西日はよく嫌われていますが、嫌われるのには訳があります。ここでは、方位別の日射量と気温の変化から西日が嫌われる理由を確認し、その対策について考えたいと思います。
方角別の窓から入る日射熱量
太陽の軌道は季節によって変わるので、季節ごとの変化を考える必要があります。日本の気候に合ったエコハウスを考える良書『エコハウスのウソ 増補改訂版』(前真之著、2015)には、鉛直面に入ってくる日射量を季節ごとに示した図が載っています(p.214)。
下図は、夏至について抜粋したものです。これはつまり、夏至に日除けがまったくない状態の窓に入る日射量を示しています。
夏至は太陽高度が高いので南面の窓からの日射量は多くなく、太陽高度が下がる東西面からの日射量が圧倒的に大きいことがわかります。
この図で注意が必要なのは、夏至は 6/21 頃と、まだそれほど暑くない時期であることです。秋分(9/23 頃)に近づくにつれて南面からの日射量も増える(秋分の最大が 12 時で 500W/m2 程度)ので、8 月頃になると南面からの日射量も軽視はできません。
ただ、西面からの日射量は秋でも大きいので、東西面の日射熱対策がより重要とはいえそうです。
8 月の時間ごとの気温の変化
上記の日射量のデータで比べると、東面も西面も同じです。それでも西面だけが特に嫌われるのは、下図の時間ごとの気温の変化をみるとわかります。
出典:気象庁ホームページ
東面の日射量が最大になる朝 8 時頃の気温はまだ 30℃くらいですが、西日が最大になる夕方 16 時の気温は高く、この日は 34℃もあります。
ただでさえ暑い時間帯に強烈な日射熱が入るわけですから、そりゃ嫌われるワケです。
西面に 4 m2 の窓があるとすると、その日射熱は最大で 600 W/m2 x 4 m2 = 2400 W = 2.4 kW にもなります。
6 畳用のエアコンの冷房能力が 2.2kW なので、これから紹介する対策を何もしなければ、フル稼働してもエアコンが効かなくなってしまうことでしょう。
西日を防ぐ方法
日射対策としては庇(ひさし)という建築上の工夫がありますが、これは南面向けの対策です。西日は太陽高度が低く、横から照らしてくるため効果がありません。
そのため、西日対策は窓面全体で広く施す必要があります。
これから住宅を建てる設計段階やリフォームでできる対策と、後からできる対策に分けて紹介したいと思います。
設計段階・リフォームでできる西日対策
1. 西面の窓面積を極力減らす
西日の影響は面積に比例するので、窓をなくすか小さくして、面積を小さくすればよいのです。窓は断熱の弱点なので、住宅全体の断熱性能が向上するメリットもあります。冬の日射熱取得も減りますが、それは南面に任せればいいでしょう。
2. 高遮熱型 Low-E ガラスを採用する
一枚ガラスの日射熱取得率は約 88% ですが、温暖地で一般的な高遮熱型 Low-E ペアガラスでは約 40% と半分以下になります。
日射熱取得率 24% のトリプルガラスなら、一枚ガラスと比べて 7 割以上もの日射熱をカットできます。
3. スクリーンシェードを設置する
日射熱は窓の内側より外側でカットしたほうが効率的です。窓の内側での遮熱カーテンなどは単板ガラスでは効果的ですが、Low-E ペアガラスなどでは大きな効果は見込めません。外付けブラインドシャッターは高額ですが、スタイルシェードやアウターシェードなどは結構手軽に導入できるのでお勧めです。
関連記事:
・Low-E ガラスの遮熱はカーテンではなく窓の外で
・YKK AP の洋風すだれ「アウターシェード」の使用感
後からできる西日対策
1. シャッター・雨戸を早く閉める
シャッターなども窓の外側で日射を遮蔽できるので、暗くはなりますが効果的です。
2. すだれ・日除けシェードを設置する
外からは室内が見えないのに家からは結構明るいのでお勧めです。ただ、台風などで都度片づけるのが面倒です。
3. 植物を植える
つる植物や木などを植えるのも効果はありますが、すき間も発生しやすく、上記よりは難易度高めです。
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