トリプルガラスへのアップグレードで元は取れるか?

高断熱住宅を検討している方にとって、窓サッシの断熱レベルをどの程度にするかは悩ましいところです。高性能ほど良いのは当然ですが、このための追加費用が高いと尻込みしてしまいます。

ここでは、1つの視点として、高性能ペアガラスをトリプルガラスに変更すると暖房費用はどれだけ安くなるのか、そしてその節約額は追加費用を上回るのかを簡単に検討してみたいと思います。

こんな比較は窓面積などの条件によって大きく変わるのであまり意味がないかもしれませんが、YKK AP のサイトにも年間冷暖房費の試算値(後述)があったので、その試算と自分なりの試算とでどのくらいの差が出るのかを確認してみたかった、というのもあります。過程はどうでもいいという方は、飛ばして結論だけお読みください。

ちなみに、この試算は温暖地でエアコンの連続運転や全館空調を使用することを前提としています。間欠運転なら節約額はもっと小さくなることでしょう。

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モデル住宅のシミュレーション例

全館暖房では暖房費は Q 値(熱損失係数)に比例するため、まずは、APW 330 やサーモスX などの高性能ペアガラスを APW 430 やエルスターX などのトリプル樹脂サッシに変更した場合にモデル住宅で Q 値がどれだけ改善するかを計算します。

その後、わが家の暖房費を参考にして、年間の暖房費がいくらになるかを計算してみます。

トリプルガラスによるQ値改善効果

Q 値の試算は、以下のツールを使用しました。

Q値とUA値をざっくり計算するツール
窓、壁、床、天井(または屋根)の熱貫流率と各面積を入力することにより、概算で Q 値(熱損失係数)と UA 値(外皮平均熱貫流率)を計算するツールを作成しました。 細かい計算を省略した簡易的なものなので、注意事項をご確認のうえ、ほんの...

この初期値(断熱等性能等級 4 の仕様。詳細は上記リンク先参照)で窓以外の条件を同じにして計算したところ、以下のようになりました。

高性能ペアガラス(U 値 = 1.6 と仮定):Q = 1.67
トリプル樹脂サッシ(U = 1.0 と仮定):Q = 1.50

暖冷房費節約額

暖房費については、以下のツールを使用しました。

断熱性能(Q値)から冬の暖房費用を推計するツール
全館暖房を行った場合の 1 カ月の暖房費用(エアコン電気代など)を推計するツールを作成してみました。 誤差が生じる要因はいろいろとあり、例によって結果は保証できかねます。が、高断熱住宅で全館空調やエアコンの連続運転による全館冷暖房を検...

南関東の厳寒期の一月の暖房費を推定した結果は以下のとおりです。
パラメータは、上記の Q 値とモデル住宅延べ床面積を利用し、平均温度差は 17℃、COP=5、C=1.0、電気単価は 28 円/kWh としました。

高性能ペアガラス:14,556 円
トリプル樹脂サッシ:13,144 円

わが家の実際の全館空調の電気代から換気分や基本料金を引くと、暖房期(10月~4月)の暖房費の合計はピーク月の 4.6 倍だったので、その関係から推測した年間暖房費は次のようになりました。

高性能ペアガラス:66,958 円
トリプル樹脂サッシ:60,462 円

その差、年間約 6,500 円です。

参考:YKK AP の試算額

YKK AP の Web サイトには、樹脂ペアガラス APW 330 の年間冷暖房費とトリプルガラス APW 430 の年間冷暖房費の試算値が掲載されています。モデル住宅の面積や開口部比率は上記計算とほぼ同じですが、エアコンは間欠運転を想定している点が大きな違いです。

これらは冷暖房費の金額なので、東京の暖房費だけをグラフから読み取った結果は以下のとおりです。

APW 330(ペア):約 35,700 円
APW 430(トリプル):約 29,500 円

その差、年間約 6,200 円です。住宅会社のシミュレーションは非現実的な数値が多いなか、これはなかなか現実的な試算値のように思われます。その差額は全館暖房ではもっと大きくなるかもしれませんが、高断熱住宅なら全館暖房も間欠運転も大差ないので、差額は 1 万円もないくらいではないでしょうか。

今回の主題とは逸れますが、このシミュレーションでは、冷房費については断熱レベルによる差が小さいことと、年間冷暖房費の差でも約 5,200 円しかないこともわかります。今回、暖房費だけで冷房費を考慮しなかったのは、冷房費は日射条件のほうが大きく影響するためです。日射遮蔽をきちんとすれば、トリプルガラスで冷房費の節約も可能と思われます。

サッシのアップグレードに伴う追加費用

さて、それでは高性能ペアガラスからトリプルガラスへのアップグレードに伴う費用はどのくらいでしょうか。

これは地域や住宅会社によって大きく異なり、今後差額は小さくなるものと思われますが、個人的に把握している見積額の差は、だいたい坪単価で 2 万円を超えています。

仮に 2 万円とすると、約 36 坪の上記住宅モデルではアップグレードに伴う差額は 70 万円を超えます。

果たして、元は取れるか?

上記の試算では、暖房費の節約額は多くて年間 1 万円、初期費用の差額は 72 万円ということでした。

トリプルガラスへの追加費用を暖房費用の節約額でまかなえるかどうかは、使用年数しだいです。テキトーな上記試算を元にすれば、72 年以上使うならば、トリプルガラスにアップグレードしても元が取れる計算になります。現在の窓サッシがそこまで耐久性があるかは不明ですが、次世代にわたって利用すれば元が取れないわけではないけれど、元を取るのはなかなか難しい、といった感じです。

しかし、だからといってトリプルガラスが温暖地で過剰かというと、私はそうは思いません。なぜなら、一番冷気を伝えやすい窓の断熱を強化することによって家中の温度差がほとんどなくなり、さらに快適になるからです。エアコンの効きがよくなるので、高価な全館空調も不要になるほどです。新車を買うより安い出費でさらに快適になるのなら、人によっては安いといえるかもしれません。

結局、高性能ペアガラスがよいかトリプルガラスがよいかは微妙なところです。私の場合、全館空調とトリプルガラスの両方を採用するほどの余裕がなく、ハウスメーカーが後者に疎かったのでトリプルガラスは選択肢になりませんでしたが、どちらが良かったのかは、今も謎です(後悔したくないから結論を出したくない気持ちもあり)。

参考
高断熱ほど部屋中の温度差が小さくなる理由【図説】
空調方式ごとの断熱レベル(Q 値)と暖冷房エネルギーの関係
全館空調 vs. エアコン(全館空調のメリットが得られる条件)
高断熱ペアガラスでエアコンを連続運転するとどうなるか?【アンケート結果】

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