空調機の除湿量をチェックしてみたら除湿機の比ではなかった | さとるパパの住宅論

空調機の除湿量をチェックしてみたら除湿機の比ではなかった

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除湿機よりもエアコンのほうが除湿能力が高いらしいとは聞くものの、エアコンで除湿した水はタンクに貯まらず捨てられるため、実際にどれだけ除湿しているのかは実感がわきません。

除湿能力・コストの比較【エアコン、除湿器、熱交換換気、エコカラット、デシカ】」という記事で紹介した東電の試験資料(PDF)によると、冷房能力 2.8kW のエアコン(10畳用)の除湿量は、再熱除湿で 1 時間当たり 1.5kg、冷房で 2.3kg であったとのこと(室温24℃、相対湿度80%)。

これを見るとエアコン冷房の除湿量が最強ですが、除湿するだけでなく室温も同時に下がることに注意が必要です。梅雨時は寒いということです。

わが家はルームエアコンがなく全館空調機ではありますが、除湿のしくみはエアコンと同じで、再熱除湿モードもあります。冷房能力は 10kW であり、上記の試験機種の約 3.6 倍の能力があることになるので、再熱除湿であれば単純計算で 1 時間に 5kg(5 L)もの除湿ができるという計算になりますが、果たして本当でしょうか?

一般的な除湿機の除湿量はどのくらいかというと、例えば価格コムで売れ筋ランキング 1 位のシャープ CV-L71 (Amazon) の除湿能力を調べると、1 日 6.3 L とのこと。1 時間当たりでは 0.26 L に過ぎません(強運転、室温27℃、相対湿度60%、消費電力175W)。条件は異なりますが、除湿能力に約20倍もの差がある可能性があります。

実際のところどうなの!?

ということで、実稼働中の全館空調機のドレン管から出ている水を貯めて水量を量り、実際の除湿量をチェックしてみました。

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梅雨時の再熱除湿の除湿量

ドレン管に大きいジップロックを付けて除湿量を測定したところ、室温 26℃、相対湿度 40%(外気温 26℃、相対湿度 56%)の条件で 1 時間に 1.3 L の水が取れていました。

さすがに 5 L とはいきませんが、なかなかの除湿量です。

紙パック式の掃除機と同じで、取れた量が目に見えないと大したことがない気がしてしまいますが、実際に目にすると、除湿機の除湿量とは比べ物にならないくらい除湿できていることが実感できました。

なお消費電力量は 1.1kWh でした(換気も含む)。除湿機より高いのですが、消費電力当たりの除湿量で考えれば大差はなく、条件の違いを考えればむしろ優秀です。

考察1:絶対湿度で考えると…

空調機が大きいにもかかわらず今回の除湿量が上記の試験ほど多くなかったのは、空気中の水分量、つまり絶対湿度が多くなかったせいかもしれません。

容積絶対湿度を計算すると、① 東電のエアコンの試験条件、② 除湿機のメーカー試験条件、③ わが家の測定時の絶対湿度はそれぞれ、① 17.4 g/m3、② 15.5 g/m3、③ 9.8 g/m3 です。

やはり、今回はだいぶ不利な条件です。

参考 温度と相対湿度から(容積・重量)絶対湿度を計算するツール

外気の絶対湿度は 13.7 g/m3 あったので、窓を開けっぱなしにしたり、絶対湿度の高い夏に測定してみれば、もっと大量の除湿量を確認できそうです。また改めてチェックしたいと思います。覚えていれば。

ちなみに、わが家の室内空間の体積は約 350 m3 なので、空気中の全水分量は 350 x 9.8/1000 = 3.4 kg(≒L)ということになります。もし 1 時間に 5 L ものペースで除湿したとしたら、カラッカラです。今は 1.3 L/h で十分でしょう。

追記:参考までに 7月初旬にも追加測定してみたところ、再熱除湿 1 時間で 1.7 L でした。条件は、外気温23度、湿度80%、16.5 g/m3 です。

考察2:除湿量から考えるわが家の実質換気回数

今回の 1 時間の測定前後では、室内の温湿度に変化がありませんでした。ということは、(除湿量)=(室内で発生した水分量)で平衡状態になっているということです。室内で発生する水分には、換気によって外気から入る水分のほか、洗濯物や人体、水回りから発生する水分などが考えられます。

しかし測定では、換気以外の水分が極力発生しない時間帯を選びました(人がおらず家中が乾いている時間帯)。大雑把ながら、換気による水分収支をチェックしてみたかったからです。

(除湿量)≒(換気による水分流入量)と見なして確認したかったことは、以下の内容です。

理論上、室内と室外の絶対湿度がそれぞれ 9.8g/m3 と 13.7 g/m3 で、気積が 350m3、換気回数 0.5 回/h であれば、1 時間に換気で室内に入る水分量は約 0.7 kg になるはずです。

つまり、室内の温湿度を維持するためには、1 時間に 0.7 L の除湿量で十分なはずです。

それが実際には 1.3 L もあったということは、実質的な換気回数は 0.5 x 1.3/0.7 = 0.9 回/h ということになるのではないでしょうか。

わが家は水分まで回収できる全熱交換型の第一種換気システムを採用していますが、以前、次の記事に、「実際の換気回数が 1.0 回/h くらいになっていて全く省エネになっていないのでは?」という疑念を持っていることを書きました。

第一種換気の実際の換気回数は 0.5 回/h 以上なので弱められる?

残念なことに、驚くほど予想どおりの結果です。誤差の大きい大雑把な測定と計算ではありますが、この疑念を支持する結果が得られてしまいました。第一種換気をうまく生かすのは本当に難しいことだなと思います。

真夏の空調機の除湿量【追記】

梅雨時の測定で、外気の絶対湿度が多いほど除湿量が多そうだということがわかったため、最大値を知りたかったので、一年で最も絶対湿度が高くなる8月にまた測定してみました。

面倒だったので、内外の温湿度はちゃんと記録していません。

その結果、常にエアコンを付けている状態だと、弱冷房で1時間に 1L の除湿を行っていました。
再熱除湿ではもっと除湿できました(2L/h ほど)が、夏は涼しくできずに暑くなってしまうので、再熱除湿は向いていません。

その後、停電があり、復旧後、蒸し暑くなってきた部屋を冷房で一気に冷やした際に除湿量を調べたところ、
40 分で 2.8 L の除湿ができていました。

1時間換算で 4.2L になるペースです。とはいえ、40分後には相対湿度も下がっていたので、除湿量のペースは落ち続けます。窓を開けたりすれば、最初に計算した、1時間に 5L の除湿というのも見えてくる結果です。

ただ、除湿の目的はたくさんの水を取ることではなく室内の湿度を下げることなので、除湿能力が高ければ高いほどよいわけではありません。冷房でハイペースに除湿できても、その除湿効果は一時的であり、その後冷房が止まってしまえば湿度はすぐに上がってしまいます。

湿度を外気より低く快適にコントロールするためには、換気によって室内に入ってくる水分量を減らし、エアコンを止まらないように稼働させ続けることが重要です。

以上をまとめると、今回、空調機の除湿量を調べてみて改めて気付いたのは、次の 3 点です。

  • エアコン除湿量は除湿機の比ではない
  • ただし除湿量は室内の水分量(換気などで室内に入る水分量)しだい
  • 除湿を効かすには、エアコンサイズよりもエアコンを動かし続けることが重要

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