よく採用される換気システムには、第一種換気システムと第三種換気システムがあります。第一種換気とは、外気を取り込む給気と、汚れた室内の空気を排出する排気のそれぞれに換気扇を使用するシステムです。一方、第三種換気とは、排気にのみ換気扇を使用し、給気は各部屋に設けられた給気口から自然に取り込まれるようにするシステムです。換気方式はハウスメーカーによって決まっていて、選べることは少ないと思いますが、どちらも一長一短あるので特徴を把握しておくことをお勧めします。
第一種換気システムの特徴
給気と排気を集中的に管理するため、通常、各部屋にダクトを配管します(空間ごとに複数設置して管理するダクトレスのタイプもあります)。給気と排気を同時に機械で行うため、家の内外で圧力差が発生しません。圧力差がないと隙間風の影響を受けにくいので、おそらく C 値 2.0 以下程度の気密性能でまんべんなく換気を行うことができます(追記:圧力差がないために風の影響を受けやすく、C 値 0.3 以下が望ましいという説もあります)。また、集中管理できるので、給気の際にフィルターを通すことにより空気清浄機の役割を持たすこともできます。
第一種換気システムには通常、熱交換器も設置します。これにより、冬季など内外の気温差が大きいときに、換気で失う熱量を少なくすることができます。また、後述する全熱交換型の換気では、室内の湿度を保持するため、冬に外が乾燥しているときや、梅雨や夏に外が蒸し蒸ししているときに空調を利用して快適な湿度を維持しやすくなります。
これらのメリットは素晴らしいようですが、このメリットを受けるには、高気密であり、換気計画が適切であることが前提です。C 値 1.0 以下を保証できないような多くの住宅では、計画外の換気や漏気が多いがために、省エネや湿度管理のメリットを活かせていないケースが多々あるのではと思います。
第一種換気を採用できるハウスメーカー
一見すばらしいこのシステムは見栄えがよいため、セキスイハイムの快適エアリーや一条工務店のロスガード90、スウェーデンハウス、ヒノキヤのZ空調、三井ホームのスマートブリーズ、アイフルホームなどで採用されていて、積水ハウス・シャーウッドでも選択できます。
三井ホームのスマートブリーズなどの全館空調は、この換気システムに冷暖房装置を組み込むことで冷暖房も併せて一元管理するシステムです。
第一種換気の欠点
第一種換気の欠点は、コストとメンテナンスです。ダクトや熱交換器などで設備の初期費用や更新費用が高くなるだけでなく、換気扇を多数稼働させるのでランニングコストもかかります。換気の電気代だけで月千円以上かかるケースが多いので、消費電力には注意が必要です。熱交換換気によって省エネになっても、その分の電力でエアコンを使ったほうが効率的なケースもあるほどです。
また、フィルターを設置するということは、フィルターを掃除する必要があるということでもあります(毎月)。掃除しないで放っておくと、換気量が落ちたり、ダクトが汚れることにもなります。ダクトにカビが生えるのではないかと心配になってメーカーに確認したところ、「ダクトはメンテナンス不要」と説明されましたが、長期的には清掃したほうがよい気もします。長期間使用していると換気口の周辺が黒ずんできたりはすることもあるようです(中性洗剤で落ちるそうです)。
全熱式と顕熱式
熱交換型換気については、全熱式と顕熱式があります。
全熱式は湿気も回収するため熱交換率が高いのですが、同時に臭いなども回収してしまいます。このため、トイレや浴室からの排気は回収せず、これらの部屋には別途換気扇を設けることになります(電気代も増えます)。つまり、熱交換率90%のシステムといっても、実際はトイレや浴室から排出される熱は回収されていないのです。わが家のケースで試算したところ、熱交換される換気量は全換気量の半分以下しかありませんでした(詳細はこちら)。
日本では全熱交換式が多く採用されていますが、三井ホームや東急ホームズのミルクリークでは顕熱交換式を選択することもできます。顕熱式では湿気を回収しないため、トイレや浴室も同じ換気システムに組み込むことができます。ただし、外気の湿気(乾燥)もそのまま取り込むため、第三種と同様、夏の除湿、冬の加湿が効きにくくなるという欠点もあります。
第三種換気システムの特徴
排気のみに換気扇を使用するため、シンプルで低コストです。ただし、排気によって家の中を負圧にするため、気密性能が低いと隙間風も入りやすくなります。こちらの記事で紹介したように、C値 1.0 の高気密であっても、家に入る空気の半分は給気口ではなく隙間から入ってしまいます。気密性を高めたうえで空気の流れを適切に設計しないと、家全体を計画的にうまく換気することができません。
換気が効かない空間が発生すると、湿気がたまり、ダニやカビの発生源となったり、結露を引き起こすおそれがあります(窓の断熱性能や暖房方式も影響します)。このため、排気専門のダクトを設けるダクト式第三種換気システムという方法もあります。排気専門なのでダクトが汚れても問題なく、ダクトがない場合よりも効率的に各部屋から換気することができます。これだと C 値 1.5 以下で換気を効かすことができるようです。
寒冷地でも採用されている
第三種は第一種換気と違って熱交換ができないため寒そうに思えますが、北欧や北海道などの寒冷地でも実は第三種換気が多く採用されています。北海道でも寒さの厳しい地域では第三種換気だと寒いようですが、それ以外の地域でも、給気口から入る空気をすぐに暖めるように配置などを工夫すると問題にならないようです。
換気量は多ければ多いほど熱損失が増えるため、必要以上の換気はもったいないものです。寒い時期に換気量を控えめにすることで熱損失を減らせるケースもあり、最近では、空気の汚染度に応じて換気量を調整する換気扇もあるようです。
ふつうに考えると寒い地域ほど熱交換型第一種換気が向いていそうなものですが、第一種換気を採用しているスウェーデンハウスではなぜか、北海道などの寒冷地でのみ、ダクト式第三種換気システムを採用しています。冷気が不快にならないよう、換気口の下にヒーターを配置するなどの仕様になっているのかもしれませんが。
寒冷地で熱交換型の必要がないのであれば、温暖地でも(ダクト式)第三種換気で良さそうなものです。が、第一種全熱式と比べると、第三種では夏に高温多湿な外気をそのまま取り入れることになってしまいます。温暖地で熱交換型を採用しているのは、省エネ効果などよりも、快適な湿度を維持しやすくするためなのでしょう。エアコンを使いこなせば第三種でも湿度をコントロールできないことはないので、その必要性は微妙なところです。
そもそも換気が機能しているか
以上、温暖地では第一種と第三種のどちらが良いかは悩ましい問題です。コストだけを考えれば第三種で十分ですが、第一種には快適性のメリットもあります。これらは気密性能などの他の条件もかかわってくるので複雑です。
いずれにしても、一番問題なのは適切な換気が行われないことです。建築基準法では換気設備の換気量の規定はあっても、各部屋で実際に換気が行われているかまではチェックされません。
気密性能の低い住宅では適切な換気が行われません。期待できる気密性能のレベルから最適な換気方式を考えてみるのも良いかもしれません。
換気方式に関する多数の記事は次のページでまとめて紹介しています。
関連 「換気の悪い密閉空間」を避けるにはどの程度の換気量が必要か
また、住宅の換気について詳しく知りたい方には、以下の本がお勧めです。
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