硬質ウレタンフォーム断熱材の断熱性能は 25% も劣化する?【更新】

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一条工務店や FP の家などでは、主な断熱材として硬質ウレタンフォームが採用されています。一条工務店のiシリーズIIでは「A種ウレタンフォーム保温板2種1号」を改良した熱伝導率 0.020 W/m・K の高性能ウレタンフォームを、FP の家では熱伝導率 0.024 W/m・K の硬質ウレタンフォーム2号を使用しています。

これについて調べると、硬質ウレタンフォーム板 2 種は、製造後 100 日程度で断熱性能が大きく劣化し、最終的に約 25% も低下するという衝撃的なデータが見つかりました。

このことについて詳しく紹介したいと思います。

ちなみに、一条工務店iシリーズで現在の硬質ウレタンフォームを壁・床・天井の断熱材に採用したのは 2013 年です。それまでに採用されていた断熱材は、劣化の少ない EPS です。

なお、当サイトには一条工務店に批判的な記事が多数ありますが、悪意があるわけではありません。たまたま気づいてしまっただけなのです。事実に反することを記載している場合は訂正して謝罪しますのでご指摘ください。

※よく調べ確認した結果、当初より記事の内容を改めました。



熱抵抗の経年変化を示すデータ

わかりやすいのは、発泡スチロール協会が公開しているこの 1 ページの PDF です(Web ページもありますが、少々データが異なります)。

発泡プラスチック断熱材の多くが経年変化により熱抵抗値が落ちる様子が示されています。なかでも「硬質ウレタンフォームボード保温板2種」の劣化は顕著で、製造時の熱抵抗を 1 とすると 1 年後には 0.75 程度まで下がっています。劣化はずっと続くわけではなく、その後は長期にわたり安定しています。

この元データは、日本建築学会に発表されているこの論文(PDF)です。

これがその通りだとすると、壁などからの熱損失量は 1 年後には計算より 3 割以上も増加することになります。

たとえば、熱伝導率 0.020 W/(m・K) の熱抵抗が 25% 低下すると熱伝導率は約 0.027 W/(m・K) となるので、熱損失量は約 33% 増えることになるからです(熱損失は他に窓や換気からも発生します)。

ここで以下の疑問が生じます。

・断熱性能の計算に使用する熱伝導率はいつの段階の数値なのか
・実際の使用条件下でも同様に劣化するのか

それぞれ確認していきます。

どの段階の熱伝導率か

まずは、住宅の断熱性能(UA 値、Q 値)の計算に使用する熱伝導率は、製造直後に測定した数値なのかどうか、ということです。経年変化後の熱伝導率を採用しているならば、まったく問題ないからです。

一条工務店は不明ですが、FP の家のサイトで説明を見ると、硬質ウレタンフォームの熱伝導率として、JIS A 9511 より引用しているとの記述が見つかります。これを調べると、「試料は,通常,発泡後 24 時間以上経過した製品から採り」との記述があります。

これより、ほぼ製造直後の数値であることがわかります。

つまり、計算上の熱伝導率では、経年変化が考慮されていないということです。

いくら設計上の Q 値や UA 値が良くても、数年後、あるいは数十年後には、燃費が悪い住宅になっている可能性があるのです。

どの断熱材を採用するにしても、経年変化がどうなのかという点には注意する必要がありそうです。

実際の条件下でも同様に劣化するのか

最初に紹介した資料は EPS(ビーズ法ポリスチレンフォーム)の宣伝資料なので、ウレタンフォームを悪く見せるデータを出している可能性もあります。そこで、日本ウレタン工業協会のデータも確認してみました。

次のページに、硬質ウレタンフォームの熱伝導率の経時変化について、グラフ付きで説明されています。

硬質ウレタンフォームの熱伝導率は、経時変化しますか? 又、どのような使用環境下で変化しやすいですか?

結果はほぼ同じですが、以下の記述もあります。

吹き付けた製品の状態のものをそのまま養生して測定時カットしたものは、経時変化が少ない結果です。
実際の製品はこの状態ですから、この結果が実態の変化を示していると判断されます。

元データが見つからないので確認できませんでしたが、薄い試験体は空気に触れやすく経時変化が大きいが、分厚い状態のままだと経時変化が小さい(または遅い)ということなのかもしれません。

試験データと実際の違い

論文を細部まで読み、また、各方面に確認すると、次のことがわかりました。

発泡プラスチック系断熱材の熱伝導率の変化は、熱伝導率の小さい発泡ガスが、それより熱伝導率の高い空気に置き換わることで生じます。

このため、空気に全くさらされない状況下では熱伝導率は変化しないことになります。また、変化の進行速度も、断熱材の厚みが大きいほど遅くなります。論文では、100 日程度で大きく劣化しているデータの試験体の厚さは 10 mm であり、厚さ 25 mm では 1 年以上かかっています。実際の住宅の断熱材の厚みは 50 mm 以上はあるので、あまりに早く劣化することはなさそうです。

また、ボード状の製品では、表面が被覆層(面材)となっていて、フォームが直接空気に触れにくいようになっています。

上記論文では被覆層の有無で熱伝導率の変化に影響がないという結果が出ていますが、これは試験体表面積の 15~20% を占める側面がシールされていなかったためと考えられています。その程度解放されているだけで抵抗なく全部空気に置換されてしまうの?という疑問はありますが、実際の使用環境下では空気に触れる面積の割合がずっと小さいので、この仕組みが有効に機能しているかもしれません(側面までシールされているボードがあれば良さそうですが、どうなのでしょう)。

さらに、硬質ウレタンフォームの長期にわたる断熱性能は、製品や配合によっても大きな差が出ます。最近では、長期性能のよい硬質ウレタンフォームのボードや、高性能な吹付けタイプの硬質ウレタンフォーム A 種 1H なども選べるようです。

しかしながら、EPS と比べると、硬質ウレタンフォームは基本的に断熱性能が変化しやすい性質がありそうです。

一条工務店や FP の家などで採用されている硬質ウレタンフォームが実際の使用環境でどの程度断熱性能を維持できているのかは、よくわからないところがあります。硬質ウレタンフォームを採用する際は、その製品の断熱性能が実際の環境で長期的に確保されるのかどうかを示すデータを確認したいものです。

関連記事:一条工務店の Q 値計算が間違っている件

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