一条工務店の耐震性・断熱性・気密性・コストパフォーマンスを評価する | さとるパパの住宅論

一条工務店の耐震性・断熱性・気密性・特長について

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一条工務店は、CM宣伝を控えながらもクチコミで急成長を遂げた企業で、戸建販売戸数は2015年で1万2千戸と、いまや業界2位の位置にまで上り詰めています。はじめは免震住宅で注目を浴びたかと思うと、太陽光発電でも興味深いビジネスモデルで脚光を浴び、高断熱・高気密性能でも圧倒的に高い性能を提供しているという大変興味深いハウスメーカーです。商品ラインナップには、在来軸組工法を元にモノコック構造を取り入れた夢の家I-HEAD構法のシリーズと、ツーバイシックスに準じたアイシリーズ(i-cube、i-smart)がありますが、ここでは主にアイシリーズについて評価しています。期待を込めて、やや辛口の意見も書いています。

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評価

耐震性:★★★(大震災で損傷も少ない)

一条工務店の実大実験結果を見ると、古いデータですが、1989年に在来軸組工法の3階建てに約 294kN の水平力を加えた結果、変形量が 15.6cm とあります。これは 1000 ガル程度の揺れに相当するかと思いますが、高さを 8.4m と仮定すると変形角は約 1/54 になります。1/120 を超えると軽微な損傷を受けるため、この実験でも構造体は多少の損傷を受けているものと思われます。当時の一条工務店の家と今の夢の家の違いは確認しておらず、アイシリーズの実大実験のデータは見当たりませんでしたが、完全な面構造により近いアイシリーズの方がおそらく地震には強いのではないでしょうか。

一条工務店のツーバイフォーについては、日本へのツーバイフォーの導入に奮闘した鵜野日出男さんがブログ記事(外部リンク:こちらこちら)などで嘆いていますが、指摘の多くは一条工務店に限った話ではありません。日本のツーバイフォー住宅の過去の実績からしても、同様の構造をとるアイシリーズが大震災で大きな損傷を受けることは少ないのでないかと思っています。

それより個人的に気になるのは、自社で行うという地盤調査です。震度5強で全壊した方のサイト(外部リンク:『震災と我が家』)を見ると、一条工務店の地盤への対応に問題があったと思わざるを得ません。地盤調査は専門の第三者が客観的に行った方が良いと思います。

断熱性:★★★(標準でパッシブハウス レベル。低コストで全館冷暖房が可能)

他のハウスメーカーと比較すると一目瞭然ですが(こちらの記事を参照)、Q 値0.51は圧倒的です。北海道ならわかりますが、全国でここまでやるのかと驚かされます。窓には樹脂サッシのトリプルガラスを採用し、防犯合わせガラスにも対応しています。壁の断熱材は、一般的なグラスウールではなくウレタンフォーム(断熱性に優れますがシロアリの食害にあう可能性はあります。詳細はこちらの記事)を採用していることに加え、外断熱まで採用しています。

関連
一条工務店の Q 値計算が正規の方法ではない件
硬質ウレタンフォーム断熱材の断熱性能は 25% も劣化する?

換気には第一種換気システム(通常の第三種換気との比較はこちらの記事を参照)を採用しており、熱交換率は 90% を誇ります(他メーカーは 80% 程度が多い)。ただし、風呂や浴室、キッチンなどの換気扇から排出される分の熱は回収されないため、家全体では90%未満です(詳しくは、「全熱交換型第一種換気で熱交換されるのは一部だけ」をご覧ください)。また、ロスガード90で暖房費を68%カットできるというのは誇張だと思います(詳細はこちら)。

断熱性能は高いに越したことはありませんが、個人的には関東以西では Q 値 1.0 程度でも十分だと思っているので、もう少しレベルを落とした低価格帯の商品があってよいのかなとも思います(ウィザースホームなどがそれに近いかも?)。

参考 【ローコスト限定】高断熱・高気密に対応するハウスメーカー等の一覧

気密性:★★★(湿度の管理も可能なレベル)

実測の C 値が 0.59 という数値は大手ハウスメーカーでは最高レベルであり、スウェーデンハウスをも超えています。パッシブハウスの基準(0.2 未満)まではいかないものの、このレベルであれば熱損失の影響を受けることなく計画換気を行うことができます。除湿・加湿をより効果的に行うこともできるでしょう。経年変化で隙間が増えることを考えると、このくらいの C 値は必要です。他のハウスメーカーも見習ってほしいものです。

コストパフォーマンス:★★★(値段の割に高性能)

高断熱住宅にはコストがかかります。昔から高断熱を売りにしているスウェーデンハウスは、いつも坪単価が最高クラスです。それなのに、一条工務店のアイシリーズはスウェーデンハウスを上回る断熱性能で、坪単価が 70 万円代です。安くはありませんが、性能を考えるとコストパフォーマンスは高いと言えるのではないでしょうか。また、キッチンなどの内装についても、ただ設備メーカーに作らせるのではなく、海外で自社オリジナル品を大量生産するなどして低コスト化を実現しているようです。

