断熱性能ランキングにあまり意味がない理由 | さとるパパの住宅論

断熱性能ランキングにあまり意味がない理由

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当サイトで多くのアクセスがある「大手ハウスメーカーの断熱性能ランキング」という記事の情報が古くなってきていたため、2021 年版のランキングを更新しました。しかしいつも悩ましいのが、「何を根拠にランキングを付けるか」ということです。ランキング対象外としているハウスメーカーの多さに現れているように、公開されている情報が少なく、公平・公正に正確なランキングを付けることができません。

ここでは、断熱性能ランキングを見る上での注意点を挙げるので、どういった視点で住宅会社の断熱性能を判断すべきか参考になれば幸いです。

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UA値は間取り・モデル・仕様による

UA 値とは外皮平均熱貫流率のことで、詳しくはこちらの記事で説明しています。

この UA 値は住宅一軒一軒で異なるものであり、「UA値 0.4 以下を保証します」などと書いているハウスメーカーはありません。そのため、大々的に UA 値を公表していないハウスメーカーが多数です。実際に建てた住宅の UA 値の平均や分布を公表してくれるのが施主にとっては一番参考になるのですが、そんな情報公開に積極的な会社はありません(公表するにしても、寒冷地の比重が大きい住宅会社ほど有利になってしまうという問題もあります)。

UA 値を公開しているところは、標準仕様でモデル住宅をつくり、計算した結果を一例として発表しているに過ぎません。しかし、数値を出す以上、どうしても比べられてしまうので、ハウスメーカーもなるべく良い数字が出るよう、非現実的な設計の住宅を計算に使ってしまいます。

参考
ハウスメーカーのUA値から逆算して試算条件の住宅モデルを考えてみた
カタログのQ値、UA値は当てにならない

開放感あふれる窓の多い間取りで計算したら 3 割も悪かった、なんてことはザラでしょう。住宅業界全体でやっていることとはいえ、施主としては参考にしにくい情報です。

また、ハウスメーカーは工法別などでいろいろなタイプやシリーズを展開しており、UA 値も当然異なります。超高断熱な住宅タイプを出していても、もっとも売れ筋の住宅タイプの断熱仕様とは全然違う、ということもあります。標準仕様というのが決まっていない場合もあり、各社を公平に比べる方法は思い付きません。

モデル値ではなく、全体の実際の数値を見る上では、ZEH 基準が参考になります。

ZEH 実績も参考にはなる

ZEH(ゼッチ)基準では、個々の住宅が準拠しなくてはならない断熱性能が決まっています(地域区分によって UA 値 0.60 以下など)。そして、ZEH ビルダーは自社の実績を公表する必要があります。

このため、ZEH 実績の割合が非常に高いビルダーは、実際に UA 値 0.6 以下の住宅を建てている割合も非常に高いことが確認できます。

ただし注意が必要なのが、ZEH 基準を超える高断熱住宅(HEAT20 G2 など)の割合がわからないことと、高断熱な住宅が必ずしも ZEH ではないことです。ZEH 実績が少なくても、当たり前のように UA 値 0.6 以下の住宅を建てている住宅会社もたくさんあります。

ZEH は手続きが煩雑で制約も多いため、国が勝手に決めた住宅仕様に従わない住宅会社があるのも当然、と思います。

関連
住宅の省エネ評価に対する疑問
ZEH で後悔?ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)を目指すべきではない理由

当サイトのランキングについて

当サイトの断熱性能ランキングでは、今年から、ZEH 実績の割合に基づいて断熱性能ランキングを付けようかとも思ったのですが、上記の理由により見送ることにしました。

また、これまでのランキングでは、断熱仕様に高断熱仕様と標準仕様がある場合、標準仕様の数値でランキングを決めていたのですが、それでは最上級シリーズのみ高断熱な住宅会社が不当に高く評価されてしまいます。そこで今回は、タイプや特別仕様を問わず、公表されている数値で最高のUA値を基準としてランキングを付けることにしました。

しかし、この現在の方法もまた、標準仕様や売れ筋の仕様との乖離が問題になってしまう弊害があります。特別仕様で対応できる場合も多々問題があるので、標準仕様は大切です。

参考 標準仕様で高断熱・高気密に対応すべき理由

詰まるところ、断熱性能を確認するには、実際に希望する住宅の断熱仕様を確認し、UA値を計算してもらうなど、いろいろな情報をみて総合的に判断するしかありません。

そこまでは難しいという場合、ハウスメーカーが断熱性能をどれだけ重視しているかは、標準仕様の窓のレベルを見るとだいたいわかります(トリプル樹脂サッシ > ペア樹脂サッシ、高断熱アルミ樹脂複合サッシ(サーモスXレベル)> アルミ樹脂複合サッシ)。

また、工法によって決まる断熱構造(木造充填断熱+外断熱 > 木造充填断熱 > 鉄骨)も大きく影響します。

参考
Q値・UA値の功罪 - 断熱指標の注意点
断熱性能は窓、壁、換気で決まる(部位別の断熱性能比較)

大変ですが、次のランキングは以上を踏まえて見ていただけると幸いです。

大手ハウスメーカー全社の断熱性能(UA値)比較ランキング【2021】
快適さと光熱費に大きく影響する断熱性能(UA値)について大手ハウスメーカー全13社の現状をご紹介。高断熱で何が変わるか、断熱部位ごとの各社の弱み、気密性能についても触れています。UA値だけではわからない、快適住宅を建てるために役立つ情報を紹介しています。

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