ロスガード90で暖房費を68%カットできる?

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一条工務店の熱交換換気システム「ロスガード90」の Web ページを見ると、熱交換率 90% のロスガードを採用することで、熱交換なしの換気と比較して暖房費を約 68% カットできるとの試算が示されています。

この詳しい計算は専用のソフトが使用されているため不明ですが、暖房費用が熱損失係数(Q 値)に比例するものと仮定してざっと計算したところ、これは過大評価ではないかと思ったので、その内容を紹介します。計算の詳細は最後にまとめています。

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ロスガードの有無による Q 値の違い

i スマート II(ロスガードあり)の Q 値は 0.51(W/㎡・K)ですが、熱交換なしの換気の場合の Q 値は公表されていないため、推計してみます。

ちなみに、熱交換なしの換気分の熱損失は、天井高 2.4m の場合、0.42(W/㎡・K)となります(※1)。

ロスガードありの Q 値 0.51(W/㎡・K)のうち、換気分の熱損失を 0.17(W/㎡・K)とすると(※2)、換気を除く熱損失の合計は 0.51 – 0.17 = 0.34(W/㎡・K)ということになります。これに、熱交換なしの場合の換気分の熱損失 (0.42)を加えると、0.76(W/㎡・K)になります。これが、推計したロスガードなしの場合の i スマート II の Q 値です。

熱交換なしの Q 値 0.76 と、ロスガードありの Q 値 0.51 を比べると、その差はおよそ、マイナス 33% です。おかしなことに、公表されている 68 % とはかなりの差があります。

別の計算として、ロスガードありの場合の換気分の熱損失を 10% の 0.042 と過小評価して計算してしまっていると仮定しても、約 43% 減です。いずれにしても、公表されている試算値の約 68% 減とは、だいぶ差があります。

推論

実際には、換気される空気のすべてが熱交換されるわけではなく、浴室、トイレ、キッチンで行われる換気や漏気は熱交換されません。これらを考慮すると、i スマート II であっても、換気による熱損失量は実際は結構あるのではないでしょうか。換気込みで 0.51 という Q 値の値には少し疑問を感じます(一条工務店の家が高断熱であるという事実は変わりませんが)。

→追加記事:一条工務店の Q 値計算が正規の方法ではない件

換気にかかる電気代も安くはない

さらに注意が必要なのは、暖房費を本当に 68 % カットできるとしても、換気システムの電気代などは別だということです。ロスガードの消費電力は 90W というデータ(古い情報です。追記参照)を見つけたので、これを元に計算すると、消費電力は年間 788 kWh にもなります(※3)。1 kWh あたり 25 円とすると、年間約 2 万円です。

一条工務店の試算によると、ひと冬の暖房費は約 18,000 円とのことですが、暖房費とは別に、換気の電気代(年間)が同程度かかる可能性があります。これに加え、熱交換エレメントの交換などの維持費用も必要になります。

追記:こちらの記事によるとロスガードは 2 代目となり、ダイキン製からマックス製に変わったそうです。消費電力は 68W とのことなので、同じ計算で年間 596 kWh、約 1 万 5 千円となります。 消費電力は風量設定により変わります。

コスト以外にはメリットがある

ロスガードを含む全熱交換型換気システムは、消費電力を考慮すると、特に寒さの厳しい地域を除き、省エネ効果は大きくないかもしれません。しかしながら、全熱交換型換気システムには、室内の湿度を維持する効果があります。冬場は乾燥を軽減し、夏場は除湿を助けます。夏場は特に、外の湿気をそのまま取り込むと湿度が高くなり、温度の割に快適になりません。この機能の真価は、そこにあるのではないかと思っています。

ただし、この湿度管理のメリットを受けるためには局所換気の割合を抑える必要があり、何も対策を講じない場合はメリットを享受できません。詳しくは除湿能力・コストの比較の記事で全熱交換型換気の除湿効果を検討しているので、そちらをご覧ください。

計算の詳細

※1:換気の熱損失量は、0.35 x (換気回数) x (気積) で計算されます。換気回数は通常、0.5 回/時です。気積は (天井高) x (延床面積) ですが、Q 値の計算では最終的に (延床面積) で割ることになるため、Q 値のうちの換気分の計算は、0.35 x 0.5(換気回数) x 2.4(天井高) = 0.42 となります。

※2:換気の熱損失量は、0.35 x (換気回数) x (気積) で計算されます。熱交換換気を採用する場合、熱交換率 90% だと熱損失量がこの 10% になると思われがちですが、実際はそうではありません。詳細は、「Q値に関する断熱、換気の基本① 見かけの換気回数」というサイトに解説されています。これを元に「見かけの換気回数」を0.2 回/時と仮定すると、0.35 x 0.2 x 2.4 ≒ 0.17 となります。

※3:夏季は外気温と室温に応じて全熱交換換気ではなく普通換気を行うモードに切り替わるそうなので、実際の消費電力はもっと少ないかもしれません。
【2019追記】この機能は最新の公式ページに記載がないため、なくなった可能性があります。ただし、湿度管理の効果を考えると、夏季は温度が低いときも高湿なので、全熱交換換気を行ってくれたほうがよい気がします。

参考
全熱交換型換気で熱交換されるのは一部だけという問題と対策
第一種換気と第三種換気(記事紹介)
エアコン vs. 床暖房
一条工務店の耐震性・断熱性・気密性・特長について

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