「このハウスメーカーはお勧めできるか?」という類の質問を頂戴することがたまにありますが、こうした質問に対して期待されている回答をすることはできません。そのハウスメーカーに対してまったく知識がないわけではありませんが、部分的なことしか知らず、その会社でその人にとって本当に満足いく家づくりができるかどうかは確信できないからです。
ハウスメーカーの仕様を調べると、ほとんどのハウスメーカーに不安や不満が出てくるし(サイドバーからサイト内検索すればたぶん書いています)、デザインや考え方が好みに合うか、施工に問題はないか、営業担当者に問題はないかなど、懸念を挙げればキリがありません。何に価値を置くかによっても、相性のよい住宅会社は変わってきます。勧めた住宅会社でトラブルが起きてしまっても、あとあと気まずくなるだけです。
そんなわけでいつも返答に困るのですが、このサイトで述べている住宅性能に関することに限定し、個人的な意見として責任を取らなくてよいのであれば、かなり絞ることはできます。参考までに、以下の 2 つのテーマに絞ってお勧めの住宅会社について考えてみました。
あまり問題がなさそうな唯一のハウスメーカー
ある程度有名なハウスメーカーに限定してお勧めはどこかと考えた場合にまず思いつくのは、スウェーデンハウスです。ただし、価格は無視しています。
大手ハウスメーカー全社の断熱性能(UA値)比較ランキング【2019】では販売棟数が多くないために除外しましたが、トリプルガラスを標準とし、断熱・気密性能は優秀です。
他のハウスメーカーでも断熱性能や気密性能はオプションで高めることは可能ですが、スウェーデンハウスはこれを長年にわたって標準仕様としていることに好感が持てます。高気密高断熱住宅に合った間取り、暖冷房、暮らし方を熟知していることが期待できるからです。日射管理に問題がないかだけは少し心配ですが、現在は改善されているのではないかと勝手に期待しています。
工法は「木質パネル工法」としており、日本的な 2×6 工法とは少し異なるものの、私の好きな枠組壁工法の一種であり、随所に耐震性能へのこだわりも感じられます。
悪い評判もあまり聞かず、オリコン満足度ランキングで長年 1 位に選ばれているのも納得です。
前記ランキング1位の一条工務店はどうかというと、性能数値的には優れており、良いと思う点もたくさんありますが、心配なのは施工です。問題ないかもしれませんが、トラブルが発生したらと思うと、無条件にお勧めすることもできません。また、暖房方式や断熱材、設備もどちらかというと好みではありません。
ランキング2位のアイフルホームに関しては、セシボ極の性能は優れているものの中心商品ではないため、暖冷房や日射制御などに関する理解が十分かなどはやや心配なところです。フランチャイズ方式のため店舗による差もありそうで、よく知らないので全面的にお勧めすることはできません。
ランキング3位以下は、まず基本性能が足りてません。わが家の三井ホームも同様です。ハウスメーカーで標準仕様を変えるのは大変なので、人にお勧めはできないし、自分としても懲り懲りです。
参考
・標準仕様で高断熱・高気密に対応すべき理由
・三井ホームでもう一度建てるなら採用したい仕様
中堅どころではセルコホームやウィザースホームも気になる存在ですが、施工はどうかなど、よくわからない点もあります。
そんなわけで、たぶん問題ないのではないかと思えるハウスメーカーは、スウェーデンハウス 1 社だけです。
それでも、価格を含めて総合的に考えると、お勧めしたいというほど好きでもありません。
私がもう一度家を建てるなら頼みたい住宅会社
上記はハウスメーカーに限定しましたが、ハウスメーカーは一般的に高価格になることが避けられません。私がもしもう一度家を建てるなら、地元の優良工務店に頼みたいと思っています。
その場合はどこで建てたいかと考えて、改めて調べてみたところ、一つだけお願いしたいと思える工務店を見つけることができました。ここで具体的な名前は出しませんが、そこに絞った過程と理由を書きたいと思います。
まず、建てるなら予算的に木造というのは確定であり、ツーバイシックス工法がやっぱり好みです。
木造軸組工法(在来工法)もイヤではありませんが、できれば大地震時に軽微な損傷も回避したく、そのコスパを考えるとツーバイシックス工法がベストだと思うからです。
しかし残念なことに、2×6工法で高断熱だけでなく高気密にもこだわっている住宅会社は多くありません。おそらく近所にはないだろうと思い、最初は軸組工法の会社も含めて探すことにしました。
木造軸組工法であれば、心配なのは気流止めです。
UA 値や C 値を公表している会社でも気流止めを適切に処理していることを明示している工務店は多くなく、これを確認するのは簡単ではありません。そのため、木造軸組工法であれば、気流止めがしっかり施工されることが期待される、新住協の会員会社に限定して探すことにしました。
