全館空調システムでは、冷暖房と換気用の空気をダクトを通じて各部屋に送ります。このため、ダクトがカビやホコリで汚染されてしまうと、各部屋に送られる空気まで汚染されることになり、健康上の問題が発生するおそれがあります。
ここでは、ダクト式第一種換気システムで同様のダクト汚染を心配をされている方も含め、なにかしら参考になればと思い、入居5年目のわが家のダクト状況を紹介したいと思います。
ダクトの清掃は必要か?
わが家で三井ホームの全館空調を採用する際もダクトの汚染は気になったので、三井ホームの担当者に聞いてみました。定期的な清掃は必要だろうと思ったのですが、意外なことに、「ダクトのメンテナンスは不要」とのことでした。
60年間の長期優良メンテナンスプログラムにも、ダクト清掃の項目や予算は含まれていません。
参考 三井ホームの長期メンテナンス費用は本当に安いのか?【わが家の参考額】
それでも、ドイツやスウェーデンではダクトの汚染が問題となり、定期的な清掃が推奨(義務付け?)されているという情報も見かけます(以下は外部の参考サイトです)。
日本でも、ネットで調べてみると、住宅のダクト清掃を行う業者はいくつか見つかります。西方里見著『最高の断熱・エコハウスをつくる方法 令和の大改訂版』には以下の記述もあります(p.232)。
最近ではダクト内清掃の専門会社ができ、各県に1カ所程度の代理店があり安心です。専門ロボットを使い10年に1回程度の清掃です。コストはおおよそ15万円です。
気になる場合は定期的に清掃することも可能ということなのでしょう。
でも、15万円という料金は決して安くはありません。進んでやりたいものではなく、必要ないのであればお金をかけたくないというのが本音です。
そこで、5年目にしてダクトの汚染がどの程度進んでいるのか、以下の怪しいカメラ(後述)を使って簡単にチェックしてみました。
入居5年目のダクトの汚染状況
全館空調のダクトでも、汚れやすいところと汚れにくいところ、汚れてはマズいところと問題ないところがあることでしょう。
気になった以下の箇所についてチェックしてみました。
各部屋の給気口付近
一番重要と思われるのは、各部屋に新鮮な空気を送り届ける給気口(吹出口)付近のダクトです。ここにカビが生えていたりしたら、もちろん嫌です。
まずは狭い部屋(私の部屋)の給気口付近をチェックすると、こんな感じでした。
ダクトの内側はビニールのような素材なのですが、その光沢が見えるほど、汚れが見つかりません。
5年目でメンテナンスせずにこれならば本当に生涯メンテナンス不要かも、と期待が膨らみましたが、もっと広い部屋の風量の大きい給気口付近も一応チェックしてみると、次のとおりでした。
画像がボケていますが、薄っすらと灰色のホコリが積もってきています。十年以上経過したら、箇所によっては、やや気になるレベルのホコリが積もるような気がします。。
ただ、カビのようなものは見当たらなかったので、そこは安心しました。
還気口付近
還気口(吸気口)というのは、各部屋で汚染された室内空気を換気装置側に吸い込むところです。このダクトを通るのはどうせ外に捨てる空気なので汚れていても気になりませんが、詰まってしまったりすれば問題になります。これはわが家の場合は天井にありますが、フィルターなどを通さないため、ホコリがそのまま入る可能性があります。
気になってチェックしてみたところ、目に付くほどのホコリは見当たりませんでした(画像はありません)。フィルターはなくても、風量が弱いし天井にあるので、ホコリは積もりにくいようです。
住宅全体のセントラル吸込口付近
わが家の全館空調システムでは、家全体の換気用の新鮮な空気(外気)を、2階にある一か所の換気フード(室外吸込口)から取り込んでいます。この空気は部屋に送られる前に空調機本体でフィルターを通じて清浄化されるので、多少汚れていてもかまいません(もちろんキレイなほうがいいですが)。
以下の何が写っているのかよくわからない写真はともかく、
外から換気口を見るだけでわかるのは、湿った泥みたいな汚れが付くことです。畑が近くにあり、強風で土が舞うこともあるので、これは仕方ないでしょう。詰まることもなさそうだし、私は気になりません。
風呂の排気換気口付近
こちらは全館空調システムとは別の、風呂の排気専用換気扇の奥の部分です。ここは風量が大きく、年中フィルターなしで室内の空気が通るため、なかなか汚れます。外に捨てる空気なので汚れても問題ないのですが、一応撮影してみました。
やはりホコリがたくさんあります。
ただ、詰まるほどではなく、風量には影響なさそうです。
ちなみに排気専用のダクトの汚れは通常は気になりませんが、このホコリの塊は台風などの強風時に逆流して室内に落ちてくることがあります。特に、風呂より換気風量の弱いトイレは逆流しやすく、年に何度か汚れてしまいます。
思ったこと
全館空調システム5年目のダクトの汚染状況はそんな感じでした。この汚染の程度をどう思うかは人それぞれでしょうが、以下は私の感想です。
実際は汚れにくい
ホコリが詰まったダクトの写真とかを見ると心配になりますが、大事な箇所の汚れは軽いホコリくらいで、ほぼ想定内であり、安心しました。
考えてみれば、空調機(換気装置)から各部屋に送られる空気は清浄なので、ダクトはそれほど汚れません。風呂の換気扇などと比べればわかるように、汚れる速度が違います。また、厨房みたいに油を使うわけでもないため、汚れるとしてもただのホコリです。
加湿機能も問題ない
わが家の全館空調システム(東芝のスマートブリーズ)には加湿機能があります。これは以前はなかった機能であり、加湿された空気をダクトに通すことに抵抗がある人もいらっしゃいます。しかし私がチェックした範囲ではカビは見当たらず、ダクトのホコリは乾いたものでした。
