第一種換気システムに除湿機能はありません。

全熱交換式の第一種換気システムでできるのは、換気の際に湿度を交換することです。たとえば、とある換気システムでは、換気時に 80% の湿度を交換できるそうです。この機能により、外気が高湿な夏にも室内の湿度を維持しやすいという効果があります。紛らわしいですが、湿度の差を維持しやすいだけで、換気装置が直接除湿や加湿を行うわけではないことです。

室内外で絶対湿度に差がない場合(窓を開けて室内と外気が同じになっているときなど)に熱交換換気を使用しても、湿度管理の効果はまったく期待できません。夏をカラッと過ごしたいために熱交換換気を活用するのなら、室内空気が常に外気より乾燥していなければ意味がありません。

では住宅において除湿を担っているのは何かというと、ほとんどがエアコンだけです。除湿器やデシカを除き、室内で継続的に除湿を行うことができる装置はエアコンのほかになく、室内ではむしろ湿気の発生源のほうが多いものです。

何が言いたいかというと、湿度交換機能のある第一種換気が効果を発揮できるのは、エアコンによる冷房または除湿を併用するときだけということです。

換気装置のみで夏の湿度はどう変化するか

以下の図は、下記条件でまったく除湿せずに換気のみを行ったときに、通常の換気と熱交換換気(湿度交換率 80%)とで絶対湿度がどう推移するかを Excel 計算したものです。

外気の絶対湿度:21.1 g/kg(DA)(外気温 32 ℃、相対湿度 70% など)
室内の初期の絶対湿度:9.9 g/kg(DA)(室温 25 ℃、相対湿度 50% など)
換気回数:0.5 回/hour(局所換気はないものとする。実際はあるので、湿度交換率はもっと低い)

絶対湿度だと実感が湧きにくいので、室温を 25 ℃固定として相対湿度で表すと、下図のようになります。

室温が一定で除湿しないというのは非現実的な仮定なので、通常の換気では 4 時間後には室内に結露が発生することになってしまっています。現実には、室温を維持するためにエアコンを使って除湿されるか、室温も上がるかのどちらかなので、結露は発生しません。

ここで考えたいのは、快適さを考えたときに理想の相対湿度は 60% 以下ということです。湿度の 80% を回収する熱交換換気では湿度の増加が比較的ゆっくりですが、それでも除湿しないと 2 時間後には相対湿度 60% に達しています。

第一種換気を利用しているわが家でも、40% くらいだった湿度が、空調が自動で止まっていて気付くと 70% を超えている、なんてことがよくあります。

このシミュレーションからわかるのは、どんな換気方式を採用するにしても、夏場に 60% 以下程度の相対湿度を維持するためには、エアコンで連続的に冷房または除湿運転を行う必要があるということです。

上図を見ると湿度交換のある第一種換気が優れているように感じますが、それよりも驚くべきはエアコンの除湿能力のすごさです。真夏に室内空気を絶対湿度 10g/kg(DA) にできるということは、エアコンでそれだけの除湿を行っているということだからです。

換気で湿度交換できるとエアコンによる除湿の負担はその分だけ減りますが、エアコンですべての除湿を担うことができるのであれば、わざわざ換気で湿度交換する必要はないかもしれません。

参考数値計算:エアコン冷房の除湿能力は、こちらの記事で紹介したデータによると、2.8 kW(10 畳用)のエアコンで 1 時間あたり 2.3 kg であったとのこと。上記のシミュレーションで、湿度交換のない通常換気で初期状態の湿度を維持するためには、1 時間あたり 5.6 g/kg(DA) の除湿が必要です。空気の質量を約 1.2 kg/m3 として計算すると、約 340 m3 の空間までエアコン 1 台で湿度を維持できることになります。天井高 2.4 m なら延床面積 140 m3(43 坪)の空間に相当します。

エアコンで除湿し続けるために

エアコンで連続的に除湿する際に注意が必要なのは、エアコンは設定温度に到達すると運転が止まってしまうこと(サーモオフ)です。上記シミュレーションでわかるように、止まると湿度はすぐに上がってしまいます。

高断熱住宅でこれを避けるためには、適正サイズのエアコンを選択することが大事だと思います。強力すぎるエアコンでは、室温がすぐに下がってサーモオフになってしまうからです。適正なサイズ選びは、除湿だけでなく、エネルギー効率の観点からも重要でしょう。

エアコン選びについては松尾先生の新刊『エコハウス超入門 84の法則ですぐ分かる』が一番詳しいと思います。未読ですが。

また、超高断熱な一条工務店の施主などに人気なのが、再熱除湿機能付きのエアコンです。再熱除湿とは、暖房を併用することで室温を下げずに強力に除湿する機能であり、サーモオフになりやすい高断熱住宅に適した機能に思われます。難点は、暖房を併用するため消費電力が大きいことです。

再熱除湿と熱交換換気の関係

しかしながら、高断熱住宅の住宅ブログを見ていると、わが家と比べ、再熱除湿を必要とする機会がずっと少ない住宅があることに気づき、そのことが気になっていました。つい最近まで、これはわが家の空調機が大きすぎるせいだと思っていたのですが、上記のシミュレーションでハッと気づきました。これは第三種換気と熱交換換気の違いもあるのではないか、と。

上記のシミュレーションは湿度のシミュレーションですが、熱でも同様のグラフになり、熱交換換気によって冷房負荷が軽減されます。

つまり、夏に熱交換換気を行うことによってエアコンの冷房負荷が小さくなるためにサーモオフが起こりやすくなり、その分、再熱除湿が望ましくなる時間が増えているのではないか、と。

快適さを追求するハウスメーカーなどで温暖地で第一種換気が採用されるケースは多くなっていますが、第一種換気を採用する住宅では、熱交換換気で余分に電力を消費し、さらに再熱除湿の多用によって電力消費を増やしているのではないかという疑いです。

第一種換気でも再熱除湿をほとんど使用せずに温度・湿度を快適に保つことができるなら問題ありませんが、わが家を含め、一部ではそうした問題が起こっているのではないでしょうか。もしそうだとしたら、熱交換換気でエアコンの負担を軽くするのではなく、エアコンに冷房と除湿をすべて任せてしまったほうが効率的なのではないでしょうか。

詳細なシミュレーションや調査などはできず、どちらのほうが湿度をうまく管理できるのかまではわかりませんが、なんとなく、冷房と換気を合わせた電気代は第三種換気の高断熱住宅のほうが少ない気がします。

エアコンで温度と湿度をうまくコントロールするのは難しく、ノウハウが必要なことだと思いますが、高コストなわが家の全館空調システムであっても満足のいくコントロールはできていません。

温暖地で第一種換気と第三種換気のどちらを採用するのがいいのかは、今後の高断熱住宅にとって大きな課題かもしれません。

参考
除湿能力・コストの比較【エアコン、除湿器、熱交換換気、エコカラット、デシカ】
ダイキンの「うるる加湿」の効果が期待できない理由

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