エアコン除湿の難しさ。必要な熱をいかに適度に取り入れるか | さとるパパの住宅論

エアコン除湿の難しさ。必要な熱をいかに適度に取り入れるか

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ジメジメした梅雨時や夏に除湿できると非常に快適ですが、その除湿方法はずぼりコレという完璧なモノがなく、どれも一長一短があります。究極的にはダイキンのデシカのような装置が理想的かもしれませんが、導入コストの高さなどを考えると、エアコンの冷房または除湿運転を利用する方法が一番現実的です。

参考 除湿能力・コストの比較【エアコン、除湿器、熱交換換気、エコカラット、デシカ】

ただ、エアコンの除湿にはいろいろとクセがあります。ここでは、その特徴と付き合い方について書いてみたいと思います。

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エアコン除湿の特徴

エアコン除湿の方式は細かく見ればいろいろありますが、基本的に以下の特徴があります。

除湿と同時に室温が下がる

エアコンの除湿はどういう仕組みかというと、室内機の熱交換器の温度を下げ、そこに室内の空気を通すことによって結露を発生させ、その水を捨てる、というものです。

この原理上、室内の空気が冷えてしまうことは避けられません。温度を下げたくない場合は、同時に熱を発生させて空気を暖めるしかありません。

連続除湿が必要

住宅には換気が必要です。しかし、換気が良すぎると、室内の絶対湿度は外気の絶対湿度と同じになってしまい、除湿ができません。

一般に推奨される、1 時間に 0.5 回のペースで空気を入れ替えるとします。仮に、室内の絶対湿度を 10g、外気の絶対湿度を 20g とし、除湿を止めた場合、室内の絶対湿度は 1 時間後には 15g、2 時間後には 17.5g となり、除湿の効果はすぐに見えなくなってしまいます。

このため、室内の湿度が上がらないようにするには、除湿を連続的に行う必要があります。エアコンが止まればすぐに湿度が戻るので、エアコンは常に動き続けていなければなりません。

エアコンが稼働し続けると室温を下げ続けるので、室温を一定に保つには、その分の熱を発生させ続ける必要があるというわけです。

微調整が効かない

このような原理のため、「湿度 55% を切ったら除湿を止める」というような運転は困難です。エアコンでは、湿度をどれだけ下げるかの細かいコントロールができません

エアコンには「設定温度」はありますが、「設定湿度」というものは上位機種にもおそらくないのではないでしょうか。あったとしても、複数の運転モードを切り替える必要があり、温度と湿度の両方を最適化することは困難でしょう。

少なくとも、高額だったわが家の全館空調機では、目標湿度を設定することができません。自動運転は冷房と暖房の切り替えのみで、ドライと冷房を自動で切り替える全自動モードはありません。このため、次のようなトラブルが今でもよく起こります。

  • 湿度重視で再熱除湿にしていたら室温が上がって暑くなってしまった
  • 再熱除湿にしていたら除湿が効きすぎてノドが乾燥してしまった
  • 弱冷房にしていたら夜間の気温低下で運転が止まってしまい、湿度が上がってしまった

「全館空調なら温度も湿度も常に快適!」というのは自動でカンタンにできることではなく、意外と難しいものです。

エアコン除湿の活かし方

上記の特徴を理解すると、エアコン除湿の効果的な使い方がわかってくるかもしれません。

温度を下げない再熱除湿

どんな状況でも除湿したいのであれば、温度を下げずに除湿する機能が必要です。それが、一部のエアコンに搭載されている「再熱除湿」です。

再熱除湿のしくみは、除湿後の空気を室内に送り出す前にヒーターで温め直すというものです。このため消費電力が大きくなりますが、エアコン1台だけで温度を下げずに除湿するためには仕方ありません。

ただ、ヒーターを使うのはもったいないので、その他の熱を利用する方法もあります。

「再熱除湿は電気代が高い」という悪いイメージから、近年は再熱除湿を搭載したエアコンは多くありません。再熱除湿の代わりとして、温度を下げにくい省エネな除湿機能を備えたというエアコンが発売されていますが、口コミを見ると除湿能力もイマイチなようです。

エアコン暖房を併用する

松尾先生の著書『ホントは安いエコハウス』p.57 によると、

再熱除湿の代わりに床下エアコンを夏にも暖房として使うことで、他の場所につけたエアコンの除湿機能を補填するという裏ワザ的なやり方

をしている建築家もいるそうです。

最初読んだときはどうかと思いましたが、再熱除湿と違って熱をヒートポンプで効率よく発生できるため、トータルの電気代は再熱除湿よりも安くなる可能性があります。ただ、暖房の付近が暑くならないようにする工夫が求められるので、快適に運用することは簡単ではない気がします。

再熱除湿機能がないエアコンが2台あり、どうしても素早く強力に除湿したいときには、使える小技かもしれません(干せないソファーを濡らしてしまったときとか?)。

日射をあえて屋内に入れる

同書では、考えられるけど建て主に勧めたことはない方法として、あえて日射熱を屋内に入れる方法が紹介されています。
夏の住宅は日射を入れないことが基本ですが、除湿を続ける熱を確保するためにあえて室内を暖めるというワケです。

空調による除湿を生活のなかで実践していると、これは意図せず自然にやっていることだな、と思います。夏の暑い時期や時間帯は、自然に熱が入ってくるので冷房を連続運転することができ、除湿もできます。再熱除湿を使う必要がありません。

