高断熱住宅で加湿器に頼らずに乾燥を防ぐ方法 | さとるパパの住宅論

高断熱住宅で加湿器に頼らずに乾燥を防ぐ方法

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冬の加湿は大事だとよく言われますが、結露の問題を起こさずに加湿するには、まず高断熱住宅である必要があります。

参考 インフルエンザにかかりにくい絶対湿度を実現するためには高性能住宅が必須

しかし、ただ室温を上げるだけだと、絶対湿度はほとんど変わらないため、相対湿度が低下し、乾燥してしまいます。

参考
高断熱・高気密住宅は乾燥する?
空気線図でわかる相対湿度と絶対湿度、結露と乾燥の関係

そこで加湿器を利用している人も多いわけですが、使っている人はご存じのように、加湿器はメンテナンスが大変です(給水、清掃、ミネラル成分の処理)。

ここでは、高断熱住宅であることは前提として、なるべく加湿器に頼らずに乾燥を防ぐ方法について検討したいと思います。

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室内の湿度を高くする方法

室内の湿度を高くする方法は、大きく分けると 2 つしかありません。

  • 室内の水蒸気発生量を増やす
  • 外に捨てる水蒸気を減らす

のどちらかです(よね?)。

内装の調湿材は、平準化する効果はあっても、長期的に加湿しつづける効果は期待できないため、ここでは検討しません。

参考 木材やエコカラットなどの調湿効果に対する疑問

1 の「室内の水蒸気発生量を増やす」方法は、こちらにも書いたし、単純なことばかりなので、ここでは詳しく書きません。洗濯物を部屋干しするとか、風呂の換気扇を止めるとか、そんな話です。

ここでは 2 の「外に捨てる水蒸気を減らす」方法を中心に考えたいと思います。

排湿減の呼吸・壱ノ型「全熱交換換気」

一見かんたんそうなのが、全熱交換型の第一種換気システムを採用することです。
高性能な換気システムだと、換気で失われる水分の 8 割くらいを回収することができます。
第一種換気の広告を見ると、乾燥を防ぐ効果がかなりあるように思えます。

しかし、全熱型の第一種換気システムのメリットを引き出すことは意外と簡単ではありません。
風圧や温度差で発生する自然換気(詳細)と、局所換気(トイレなど)の分は湿度交換されないため、湿度回収効果を高めるには、これらを極力減らす工夫が求められます。

たとえば、床面積 100 m の住宅の第一種換気システムの風量が 120 m3/h として、自然換気量が 24 m3/h(C値 1.0 でこのくらい)、局所換気がトイレ 2 室で 68 m3/h になるとすると、単純計算で総換気量は 212 m3/h(※)となり、湿度交換率 80% の機械を使っていても、全体の湿度交換率は 45% ほどという計算になってしまいます。
全体の換気量が多くなりがちなことも問題です(後述します)。

したがって、多少の湿度向上効果は見込めるものの、第一種換気システム全体のコストを考えると、それに見合う効果かどうかはやや疑問です。
超高気密にして便所の数や局所換気量を減らせば効果は高まりますが、それが可能かどうか、そのほうがいいのかは難しいところです。

これらで加湿器が不要になるなら良いですが、わが家は第一種換気システムを採用していても、全館空調の加湿機能と加湿器を併用してやっと、相対湿度 40% 以上、絶対湿度 9 g/m3 以上になる程度です。わが家には反省点が多く、もう少し工夫すれば加湿器が要らなくなったかもしれませんが、現状は中途半端です。

参考 第一種換気と第三種換気 – 特徴とコスト、デメリット

※単純に足し算するのは正しくなく、もっと少ない気がしますが、正しい計算方法は不明です。全館空調メーカーやハウスメーカーに確認してもわかりませんでした。

排湿減の呼吸・弐ノ型「換気絞り」

室内では、生活していれば結構な量の水蒸気が発生します。
この量は、手元の本(『最高の断熱・エコハウスをつくる方法 令和の大改訂版』)によると、4 人家族で 1日 9.4L(換算すると、0.4 L/h)にもなるそうです。
この水分を捨てなければ乾燥しないので、外に排気する換気量を減らすことは、どの換気方法であっても乾燥対策として効果的です。

