多くのハウスメーカーは断熱性能を示すUA値を公表していますが、この値はほとんどの場合美化されています。
私がこのことに気づいたのは、こんなことがあったからです。
カタログ値が美化されていることに気づいたきっかけ
三井ホームは2016年3月、ZEH対応のグリーンズゼロという商品を発表しました。
詳細を見ると、標準仕様より断熱性の高い真空トリプル樹脂サッシと高断熱玄関ドアを採用したとのこと。しかしその断熱性能の数値 UA=0.46 を見たときは驚きました。
なんと、三井ホームのホームページやカタログに記載されている標準仕様の UA値 0.43 よりも断熱性が低いのです(UA値は小さいほど高断熱)。
推測ですが、標準仕様の UA値は数値が有利になる住宅モデルで試算していて、ZEH対応として発表したグリーンズゼロではZEH基準の別の住宅モデルで計算を行う必要があったのでしょう。それで、標準より悪い数値でも発表せざるを得なかったのだと思われます。
カタログ値はなぜ良い値なのか
こんな矛盾した発表をよくするなと思いましたが、実情はすぐにわかりました。
標準仕様とされているカタログの断熱性能が、実は現実離れした数値なのです。
同じ断熱仕様でも、窓の大きさや建物の形状を計算に有利な条件とすることにより、UA値を故意に良く見せることが可能なのです。
関連 ハウスメーカーのUA値から逆算して試算条件の住宅モデルを考えてみた
わが家もご多分に漏れず…
わが家も三井ホームで標準より高断熱な仕様での設計を依頼しましたが、提案されたプランのUA値はというと、標準仕様の参考値より劣るものでした。
これは三井ホームに限った話ではなく、「当社モデルプランでの試算」としているすべてのカタログ値に当てはまります。UA値やQ値を見るときは、モデル試算値なのか、実際に建てられた家の平均値なのかに注意する必要があります。後者を公表している会社はほとんどありませんが。。
カタログ値と実際の住宅の断熱性能差はどの程度?
それでは、実際の家はハウスメーカーの公表値とどの程度の差があるのでしょうか。
スウェーデンハウスでは、モデルプランの Q 値は 1.14 ですが、2012年度の実績の全国平均として 1.42 という数値も公表しています。
また、三井ホームの過去のモデルプランの Q 値は 1.98 でしたが、基準プランで計算すると 2.49 になるという数値も同時に公開されていたようです。
どちらも約 25% 増となっています。実際に同じ仕様で建てるとなると、カタログの値より 2~3 割落ちると思った方がよいのでしょう(形状や窓の量しだいですが)。
気になるハウスメーカーが試算値しか公表していない場合は、実際に建てられた家の数値をいくつか確認してみるとよいかもしれません。
なお、UA値は大事な指標ではありますが、これだけで住宅の善し悪しが決まるわけではありません。次の記事もご覧ください。
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