樹脂サッシの劣化と耐久性について

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いくら高断熱でエコと言われる樹脂サッシでも、長持ちしないのでは意味がありません。アルミ樹脂複合サッシでも最近は高断熱な商品も現れていますが、断熱性能や結露防止性能に関してはオール樹脂サッシと比べるとやや性能が劣ります(参考:「サーモスXと APW330 の比較」)。できればオール樹脂サッシを採用したいものですが、その最大の問題と思われる耐久性は実際のところどうなのでしょうか。

樹脂サッシは日本では北海道を除き普及していませんが、世界的には広く使用されているサッシであるため、大きな問題はないことが予想されます。しかし、日射の強い日本の温暖地では長期の実績がないため、まったく不安がないわけではありません。選んで後悔することは避けたいものです。そこで、樹脂サッシの耐久性について、改めて調べてみました。

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樹脂サッシの材料について

プラスチックといってもさまざまで、樹脂サッシに使用される樹脂は PVC(ポリ塩化ビニル)です。これは、地中のパイプなどにも使用される、高耐久、高強度の材料です。

しかし、塩化ビニル自体には、紫外線により劣化黄変する性質があります。樹脂は可塑剤や劣化を防ぐ安定剤によって性質が変わるため、実際のサッシは紫外線にも耐えられるようにできています。が、アルミと比較すると、紫外線による劣化があるということは事実でしょう。

問題は、劣化の進行速度です。

アルミに劣化の問題がないかというとそうではなく、塩害を受ける可能性があります。日本のそこらじゅうにある古いアルミサッシを見れば確認できるように、カビや歪み、サビなどが発生します。

樹脂サッシの実績

樹脂サッシは 1960 年代にドイツで誕生し、ドイツやイギリスでは今も圧倒的なシェアを誇っています。高緯度地域だけでなく、日本と緯度の近いフランス、アメリカでも過半数が樹脂サッシで、アルミはほとんど使用されていません。YKK AP によると赤道付近でも採用実績はあるそうです。

日本では 1975 年に販売が開始されています。現在では、温暖地でも一条工務店やセルコホームなどで標準仕様として採用されています。

つまり、世界では 50 年以上、北海道では 40 年以上の実績があることになります。その間、大きな問題が見つかって採用されなくなったという話は聞かないため、それらの地域では実用上問題ないということなのでしょう。

イギリスでの樹脂サッシ事情を調べてみたところ、英国プラスチック連盟(BPF)のサイトに樹脂窓の寿命についての記事(英語)があり、そこに興味深いレポートが紹介されていました。ドイツの公的機関によるレポートで、樹脂窓の長期特性について次の記述があります。

樹脂サッシ窓の故障は、通常、稼働部や密閉部(つまり塩化ビニル樹脂以外の部分)で発生します。したがって、樹脂窓の長期の特性は、窓枠自体ではなく、窓枠に取り付けられた部品の耐久性、メンテナンス状況、摩耗性能によって決まります。樹脂サッシは殺菌剤や保護コーティングで塗装する必要がないため、窓枠のメンテナンスは清掃のほかは必要ありません。

塩ビ部分の劣化ばかり気にしていましたが、実際はその他の寿命のほうが問題になるようです。

しかし、北海道や高緯度地域で長く採用されているからといって、日本の温暖地で長期にわたって問題がないとは限りません。

温暖地の紫外線は北海道より強いが問題ないか

日射が強い地域では、サッシが高温にさらされるという問題と、紫外線の量が多いという問題があります。

耐熱性

耐熱性については、樹脂サッシ工業会の Web サイトに以下の説明があります。

真夏の直射日光を受けたときの室外側の表面温度は60℃以上、密閉された二重窓構造の空気層では80℃に達しますが、その形状、機能は30年間保持されています。

30 年間持つのであれば問題なさそうです。

紫外線

紫外線の強度は低緯度ほど強くなりますが、東京は北海道と比べるとどの程度強いのでしょうか。

次の図によると、東京の紫外線強度は北海道より 4 割くらい高そうです(UV-B だけを考慮するのが適切かは不明です)。

環境省『紫外線環境保健マニュアル2008』

つまり、北海道で 30 年間に受ける紫外線は、東京での約 20 年分に相当するということです。ドイツなどで長期使用に問題がなくても、日本の温暖地で問題がないとは言い切れません。

しかし、日本の YKK AP などの樹脂サッシでは、紫外線対策として塩ビの上にアクリル層(ここに着色しています)を設けています。メーカーも試験を行っていることでしょうし、紫外線強度が問題になる可能性は低いでしょう。ただ、何らかの紫外線対策が施されているほうが安心ではあります。

なお、夏季に窓枠に直射日光が当たらないように日射遮蔽をすることも長寿命化に貢献します。窓の外側での日射遮蔽は冷房費の節約を期待して行うことが主ですが、ダブルの効果が期待できます。

参考 Low-E ガラスの遮熱はカーテンではなく窓の外で

1年使用した使用感

たった 1 年ですが、樹脂サッシ(YKK AP APW330)を使用してみてわかったことがいくつかあります。

まず最初に気づいたのは、一部、小さなものですが、入居時に欠けが見つかりました(施工時に発生したもので、やり直すのも大変なので住宅会社の謝罪を受け入れることにしました)。物理的衝撃などが加わるとアルミは曲がったりしますが、樹脂だと欠けるというのが発見でした。ただし今のところ通常の生活でカケが発生したことはなく、よほどの力が加わらない限り問題はないものと思われます。

塩ビは丈夫です。庭を掘っているときに塩ビのパイプに鋼鉄のスコップを入れてしまい焦ったことはありましたが、びくともしませんでしたから。

次に気づいたことは、汚れの程度は普通ということです。窓ガラスと同程度に雨跡などが付きます。ほとんどは簡単に落とせますが、まれにプラスチックに付くような落ちにくい汚れが付くことがあります。これは、メラミンスポンジで落とすことができ、説明書にもそうするよう記載されていたと思います。

最後に、当然ですが、1 年で感じる劣化は一切ありません。

私としては、どんな窓でも多少の劣化はあると思うので、30 年くらい持てばリフォームして最新の高断熱ガラスに交換してもいいなと思っています。それだけのお金の余裕があるかはわかりませんが。。

我が家はサーモスX と APW の両方の経時変化を比べられる環境にあるので、今後何かわかれば報告したいと思います。

追記:
この記事がエコハウスで名高いオーガニックスタジオ新潟ブログ記事で取り上げられていたことに気づきました。同感していただけたとのことで、採用した者として安心しました。

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