気密性能を表す指標としてよく使われる C 値(相当すき間面積)について紹介します。なお、「すき間相当面積」という表記も見かけますが、住宅金融支援機構の仕様書では「相当すき間面積」の用語が使用されていたのでこれを採用します。
C 値とは
C 値は家のすき間の割合を表すものです。
具体的には、家の外周(外壁、天井、床、窓)にあるすき間の総面積(c㎡)を延床面積(㎡)で割った値です。単位は c㎡/㎡ です。
つまり、延床面積 100 ㎡ の家の C 値が 1.5 c㎡/㎡ であれば、家のすき間の合計は 150 c㎡(はがき 1 枚程度)あるということになります。数値が小さいほど高気密であると言えます。
C 値の求め方
C 値は家を建てた後、現場で測定することによって求められます。室内に圧力をかけることですき間から空気が移動するため、間接的にすき間の割合を推定することができます。
この測定値は季節による変動があり、家の乾燥収縮などの影響も受けます(詳細は後述)。
省エネ基準で要求される C 値
現在の省エネ基準では C 値の基準はなくなってしまいましたが、以前の H11 省エネ基準では、高気密の基準として以下の数値が採用されていました。
北東北以北:2.0
それ以外:5.0
この数値はよく、最低限の値と言われます。効果的な換気を行ったり、室内の湿度を管理したりするためには不十分だからです。詳細は次の記事をご覧ください。
なぜ基準から消えたのか
省エネ基準から C 値の項目がなくなったのにはさまざまな理由が考えられます。主な理由は、UA 値のように設計時に計算できるものではなく、測定が必要であり、現場にとっても役所にとっても手間と費用がかかるからではないかと思います。
大手鉄骨ハウスメーカー等が圧力をかけている可能性も考えられます。鉄骨造は概して気密性能が低く、基準を満たすのが困難であり、数値で比較されると不利だからです。
いずれにせよ、基準から消えたからといって、高気密の重要性が減ったわけではないことには注意が必要です。数値の基準は消えましたが、気密性能を確保するための仕様基準はあります。この仕様基準は寒冷地の場合により厳しくなっており、仕様どおりに家を建てれば、寒冷地で 2.0 以下相当、それ以外の温暖地で 5.0 以下相当の C 値になると見なされています。気密工事の仕様は H11 省エネ基準から H25 省エネ基準までほとんど変わっていません。
つまり、長期優良住宅など次世代省エネ基準を満たす住宅であれば、この程度の C 値が期待できることになります。
工法ごとの C 値
高気密を実現しやすい工法と、そうでない工法があります。一般的に、面をつなぐような工法や外断熱工法は高気密にしやすいと言えますが、細部の気密処理なども大きく影響します。
住宅の構造別相当隙間面積(実測による実例)は以下のとおりです。
構造 | 平均値 | 標準偏差 |
軸組 | 4.35 | 3.21 |
パネル(軸組) | 2.02 | 1.34 |
2×4 | 2.17 | 1.19 |
RC(戸建) | 1.67 | 1.17 |
RC(集合) | 0.87 | 0.82 |
スチールハウス | 3.44 | 1.50 |
パネル(軸組)とは、木造軸組工法のうち、全面に合板などを貼る工法のことです(スーパーウォール工法など)。RC とは、鉄筋コンクリート造りのことであり、軽量鉄骨とは別です。スチールハウスとは、木造枠組壁工法の枠材を鉄に置き換えたような面構造の工法のことです。
また、標準偏差はばらつきを表すもので、たとえばツーバイフォーの場合、約 7 割は 2.17±1.19(0.98~3.36)の範囲に収まることを意味します。
C 値の経年変化
C 値は木材の乾燥収縮が落ち着くまでの 2 年間ほどは悪化し、以降は落ち着く傾向があります。C 値の経年変化を調べているところは少ないと思いますが、FP の家(木造軸組パネル工法)は再測定のデータを公開しています。
C 値が劣化するからといって C 値がどうでもいいということはなく、多少悪化しても劣化は収束するものなので、最初により高い性能を求めることが良いと思います。
C 値の劣化の原因が木材の乾燥収縮であるならば、最初から十分に乾燥された木材を使用することで劣化を防げる可能性があります。ただし、鉄骨住宅であれば劣化しないのかなどを調べてみてもデータが見つからなかったため、その効果は未知数です。
私見ですが、大きな地震を受けたときの気密性能の劣化も無視できません。特に、構造上の損傷はなくても内壁にひびが入るような被害を受けたときは、気密性能も劣化するのではないかと思います。この点で、揺れが小さい面構造は軸組工法より有利でしょう。
C 値の詳細については、建築士の方による次のページもとても参考になります。
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