容積絶対湿度から重量絶対湿度を換算する際の注意点(誤差、修正法、簡易法)

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当サイトでは絶対湿度の計算ツールを公開しており、そこでは重量絶対湿度を2種類の方法で計算しています。水蒸気分圧から直接重量絶対湿度を求める方法(A)と、容積絶対湿度を乾燥空気密度で割ることにより重量絶対湿度を求める方法(B)です。ただ、通常の温湿度ではどちらの計算結果もほぼ同じになるのですが、高温域では B に大きなズレが生じるという問題が発生していました。この問題について、原因と改善方法がわかったので、この記事で説明したいと思います。

なお、そんな細かい話ではなく、単に容積絶対湿度を重量絶対湿度に換算する簡単な方法を知りたいという方は、最後のセクションにお進みください。

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容積絶対湿度を乾燥空気密度で割る方法の問題点

重量絶対湿度は容積絶対湿度を乾燥空気密度で割ることによって求められるというのは、いろいろなところに書かれている方法です。
しかし、この方法には以下の問題があります。

容積絶対湿度は空気 1 m3 あたりに含まれる水蒸気の重量のことで、単位は [g/m3] などです。
一方、乾燥空気密度は、乾燥空気 1 m3 あたりの乾燥空気の重量のことで、単位は [kg/m3] などです。

このため、容積絶対湿度を乾燥空気密度で割ると、乾燥空気 1kg あたりの水蒸気の重量(つまり重量絶対湿度 [g/kg(DA)] )が出せそうに見えます。

ここで注意したいのは、容積絶対湿度における 1 m3 の空気とは、乾燥空気だけではなく、水蒸気を含む混合空気の体積であることです。

容積絶対湿度と乾燥空気密度とでは 1 m3 の対象範囲が異なるため、単純に容積絶対湿度を乾燥空気密度で割るだけでは体積を相殺することができません。
水蒸気の割合が少ない空気では「空気体積 ≒ 乾燥空気体積」であるため大きな違いになりませんが、高温域では水蒸気の量と体積が非常に大きくなるため、かなりの誤差が発生してしまいます。

容積絶対湿度を乾燥空気密度で割る方法の補正方法

上記の問題は、容積絶対湿度の値を「混合空気体積における乾燥空気体積の割合」(「乾燥空気比」と勝手に呼びます)で割ることで解決できます。
これにより、容積絶対湿度を、「混合空気 1 m3 あたりに含まれる水蒸気の重量」から「乾燥空気 1 m3 に対する水蒸気の重量」に変換することができます。

混合空気の単位体積を Vmix、その内の乾燥空気の体積を Vd とすると、乾燥空気比は Vd / Vmix で表すことができます。

Vmix 中の水蒸気の体積を Vw とすると、Vmix = Vd + Vw の関係が成り立ちます。Vmix = 1 [m3] とすると、乾燥空気比は 1 – Vw です。

水蒸気の体積 Vw は、容積絶対湿度 [g/m3] から水分子(分子量 18.015g)の mol 数を計算することで、理想気体の状態方程式(Wikipedia)から次式で体積を計算することができます。

\(V=\dfrac{nRT}{P}\)

1 気圧で温度T [℃] のときの計算を簡略化すると、Vw = (容積絶対湿度) x (T + 273.15) / 219542 となります(単位:m3)。

乾燥空気比は、1 – Vw です。

こうして乾燥空気比を考慮することにより、容積絶対湿度と乾燥空気密度から、高温域でもより高精度で重量絶対湿度を計算できるようになります(計算フォームはこちら)。

簡易版:容積絶対湿度から重量絶対湿度を換算する方法

重量絶対湿度の計算は相対湿度や温度に依存するため、厳密には、直接正確に容積絶対湿度を重量絶対湿度に換算する方法はありません
しかし、簡易的な方法としては、(容積絶対湿度) を (乾燥空気密度) で割る方法が便利です。

詳細:容積絶対湿度が年間で最高になる日本の真夏でも、外気の容積絶対湿度は最高 25g/m3 程度(気温 35℃、相対湿度 63% など)であり、その場合の上記の補正率は 3.5% ほどでしかありません(乾燥空気比 = 0.965)。つまり、外気や室内などの空気において、水蒸気の体積の割合はわずかです。なので、60℃以上などの高温域を検討する場合を除けば、(容積絶対湿度) を (乾燥空気密度) で割る方法でも大きな誤差は生じません。

乾燥空気密度は、20℃くらいの気温で考えるのであれば、約 1.2 [g/L] = 1.2 [kg/m3] なので、容積絶対湿度 [g/m3] を 1.2 で割ると重量絶対湿度 [g/kg(DA)] になる、と覚えておくと便利です。

反対に、重量絶対湿度を容積絶対湿度に換算する場合は、重量絶対湿度を 1.2 倍すれば容積絶対湿度になるということです。

乾燥空気の密度は、理想気体の状態方程式(Wikipedia)より、次式で計算できます。

\(P\div \left( 2.8705\times \left( T+273.15\right) \right)\)

ここで、2.8705 は乾燥空気の気体定数です。
P: 気圧(hPa 単位)
T: 温度(℃ 単位)

乾燥空気の密度と気温の関係については、以下にグラフを掲載しておきます。
1 気圧(1013.25 hPa)において温度による乾燥空気密度の違いを考慮したい場合は、こちらをご利用ください。

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