ほとんどの湿度計は相対湿度(%単位)を表示しますが、なかには絶対湿度(単位:g/m3など)を表示する湿度計もあります(これらは絶対湿度を直接測定しているわけではなく、温度と相対湿度の測定値から計算した値を表示しています)。
絶対湿度が重要だということはよく言われていますが、どうして相対湿度ではなく絶対湿度をチェックしたほうがよいのでしょうか?
ここでは、絶対湿度を表示できる湿度計を自宅で1年半ほど使ってみて気づいた特徴やメリットについて紹介したいと思います。
温度に影響されないため、変動が小さい
絶対湿度は、一定の空気(体積または重量)中に含まれる水分の重量を表します。
一方、相対湿度は示すのは、飽和水蒸気量に対する実際の空気中の水分量の割合です。飽和水蒸気量は温度に依存し、高温では大きく、低温下では非常に小さくなります。
このため、相対湿度は温度によってコロコロ変わります。
次のグラフは、気象庁のデータから作成した、ある1日の1時間ごとの相対湿度と絶対湿度です。
この日(2/20、東京)の気温は 1.6℃~17.4℃でした。
相対温度は、日中に気温が上がると半分以下までグッと下がるなど、1日のうちに大きく変動しています。
一方、気温と相対湿度から計算される絶対湿度※は、3.6~5.2g/m3 の範囲で、気温に左右されずに安定して緩やかに推移しています。
このように、絶対湿度は安定しているため、昼になって急に「乾燥がァァァァ!」と振り回されることがありません。
このメリットは、変動の大きい外気だけでなく、室内においても役立ちます。
室内では、相対湿度が低くなっていても、絶対湿度が低くないことがわかると、
「室温が上がりすぎているせいだな(キリッ」などと冷静に対応することができます。
絶対湿度は変動が小さいため、湿度計をチェックする頻度も少なくて済みます。
むしろ、変化がなくて面白くない感すらあります。
※ (容積)絶対湿度はこちらの計算フォームと同じ式で計算しています。表計算ソフトや関数電卓でないと難しい計算です。
感染症対策の目安になる
ただ、チェックする指標として、相対湿度と絶対湿度のどちらを見るべきかは気になるところですが、これは目的によります。
洗濯物が乾くかどうかを知りたいときは、いくら絶対湿度が低くても相対湿度が100%では乾かないので、相対湿度も重要です。
目的が感染症対策であれば、絶対湿度は最適です。
乾燥していると空中を漂いやすいインフルエンザウイルスなどの生存率は、相対湿度ではなく絶対湿度と関係が深いからです。
感染症対策としては、
容積絶対湿度であれば 8 g/m3 以上、
重量絶対湿度であれば 7 g/kg(D.A.) 以上の湿度を維持できると良いようです。
家の内外の湿度差がわかる
絶対湿度計を使っていて良いなと気づいたのは、室内外の湿度を比較できることです。
相対湿度は温度に左右されるため、室内外で温度差がある場合、相対湿度はまったく当てになりません。
たとえば、暖かい部屋の相対湿度が30%で乾燥していると思ったとき、寒い外の相対湿度は40%だったとします。
相対湿度で比べてしまい、外のほうが湿っていると勘違いして窓を開けてしまうと、部屋がもっと乾燥してしまうという悲劇が起こる場合があります。
こんなとき、室内外に1台ずつ絶対湿度計があれば、どちらが乾燥しているのかが一目瞭然です。
窓を開けたり換気を強めた場合に部屋の湿度が上がるのか下がるのかがわかり、湿度管理を間違えることがなくなります。
おすすめの絶対湿度計
そういうわけで、購入したときは気づいていませんでしたが、絶対湿度がわかる湿度計はけっこう便利です。
2台用意し、外の雨や日光が当たらないところ(できれば窓から見えるところ)に設置しておくと、なおさら便利です。
そんな便利な絶対湿度計ですが、残念なことにほとんど販売されていません。温度と相対湿度を測定し、数値計算するだけなのだから、絶対湿度を表示できる温湿度計はもっと増えてよいと思うのですが、安価に入手できる温湿度計となると、以下「みはりん坊W」の一択です。
この機種では、モードにより、「乾燥指数」という名前の容積絶対湿度(g/m3)と、温度、相対湿度、時刻を同時に表示することができます。
私は湿度計コレクター(?)として自称高精度アナログ湿度計などいろいろ試してみましたが、精度においても十分実用的です。
みはりん坊Wの精度をチェックしてみた【追記】
温湿度の時系列データを取れる温湿度計を購入したのを機に、改めて飽和塩法で湿度計の校正を行ってみました。
3年前に購入した「みはりん坊ダブル」を相対湿度 75%の空間内に置いたところ、表示された相対湿度もピッタリ 75% でした。
このことから、みはりん坊Wの精度は結構正確であり、3年くらいでは劣化していないことがわかりました。
みはりん坊Wの弱点
みはりん坊Wはすばらしい温湿度計ですが、データのログをとることはできません。データを記録するには、目で確認してメモするしかありません。
屋根裏とか床下などの目視しにくい場所のデータを確認したい場合や、時系列データを取得して分析したい場合などは、スマホと連携してデータを取得できる以下の温湿度計がお勧めです。
これは絶対湿度計ではありませんが、安価ながら Bluetooth に対応しており、温度と湿度のログをとり、スマホアプリを使って csvファイルでエクスポートすることができます。絶対湿度は Excel などの表計算ソフトで計算できます(詳細は以下参考)。1カ月程度のデータであればハブは不要で、単体で使用可能です。
追記:SwitchBot のアプリのアップデートにより、絶対湿度をグラフでかんたんに表示できるようになりました。便利です。
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