ハウスメーカーのUA値から逆算して試算条件の住宅モデルを考えてみた

多くのハウスメーカーは標準仕様の断熱性能として UA 値を公開していますが、これには大抵、ただし書きで「※当社試算プランによる。お客様のご希望プランによって数値は変わります」などと書かれています。UA 値が設計によって変わるのは当然ですが、それにしても美化されているのではないかと思われる数値が目に付きます。

たとえば、とある大手ハウスメーカーの標準仕様は UA = 0.43 です(窓はアルミ樹脂複合サッシ)。しかし、このハウスメーカーの別の資料には、窓を真空トリプル樹脂サッシにした、より高断熱な仕様で UA = 0.46との記載も見つかります。UA 値は小さいほど高断熱なので、より高断熱な仕様なのに UA 値が悪化しているというのはおかしな話です。どちらかの試算に無理があることが想像できます。

そこで、当サイトの「Q値とUA値をざっくり計算するツール Ver.2.0」を使って、公的に利用されている標準的なモデル住宅(36坪)における UA 値を概算してみました。あくまでざっくりとした数値を出すツールですが、そのハウスメーカーの断熱仕様から数値を入力してみると、以下のような結果となりました。

標準仕様(アルミ樹脂複合サッシ Uw=2.33 と仮定):UA = 0.56
高断熱仕様(真空トリプル樹脂サッシ Uw=1.09 と仮定):UA = 0.43

この結果を見る限り、後者の数値はそれなりに近いので、ハウスメーカーが公表している標準仕様の UA 値のほうが怪しいことが推測されます。

そこで気になるのが、この標準 UA 値がどんな住宅モデルを使って算出されているのか、ということです。ハウスメーカーがこの UA 値の試算にあたって公表しているのは床面積だけで、窓面積や形状などはわかりません。UA 値が良く(小さく)算出されるよう、思いっきり有利な条件にしている可能性があります。

そんなわけで、どうしたら 0.43 という数値が出せるのかを、前記のツールを使って検討してみました。

まず、住宅形状は外皮面積が小さいほど有利になるだろうと思い、空から見て正方形、総二階建てのモデルを考えてみました。開口部の割合は標準程度です。

しかし、それでも UA 値は 0.56 からほとんど改善されません。総二階建てにすることで Q 値は数パーセント改善するのに、UA 値は改善されません。これは、総二階建てにしたことにより、このハウスメーカーの外皮の中では熱貫流率が小さい屋根の面積割合も減ったためでしょう。

そのほかに工夫できるのは、窓面積を減らすことくらいです。試算を繰り返し、UA = 0.43 となる開口部面積を探ってみました。

その結果出た開口部比率(開口部面積÷外皮面積)は、0.03 です(標準は 0.10 程度)。 結構広い住宅なのに、各方面に均等に窓を配置すると各面 3㎡ くらいにしかできません。

これがどんな住宅かというと、実物をみたほうがわかりやすいので、マインクラフト(1 ブロックが 1m の世界)で大雑把につくってみました。

とある大手ハウスメーカーが UA 値の試算に使用していると推測される住宅モデルは、こんな感じです!

窓が少なっっっっっっっっっっっっっっっっっっ!

住宅展示場で見かけるハウスメーカーの住宅とはまったく異なります。窓の割合は集合住宅よりも少ないでしょう。南面の日射熱取得を求めず、温暖地においてここまで徹底して高断熱化にこだわる施主は、果たしているのでしょうか。見た目はともかく、照明をたくさんつければ住み心地は意外と悪くないかもしれませんが。

これはあくまで概算計算での推定であり、採用する U 値によって多少変わることでしょう。が、試算条件の住宅モデルが公開されていない以上、私としてはこんな住宅モデルで標準仕様の UA 値が計算されていると考えるほかありません。他のハウスメーカーも、多かれ少なかれ同じことをしていると思っています。

このことをもって、「ハウスメーカーの UA 値は誇大表示だ!」と不信感を募らせるか、「窓を減らすだけでそんなに高断熱化できるのか!」と捉えるかは、あなた次第です。

参考
大手ハウスメーカー全社の断熱性能(UA値)比較ランキング【2019】
断熱性能を示すQ値とUA値の違いと注意点
Q値とUA値をざっくり計算するツール Ver.2.0

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