高断熱住宅を施工している工務店の多くは、「新住協」か「パッシブハウス・ジャパン」に所属しています。高断熱住宅を建てられるフランチャイズ・グループもいくつかありますが、多少割高になりそうなのと、気流止めの問題がわかりません。そこで、ひとまずは除外し、2 つの団体に所属する近所の会社をリストアップしてみました。
施工が可能そうな地域にある工務店は 10 社前後見つかったので、まずはざっとホームページをチェックしてみました。
今の時代にホームページがないところは私的に論外ですし、最近の活動の形跡が見られないところは自然と候補から外れます。
また、以下のような住宅会社は私の個人的な好みとは合わなそうなので除外しました。
- 無垢や無添加にこだわり高価格になりそうな工務店
- ZEH 的な設備重視の住宅ばかり建てている工務店
- エアコンを使わないことを善とする工務店
- 社長が信用できそうにない工務店
こんな基準で選定していくとどんどん絞られ、最終的に一つだけ、とても魅力的に思える工務店が見つかりました。
枠組壁工法を採用しつつ、パッシブハウス・ジャパンの会員なので、高気密高断熱だけでなく日射管理にも当然のように対応しています。大手ハウスメーカーの下請けとしての施工経験が豊富で、ブログなどからは近年も熱心に改善に努めている様子が伝わってきます。参考価格も公表されていて、大手ハウスメーカーよりは安価です。
実際にそこで建てたわけではないので人に勧めることまではできませんが、また建てるならそんな会社に頼みたい、と思った次第です。
【追記】百点満点の住宅会社などないからこそ
なお、もし上記の方法で絞り込むことができなかったとしたら、絞り込みの範囲を広げ、なんらかの条件を妥協します。上記団体のほかを当たり、在来工法であれば気流止めや耐震性能への考え方を問い合わせたりすることでしょう。そうすれば、どこかしらある程度満足できる住宅を建ててくれる会社が見つかるのではないかと思っています。
住宅会社が自分にとって良いかどうかを見る観点は本当にさまざまです。住宅性能のほかにも、価格帯がどの程度か、歴史や信用があるか、施工が信頼できるか、アフター・保証体制がしっかりしているか、料金が適正か、真面目で誠実か、理想の住宅象が合うか、デザインの好みが合うか、家事動線を考えた間取りが提案できるかなど、細かく考えていくとキリがありません。
これらの希望をすべて満足してくれる住宅会社などあるわけもないので、不足しているところは何らかの対策を講じることになります。
たとえば耐震性能に不安があるのなら、次のような対策が考えられます。
- 耐震等級3を約束してもらう
- 耐力壁の量とバランスを自分でチェックする
- 屋根材・外壁材に軽い材料を選択する
- 吹き抜けを作らない
- 構造を専門とする第三者にチェックしてもらう
施工が不安なら、ホームインスペクションを入れて施工の各段階を第三者にチェックしてもらうこともできます。
気密性能が不安なら、気密測定と同時に隙間の対策を指導してくれる業者を利用する手もあります。
参考 温暖地で気密性能(C値)を改善する方法
自信があるなら、自分で勉強して自己責任で対策を考えてできることもあるかもしれません。
第三者を利用しても理想の住宅に近づけるためのハードルが高すぎるなら、価格帯を上げれば理想に近い住宅会社があるのであれば、それを選んだほうが悩まなくてラク、ということもあるかもしれません。
この記事を通じて伝えたかったことは、そうした判断は結局は自分(と家族)で決めるしかない、ということです。ただし、自分の理想の住宅はどのような住宅かを考えたり、何らかの判断を行ったりするためには、きちんとした知識も必要です。知識がないと、何がどの程度問題でどこまで対策が必要なのかがわかりません。また、それを正しく理解するためには、自然科学や経済、世の中のしくみなど、さまざまな教養や人生経験も必要になってくるかもしれません。
簡単にわからないことは、詳しそうな人の意見を聞くことになりますが、その情報が信頼できるのかを見分ける力も必要です。もちろん、当サイトに書いてあることも安直に信じるべきではありません。私が重視しているところと、あなたが大事だと思っていることは違うので、結論が同じになるとも限りませんし、私にも得意不得意があります。
当サイトは、営業色の濃い住宅会社発信の情報ではなく、施主側発信の情報を提供することにより、さまざまな問題に気づいていただいたり、こんな見方もあるということを紹介することを意図しています。疑い深い性格なため、この会社はすべて完璧だなどと思うことがないので、問題かもしれないと思う点を指摘するばかりです。読んで不快に思われることも多いと思いますし、内容に納得していただけるかどうかはわかりませんが、そういう見方もあるということを参考程度にしていただければ幸いです。
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