近頃はよく、「しっかり換気して加湿しよう」などと言われますが、換気と加湿は基本的に相反するものです。
換気を増やせば増やすほど加湿は物理的に困難になるため、両者のバランスをとるのなら、目標とする換気量を設定して確保し、それ以上にも以下にもならないよう制御しつつ、加湿を行うことが要求されます。

こうした、必要最低限の換気量を確保することに役立ちそうな知見は、以前ご紹介した鎌田先生の著書『本音のエコハウス』に詳しく解説されています。

前述の第一種換気の例では合計の換気量が大きくなりすぎていましたが、同書では、第一種換気で自然換気量を差し引いた分の換気装置を設置できることについても言及されています。

参考 第一種換気の実際の換気回数は 0.5 回/h 以上なので弱められる?

もう一つ提案されているのは、換気回数を 0.3 回/h 程度に絞る方法です。詳細は本を読んでいただくとして、私もこの方法はありだなと思います。

先ほど、床面積 100 m の住宅の換気風量が 120 m3/h という例を出しましたが、これは換気回数 0.5 回/h の計算であり、0.3 回/h なら 72 m3/h でよいことになります。
必要換気量の計算では、大人 1人あたり 20~30 m3/h という計算方法もよく用いられます。これだと人数の多くない家庭では 0.5 回/h はやや過剰という見方もできるため、0.3 ~ 0.5 回/h の換気量にすることは無茶ではありません。

換気回数を 0.3 回/h 程度とする場合、第一種換気では湿度が高くなりすぎる恐れがあるようですが、第三種換気では、室内での湿度発生量しだいでは、ちょうど良い湿度になることが期待できます。

この第三種換気で換気量を絞る方法は、換気による熱損失も同時に減らすことができます。
0.5 回/h を 0.3 回/h に落とせれば、換気分の熱損失が 4 割カットとなり、Q 値で実質 0.16 ほどの改善効果が期待できます。

うまくいけば非常に低コストで楽に快適さが得られるようになるのではないでしょうか。

唯一心配なのが換気不足ですが、建材中のホルムアルデヒドは昔よりかなり減っているし、二酸化炭素濃度をモニターすれば、室内空気がきちんと問題ない程度に入れ替わっているかどうかをチェックできます。
五感と併せて二酸化炭素濃度をモニタリングすれば、換気量をどこまで絞って問題ないかがわかることでしょう。

ただ、二酸化炭素濃度計はあまり安くありません。
サクラチェッカーを利用しつつ Amazon で調べたところ、安価なものは怪しい商品も多く販売されています。
以下の製品が実用的かと思われますが、それなりの価格はします。

補足:法律上は換気回数 0.5 回/h 以上の換気設備を設置する必要があるため、最大で 0.5 回/h を実現できる設備とした上で、0.3 回/h 以上の風量で運用するということです。あまり普及していない方法のため、住宅会社に難色を示されるかもしれませんが、その場合はその理由を確認しておきたいものです。
この方法は、私のような素人ではなく重鎮研究者の鎌田紀彦先生が書いていることなので、住宅業界は真摯に検討していただきたいと思います(住宅会社にとっては熱交換換気を勧めるほうが売上高も増えるし楽で売りやすいと思いますが…)。また、寝室などは空間を閉じて利用すると局所的に換気不足になりやすいので、その点は注意も必要と思います。

詳細 寝室の換気が不足しがちという問題と対策。適正な居室の広さについて

また、二酸化炭素濃度に応じて換気量を調整する換気システムもあるようですが、詳しくは知りません。

住んでみないとわからないが…

生活で発生する湿気の量は各家庭それぞれですし、湿気の量が同じなら、家の空間が広いほど乾燥はしやすくなります。
実際のところ住宅がどの程度乾燥するのかは立地や家庭によって異なるため、住んでみないとわからず、事前に推定することは難しいかもしれません。

ただ、何もしなければ冬は乾燥する可能性が高いので、何らかの乾燥対策は検討しておくほうが良い気がします。上記の方法は、後からでは対応しにくいこともあります。

加湿器なしでも乾燥が気にならない住宅が実現すればそれに越したことはないし、住んでみて乾燥が気になるのであれば、加湿器はいつでも導入できます。

次記事:高断熱住宅に向く加湿器の選び方

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