ただ、本当に除湿したいのは、暑くない梅雨時や気温がそれほど高くない夏の夜です。このようなときには、そもそも日射がありません

適度な熱は悪くない

高断熱住宅の夏は室内に熱を入れないことが重視されがちですが、このように除湿のことを考えると、室内で一定程度の熱が発生することは悪いことではありません。多すぎると室温が上がったり冷房負荷が上がったりしてしまいますが、逆に室内の熱が少なすぎると冷房を連続運転できず、除湿もできずに多湿になってしまいます。

そう考えると、高断熱住宅の夏対策は完璧を目指さず、少し抜け落ちているくらいがちょうどいいのかもしれません。

当サイトでも、高断熱住宅の夏対策として、

を挙げてきましたが、完璧すぎると冷房も要らなくなって運転が止まってしまい、除湿ができません。冷房が効かないほどの熱の侵入は防がなければなりませんが、少し足りないところがあっても、「再熱除湿を使わず除湿できる」とプラスに考えることもできるということです。

とはいえ、除湿したいのに除湿しにくいタイミング(梅雨時や夏の夜間)は日射が弱く、内外温度差もないため、電気を使わずに適度な熱を取り入れることは困難です。梅雨時や夏の夜間には、やはり再熱除湿機能付きエアコンなどの、電気を使う方法が向いているでしょう。

また、多少の熱は許容するにしても、必要な時に冷房が効かないのは問題なので、冷房負荷のピークを小さくする工夫は重要です。これは、次に述べるエアコンサイズに影響します。

エアコンのサイズと除湿

エアコンで再熱除湿なしで除湿する場合、エアコンは小さいほど有利です。冷房負荷に対して冷房能力が高いとすぐに設定温度に達してしまい、すぐに止まってしまうからです。冷房負荷や暖房負荷をカバーできる能力を満たすギリギリのエアコンを選定することは、エネルギー効率の観点だけでなく、効率的な除湿という観点からも望ましいことでしょう。

エアコンが小さいと除湿能力も弱いのではないかという疑問も湧きますが、実際に除湿量を量ってみた結果、除湿量はエアコンのサイズ(冷房能力)に比例するものではなく、周囲の絶対湿度のほうが重要だなと思いました。10 畳エアコンでも 1 時間に 2 L を超える除湿が可能なようなので、小さいエアコンでも問題はないでしょう。

熱交換換気は余計なお世話?

多少の熱は望ましいということを考えると疑問なのが、熱交換換気の効果です。熱交換換気には換気の際、内外の温度差と湿度差を軽減する効果があります。暖房期には暖房負荷が減り乾燥が軽減されるため、確かに良い効果があります。

一方、冷房期は、宣伝では「湿気をコントロールしやすく、ジメジメさせない」と言われています。しかし、冷房期に侵入する湿度が減るのはともかく、冷房負荷が減ることが一概に良いとは思えません。冷房負荷が減ることでエアコンの除湿まで止まってしまったら、結果的に湿度は増えてしまうからです。それでも再熱除湿なら除湿は可能ですが、それでは省エネにならず、何のための熱交換かわかりません。

なるべく再熱除湿に頼らずに除湿したいのであれば、夏の熱交換換気はむしろ逆効果なのではないでしょうか。

第一種熱交換換気は高温多湿な温暖地に向いていると言われることがありますが、エアコンでの除湿を併用することを考えると、夏の効果は疑問です。

参考 冷房期の第一種換気のデメリット?【熱交換換気と再熱除湿の関係】

仮想通貨マイニングが効果的?

最後に何言ってやがると思われるかもしれませんが、これは本気(マジ)です。
先ほど再熱除湿に代わる熱の確保法をいくつか紹介しましたが、私も、とっておきの「考えられるけど人に勧めない方法」を思いつきました。

梅雨時や夏の夜間は日射熱が使えないため、内部発熱を増やすことが有効です。
そこで思い出したのが、データセンターでサーバーの発熱が課題になるということです。この困った熱を利用すればよいわけで、自宅に常時稼働し続けるコンピューターがあれば、熱の供給源として活用できます。

といっても通常の家庭にサーバーは必要ないので、その代わりに、仮想通貨マイニングを行うというのはどうでしょうか。高性能のPCにマイニングソフトを入れ、稼働させれば仮想通貨の報酬を得ることができます。相場に左右され、電気代の高い日本で今後も利益が出るのかは不確実ですが、補助暖房だと思えば多少損しても気になりませんし、電気代プランを見直せば利益も上がりやすくなるかもしれません。

調べてみると、発熱するマイニングPC を暖房代わりにしようという試みはあるようなので(以下記事)、意外と現実的かもしれません。

マイニングPCで冬を越せるか マシンの発熱を暖房にしてみた
暖房器具を使うと消費電力は約1000W。一方、熱を発しながら仮想通貨をマイニングすると暖まりながらお小遣いも得られる――のか?

冬は暖房の補助になり、夏は除湿の助けになるわけです。暑い時間帯に稼働させると冷房負荷を上げてしまいますが、そういうときだけ止める運用も可能でしょう。私は今のところやるつもりはありませんし、お勧めもしませんが。。

なお、仮想通貨(暗号資産)はただのハイリスクな投資対象と見られがちですが、ブロックチェーン技術(分散型台帳技術)は今後、世の中の仕組みを大きく変える重要な変革だと思い、注目しています。

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