主な特長

高性能な住宅

すでに述べたように、一条工務店の特長は、高い耐震性能、断熱・気密性能を高いコストパフォーマンスで提供していることです。上記の指標ですべて三ツ星の評価が付いたのは、一条工務店だけです。近年の急成長も納得です。

参考 大手ハウスメーカーの販売戸数(棟数)ランキング【2017年度】

全館床暖房

ハウスメーカーの中には全館空調を提供しているところもありますが、全館床暖房というのは一条工務店だけです。足元が暖かいというのは気持ちの良いものです。しかしながら欠点もあります。床暖房コストが月1万5千~2万(一条工務店による試算、青森県で44.5坪の場合)というのは、この断熱性能の割には安くありません。私なら、エアコンによる冷暖房を選びます。詳細は「エアコン vs. 床暖房」で検討しているのでそちらをご覧ください。

追記:コメントで度々ご指摘いただいているとおり、月1万5千~2万というのは関東以西の一般的な住宅にとって現実的な費用ではありません。リンク先のページが変更されてしまったため確認できませんが、温暖地ではこの7割程度と書かれていた記憶があります。温暖地の暖房費としては高くないと思いますが、この断熱性能の割には、エアコンと比べるとそれほど安くないと思っています。

一条工務店の全館床暖房については以下の記事を追加しております。

【一条工務店】全館床暖房のメリット・デメリット。満足度が高い本当の理由

ここが不満

これまでの説明でもちょこちょこ不満を述べていますが、私が一番不安に思うのは、企業としての実績です。先進的な取り組みは高く評価しますが、その反面、販売戸数が増えてからの長期的な実績がまだないので、一条工務店が採用して他の大手が採用しない仕様(壁の断熱材、全館床暖房など)が、長期的に見て吉と出るか凶と出るかがわからず少し不安に感じます。また、急成長している企業のため、営業担当者がコロコロ変わるといった不満の声も耳にします。施工に問題があるケースも度々指摘されています。すごい魅力的なのにやや信用できない、ベンチャー企業に対する期待と不安のようなものでしょうか。保守的ですが、住宅にはより安定感を求めたい気持ちがあるのです。しかしながら、大企業となった現在では、さまざまな不満の声にも迅速に対応しているようにも見えます。今後はますます改善され、洗練されていくことが期待されます。ちなみに、我が家で一条工務店を候補にしなかったのは、三井ホームほどの高いデザイン力を期待できなかったからです(家族の要望)。一条工務店の出す商品が好みに合う方や性能を重視する方には、間違いなく有力な選択肢になることでしょう。

コメント

  1. 伊豆川達也 より:

    さとるパパさん、こんにちは。
    さとるパパさんのブログを読んでいて鵜野日出男氏の死を知りました。昨年の確かお正月までは5で割り切れる日に必ずブログ記事を書いていらして、毎回楽しみにしていましたが、お歳を理由にブログを止めると言ってらしたと記憶しています。先月お亡くなりになっていたのですね。悲しいです。
    直接お会いしたり、お話を聞いたことはないのですが、2×4工法を信じている身としては鵜野さんのオープン化を成し遂げた実績やその後の2×4工法に対する造詣に深く感銘を受けました。
    さとるパパさんのリンク集の記事の中で見つけたのですが、コメントを置けなかったので、こちらに書かせて戴きました。

    • さとるパパ より:

      コメント欄を閉じてしまっていたようでお手数をおかけして申し訳ございません。
      鵜野氏のブログは私も過去ログに遡って読み、更新を毎回楽しみにしておりました。ドライウォールなど本場アメリカのツーバイフォーの良さを活かし切れていない日本のツーバイフォーの現状を嘆いておられましたが、導入から数十年経ってサンキハウスさん(静岡)のようにツーバイ工法を評価する工務店などが増えているのは希望だと思います。晩年まで住宅業界・消費者に助言を続けていた鵜野氏の熱意には本当に感服します。

  2. 匿名 より:

    一条工務店アイスマートに住んでますが、全館床暖房で、床暖房だけで一万円以上いくことなんてありませんよ?
    太陽光抜かしても…

    エアコンより、遥かに快適で、乾いた風もなく、ヒートショックの心配も少なく、24時間どの部屋も暖かいので、朝もスパッと起きれて快適です
    寝てて床が暑すぎるほど温度を上げてる人もいないと思います
    床を触ってひやっとしない程度、それでも室温は常に快適な23℃前後を保ってます

    この辺りはすんでる人じゃないと、なかなか体感できないと思いますが、一条にするなら、絶対床暖房にしたほうがいい!、と個人的には思います

    • さとるパパ より:

      貴重なコメントをいただき、ありがとうございます。記事中の床暖房代は、一条工務店のホームページに記載されている金額です。

      http://www.ichijo.co.jp/philosophy/yukadan/lowcost/index.html

      詳細は「エアコン vs. 床暖房」(更新しました)で述べていますが、公式ページのデータを基に計算すると、温暖地で、よほど大きくない家であれば、1万円未満になります。

