高断熱住宅に欠かせないのが、複層ガラスです。住宅展示場を初めて見た頃はペアガラスであるだけで「すごい!」と思っていましたが、一口にペアガラスと言っても種類によって断熱性能には大きな差があります。窓の断熱性能は熱貫流率 U(W/㎡・K)を比べればわかるので、さまざまなタイプの窓を取り扱っている LIXIL の窓シリーズを例として、熱貫流率 U 値の違いを確認してみました。
窓タイプごとの熱貫流率 U(W/㎡・K)
U=4.07:従来のアルミサッシのペアガラス
U=3.49:アルミサッシのLow-Eペアガラス
U=2.33:アルミ樹脂複合サッシLow-Eペアガラス(サーモスII-H、サーモスL)
U=1.52:高断熱型アルミ樹脂複合サッシLow-Eペアガラス(サーモスX)
U=1.30:樹脂サッシLow-Eペアガラス(エルスターS)
熱貫流率は小さいほど高断熱です。上記のように、最高クラスの樹脂サッシと従来のアルミサッシの熱貫流率を比較すると、同じペアガラスでもその差はなんと 3.1 倍もあります。
『枠組壁工法住宅工事仕様書』ではアルミサッシの複層ガラスの熱貫流率は U=4.65 とあるので、これと比較すると 3.6 倍にもなります。ペアガラスは単板ガラスよりは高断熱ですが、ここまで違いがあるのなら、より高性能な商品を選びたいものです。
断熱性能の差が出る要因
この差が生まれる主な要因は、今では一般的になった Low-E ガラスの有無と、サッシの違いです。Low-E ガラスになるだけで、熱貫流率は従来のトリプルガラス相当になるくらいの差が出ます。
サッシの素材も重要です。樹脂の熱伝導率はアルミの約 1000 分の 1 であり、アルミの使用は少ないに越したことはありません。ただし、同じアルミ樹脂複合サッシでも、最新のサーモス X では従来品と比べて約 35% も熱貫流率を低減しています。フレームのスリム化、断熱構造、樹脂スペーサーの採用といった細かい工夫の積み重ねです。
もちろん、オール樹脂の窓も優れた断熱性能を発揮します。ただし、防火地域には採用できないなどの問題もあり、注意が必要です(YKK AP には樹脂の防火窓もあります)。
日本は窓後進国であり、断熱性能が高い窓の普及が遅れていますが、ようやく高性能な窓を多数選べるようになってきました。注文住宅の標準仕様はまだ U=2.33 が一般的ですが、窓シリーズは変更できます。その際は U 値を確認するようにしましょう。
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ちなみに公庫の工事仕様書には解説付きのものがあり、細かいことを調べる際に重宝します。
コメント
いつも情報、ありがとうございます。
同じペアガラスでも性能差は大きいですね!
断熱性能以外に気密性にも差があるため、実際の性能差はさらに広がります。リクシルであれば、エルスターX以上は窓の気密性が十分に確保できているようです。
ここで注意したいのは、高性能な窓を選んでも、それに見合った施工をしてもらえない可能性がある事です。三井ホームでは、4地域より温暖な地区で木製窓以外の場合に、気密処理が簡略化します(マニュアル上)。
日本メーカー製窓の高性能化にマニュアルが追いついていないメーカーが他にもあるかもわかりませんので、施工方法にも注意が必要です。
追加情報まで提供していただき、ありがとうございます。高気密の重要性に気付いている業者はよいですが、気密性能をおろそかにしている住宅関係者がまだまだ多い現状は問題ですね。三井ホームで高気密住宅を実現するのは苦労が多いかと存じますが、陰ながら応援しております。