加湿機能を使うのは暖房時のみであり、気化式のため、水が粒ではなく水蒸気として空気に含まれているので、カビが生えるほどダクトに水がとどまることはないのでしょう。気化式加湿ユニットは定期的な洗浄が欠かせませんが、ダクトについては加湿機能は問題にならないと思いました。カビのリスクは、どちらかというとダクト内ではなく、冷房時の結露水関係のほうが起こりやすそうな気がします。
フィルター掃除は大切
以上のようにダクトは長期間放置していても概ね問題ありませんが、フィルターのホコリは1カ月もすれば結構たまり、風量に影響してきます。きちんと換気を行うためにも、全館空調や第一種換気システムでの定期的なフィルター掃除は欠かせないなと、改めて気づかされました。
ダクトは長期的には手入れが必要かもしれない
5年目の現状をみてそれなりに安心しましたが、ホコリが積もっている箇所があるのも事実です。古いビル空調とかと同じで、長い年月を経るとホコリは目立ってくるでしょう。
生涯メンテナンス不要というのは、やはり言い過ぎだと思います。10年目では気にならないでしょうが、20年目くらいには、私でもダクト清掃を頼みたくなるかもしれないなと思いました。
ダクトの汚染が心配な方には、通常の第三種換気やダクト式排気セントラル第三種換気、ダクトレス第一種換気システムといった選択肢もありますが、ダクト式だとこんな感じです。
【追記】その後わかったことの補足
この記事を書いた後、全館空調の業者の方に質問したり、全館空調を長年使用している方の情報を伺ったりしてわかったことを補足しておきます。
全館空調のダクト清掃は困難
全館空調のダクト清掃は専門業者があって15万円ほどと上には書きましたが、わが家のメンテナンス会社に聞くと、現時点ではダクト清掃のサービスは行っていません(将来的には不明)。この会社での全館空調の歴史は二十年弱のようで、ダクト汚染が発生していると主張する住人はいるようですが、それに対応するサービスはなく、全交換となると天井を剥がしての大工事になるようです。
ダクト清掃を専門に行っている業者にしても、換気ダクトの清掃は行っていても全館空調ダクトには難色を示されたり、実際に見積もりをお願いするともっと高額になったりするようです。
メンテナンス会社によると、ダクトはそもそも清掃を前提として設計されておらず、吹き出し口は何度も取り外したりできるようになっていない様子です。それゆえ、ダクトが汚染しないように換気空気に含まれるホコリをフィルターで除去するようにしているとのことですが、わが家の現状を見ると除去しきれていません。
上に紹介した JVIA のコラムの情報を併せて思うに、給気ダクトの使用は望ましいものではなく、使用するのであればダクト清掃の定期的メンテナンスを前提として設計されるのが当然あるべきことだと思います。
全館空調の設備更新について
三井ホームの住人用サイトで全館空調のメンテナンスを調べると、全館空調の入れ替え工事の案内が見つかります。
これによると、デンソー系では工事期間2日程度の入れ替え工事が案内されています。再熱除湿が可能になったりするようですが、ダクトや吹き出し口は既存のものをそのまま使用することが前提となっています。
東芝製では詳しくは書かれていませんが、「15年以上お使いのお客様」に対し、効きの悪さや運転音の異常を感じている場合などに、機器の入れ替えを推奨しています。これもおそらく、ダクト等は既存のままでしょう。
全館空調の更新をどうするかの判断は、わが家ではおよそ 10 年後になります。まだ結論は出せませんが、ルームエアコンへの切り替えも念頭に置き始めています。
関連
・全館空調の使用を止める場合、換気はどうすればよいか?
全館空調の購入を検討されている方へ
全館空調を購入した後にいろいろと知ったことを踏まえると、全館空調を選択したことにはやや後悔もあります。セールストークを割り引いても、長期的な使用について、もう少し考えられているだろうと楽観的に期待しすぎていました。
これまで、コストが気になる方にはお勧めできないというスタンスでしたが、ダクトの汚染が気になる方にもあまりお勧めできません。
全館空調を採用する方の中には、将来的にエアコンに切り替えることを想定し、各部屋にエアコンを設置できるよう、新築時に電気配線などを行っておく方もいらっしゃいます。私もこれはやっておけばよかったなと思います。
(参考)激安のUSB検査カメラについて
こんなチェックをやろうと思ったのは、Amazonで千円台で入手できるカメラ(KKmoon)を発見したことがきっかけです。
マイクロUSBとUSBに対応しているのでAndroidスマホで使えると思いましたが、レビューを見ると「使えない」という声も多々あります。半信半疑でしたが、安いので最悪使えなくてもいいやと思い、試しに購入してみました。
私の場合、はじめスマホやタブレットで使おうとするとなぜか本体が自動で再起動してしまい、結局使うことができませんでした。しかし、ノートパソコン(3万円代で購入したThinkPad E495)で試してみると、すんなりと簡単に使うことができました。説明書に記載されていたURLを入力してzipファイルをダウンロードし、解凍して.exeファイルを開いたら、USBカメラを差し込むだけで使用できました。
画質はというと、明るい場所で以下くらいの画像が撮れます。ライトがあるので暗い所も近くは撮ることができ、動画も撮影できます。
カメラとしては取り扱いが難しく、別にお勧めはしませんが、狭い所に物を落としたとき(車のシート間など)などにあると便利かもしれません。値段を考えれば、意外と使える商品でした。
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