      しかし、エアコンであれば、もっと安くなるかもしれません。初期費用は確実に安くなります。また、エアコンでも同じメリットを享受できると思います。床暖房でも、換気して温度を上げている以上、絶対湿度の関係で乾燥はします(ロスガードで緩和はされます)。エアコンの風だけは避けられませんが、弱運転で済むので、大して気にならないかと思います。一条でエアコンのみの方の意見も伺いたいものです。

  3. ちょこ より:

    誤解の無いよう訂正をお願いいたします。
    一条工務店の床暖房コストが月1万5千~2万というのはまったくの間違いです。
    正しくは、床暖房を含めた電気代が月1万5千〜2万です。
    一条工務店はほぼ全てのお客様にオール電化を推奨しており、全体の9割がオール電化です。
    つまり、床暖房、IH、エコキュート、照明、24時間喚起(ロスガード)を全て使用してこの電気代です。オール電化のため、ガス代や灯油代はありません。
    通常、冬は電気代以外にガス代や灯油代がかかりますが、一条工務店は高い断熱性により圧倒的に床暖房のコストが低く、結果全体の光熱費を大幅に下げております。

    元社員より
    昔、お客様から実際に聞いたお話からです。

    • さとるパパ より:

      コメントありがとうございます。
      間違いとご指摘の「床暖房コストが月1万5千~2万」というのはかつて一条工務店がWeb上で公表していた床暖房のみの費用であり、カッコ書きの条件下での数値なので間違いではありません。寒冷地ではヒートポンプの効率が落ちることなどもあり、温暖地の一般的な家庭ではもっと安くなることは上のコメント欄にも書いたとおりです。
      もっとも、現在はリンク先のページが変更されてしまい確認できないため、誤解を招かないよう追記させていただきます。情報ありがとうございました。

  4. ヒトマ より:

    一条工務店のデメリットは、特にi-smartなどのシリーズで顕著だそうですが、キッチンやお風呂などの設備を全て数種類の自社製品から選ばなくてはいけないとか、間取りの制約なども細かく取り決めがあったりして“一条ルール”と揶揄されている点が挙げられますよね。もともとが耐力壁で耐震性を確保する為に間取りの自由度にやや劣る2×6ですから、セミオーダー住宅とまでは言いませんが、少なくとも自由設計の注文住宅とは言えないのかなとは思います。それによって実現出来るコストパフォーマンスだと思います。大手HMはどこもある程度は規格化されていると思いますので、真の完全自由設計とは言えないかもしれませんが。

    自分は気密断熱に劣る鉄骨ユニットで建てましたが、ユニットさえ置けてしまえば、極端な話、間仕切り壁が1枚も無くても耐震性を確保出来ますので、間取りを考えるのはとても楽しかったです。実際に自分が間取り図を書きましたが、素人が考えた間取りがほぼそのまま採用されたので、間取りに関しては不満はゼロでした。標準キッチンの選択肢などは他の大手HMと変わりないかなと思いますが、それでも細かいところまで言えば何百種類の組み合わせがあり、ショールームに何度も足を運び、妻はとても楽しんで満足していました。そういう注文住宅を作る本来の楽しみが一条工務店は少ないのかなと思ってしまいますね。

    • さとるパパ より:

      コメントありがとうございます。おっしゃるとおりに思います。
      間取り・設計の自由度は鉄骨やビッグフレーム構法などが高く、耐力壁が必要な壁工法の住宅ほど制限が多くなりますね。
      たいていのハウスメーカーにはさらに自由度の低い準規格住宅も用意されており、安価な価格が設定されています。
      iシリーズと同じ2×6工法でも、三井ホームは比較的設計の自由度が高いほうであり、わが家も間取りに不満なくこだわることができたので、ハウスメーカーによっても差があるところと思います。
      性能やコスパももちろん大切ですが、それだけではないので、さまざまな観点から満足いく住宅を建てられるのが理想ですね。

      • ヒトマ より:

        2×6工法は良いですよね。自分も木造にするなら間違いなく2×6を選択していたと思います。自分はさとるパパの住宅論を参考に、HMの標準仕様でHEAT20のG1レベルを目指せるよう間取りには注意しました。本来ならG2レベルを目指したかったですが、鉄骨HMの標準仕様でG2レベルはかなり難しいですね。結果6地域でUA値0.54、Q値1.86と鉄骨の標準仕様と考えればまあまあかなと思える性能になりZEH補助金もいただきました。G1なので全館連続空調は諦め、個別間欠空調でまあ寒い部屋や時間帯もありますが、概ね満足しています。

        いつも楽しく読ませていただいています。これからも頑張ってください。

        • さとるパパ より:

          鉄骨の事例をほとんど知りませんでしたが、標準仕様でそこまでできるのですね。ありがとうございます!

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