技術大国日本にしては意外なことに、窓ガラスの断熱性能や気密性能は世界的に見て低レベルなものでした。しかしながら最近は LIXIL や YKK AP などの大手メーカーが樹脂サッシやさまざまな複層ガラスを発売しており、以前よりは高性能な窓が手頃に入手できるようになってきました。
大手ハウスメーカーではスウェーデンハウスと一条工務店が標準仕様の窓ガラスとしてトリプルガラス(三重ガラス)を採用していますが、その他のメーカーでも上位オプションとしてトリプルガラスを選択できるところが多々あります。
ほとんどのハウスメーカーでは熱貫流率(Uw値)2.33程度(省エネ建材等級では最高評価の四つ星)のアルミ樹脂複合サッシでLow-Eペアガラスの仕様が標準となっていますが、はたして関東でも高価なトリプルガラスを採用するメリットはあるのでしょうか。
トリプルガラスのメリット
トリプルガラスにする主なメリットは断熱性能の向上です。
ペア(二重)ガラスではサーモスX や APW 330 といった高性能な窓シリーズで Uw 値が 1.5 前後であるのに対し、トリプルガラス(APW 430など)では 1.0 前後の数値を実現しています(ちなみにガス入りトリプルと真空トリプルはほぼ同等で、真空の方が薄くなります)。
このため、Uw 値 2.33 のときの全熱損失の 50% が窓経由だと仮定すると、Uw 値 1.5 では全熱損失の 18%、Uw 値 1.0 では 29% を削減できることになります(Q 値もそれだけ下がります)。
家中の温度差がなくなって快適性が増し、冷暖房費が目に見えて安くなることが期待できます。
最近の住宅では、窓から逃げる熱損失が全体の 1/3~1/2 を占めています。鉄骨や木造軸組工法などで壁の断熱性能をそれほど高くできない場合、Q 値を下げるためには窓性能を大幅に上げるしかありません。初期費用が増えても、長期的には取り戻せる可能性があるでしょう。
トリプルガラスのデメリット
一方、トリプルガラスにすることのデメリットは、高い価格と、窓の重量が増すことです。
ペアガラスとの大きな金額差を考えると、断熱性能の高いペアガラスを採用し、他の断熱性能を高める方法も現実的です(参考:低コストで高断熱・高気密を実現する仕様)。
重さについては、子供や女性、老人が気軽に開け閉めをするには、トリプルガラスはちょっと重いかもしれません。防犯合わせガラスを採用するとガラスがさらに一枚増えるため、なおさら重くなります。これについて心配な方は、一条工務店やリクシルなどの展示場で実際に確認してみることをお勧めします。
寒冷地と違って、関東以西では窓を開け閉めする頻度が高い可能性があります(ちなみに、わが家では窓をあまり開けません)。重いとサッシにかかる負担も大きくなるので、長期的に問題が生じやすいかもしれません。
また、トリプルガラスが一般的な仕様でない住宅会社の場合、選べる窓の形状やタイプが限定されてしまう可能性があります。その場合、部分的にペアガラスを採用せざるを得ないこともあるかもしれません。
ペアガラスの住み心地
わが家の窓ガラスは、樹脂サッシのペアガラス(アルミスペーサー仕様、Uw 値 1.7 程度)です。
住んでみてわかったことですが、ペアガラスでは関東でも結露の発生は免れません。氷点下になる日は相対湿度が 50% 程度で窓の下部やサッシに結露が生じます。量は大したものではなく、天気のいい日はすぐに乾きます。しかし、雨の日や北側は放置するとカビが生えそうなので、毎日軽く拭く手間がかかります。高い位置の固定窓は拭くこともできないので少し気になります。
また、窓際に立つとわずかに足元に寒さを感じますし、部屋の大きさの割に窓が大きいトイレなどは少しばかり寒さを感じます。
想像ですが、トリプルガラスでは、おそらくこのような問題はないでしょう。これは大きなメリットです。ちなみに、同じペアガラスでも、樹脂スペーサーでオール樹脂サッシの APW330 特別仕様やエルスターS などではいくらか改善されるものと思われます(※)。
そんなわけで、私としては関東以西であってもトリプルガラスはお勧めですが、窓の開け閉めの負担や、防犯合わせガラスが必要かどうかなどをよく検討してから決める必要があると思います。ペアガラスにする場合は、熱伝導率の高いアルミを極力排除した、できるだけ高性能なものにすることをお勧めします。
※YKK APのニュースリリースによると、外気温0度、室温20度、湿度50%では結露が発生しません。露点温度と相対湿度の関係(こちらを参照)を併せて参照すると、樹脂スペーサーの樹脂サッシではペアガラスでも結露は生活上気にならないレベルになるものと推測されます。いろいろあって我が家では樹脂スペーサーにできなかったのですが、非常に悔やまれます。
関連記事:
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・ペアガラスの断熱性能はピンキリで、その差は 3 倍以上!
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・結露が発生する条件および対策
コメント
はじめまして。
私も三井ホームさんで8月の着工に向け準備を進めています。
さとるパパさんのブログは三井ホームさんで家作りをするにあたり大変参考にさせていただいております。
現在、窓の仕様で行き詰っており、さとるパパさんのご意見をお聞きしたくてコメントさせていただきました。
窓の断熱性能を上げる為にAPW330のペア樹脂スペーサー仕様に変更しようと思ったのですが、標準やオプションの仕様がなく一般品になる為、オプション仕様の真空トリプルガラス仕様のほうが金額が安いという事もありそちらを採用するつもりですが、全て日射遮蔽型になると言われました。
南面の窓ガラスを日射遮蔽型にする事は冬の日射も遮蔽する事になりますので、南面のみ一般品の日射取得型ペア樹脂スペーサー仕様にしたほうが良いのではないか?と思ったりしています。
その場合、冬の日射は取得できますが窓の性能も下がり金額も上がってしまいます。
比較的温暖な地域ですので全て日射遮蔽型でも良いのではないか?とも思ったりしています。
断熱性能を取るか冬の日射取得を取るべきか決めかねています。
居住地は福岡県、南北道路の土地に全館空調の平屋です。
南面には左右に3連のたてすべり出し窓(計6枚)真ん中に引き違いの掃き出し窓です。
パッシブデザインという訳でもなく軒の出は標準の450㎜で夏場はアウターシェード等で日射遮蔽を考えています。
引き違い窓は真空トリプルの場合は電動シャッターでペア樹脂スペーサーの場合は防犯ガラスを考えています。
さとるパパさんのご意見をお聞かせいただけたら幸いです。
コメントありがとうございます。
日射熱取得型と遮熱型とで季節ごとにメリット・デメリットが異なるので悩むところですよね。
定量的な評価は私にはできませんが、福岡という温暖な地域性を考えると遮熱型のメリットのほうが大きく、断熱性能の差と価格差を考えるとトリプルの遮熱のほうがよいのかなという気がします。大窓を一部だけペアにすると、冬に天気が悪い日はその付近が寒くなったり、結露が発生しやすくなったりすることもあるかもしれません。
また、遮熱型にしておけば、南面は軒の出だけでも十分な日射遮蔽ができるかと思われます。わが家には軒の出がない南面の窓があり、アウターシェードを設置したものの、太陽高度が高い夏の日射は多くないため、今年はシェードも下ろさないつもりでいます。やや南西向きとかだと微妙なところですが、ご参考までに。
参考にさせていただきます。
ありがとうございました。