「気密性能はどこまで求めるべきか」で書いたように気密性能は高ければ高いほど良いものですが、第一種換気方式を採用する場合に必要な気密性能については、「C値はどの程度を目指すべき?」と聞かれると、正直なところよくわかりません。
さまざまな意見があり、どれも一理あるような気がするためです。なんとも歯切れの悪い内容ですが、そのあたりの事情を紹介しておきたいと思います。
第一種換気は風の影響を受けやすい?
第一種換気は、家の中を負圧にする第三種換気と違って、家の内外の圧力差がありません。このため、強風時にすき間から外気が侵入しやすい、という説があります。
これについては、北海道のどこかの換気を専門とするコンサルティング会社が具体的かつ詳細なレポートを公表していたのですが、残念ながらサイト自体が閲覧不能になってしまい、現時点で資料を再確認することができません。
記憶に頼るしかないのですが、その会社によると第一種換気こそ高気密である必要があり、C値で 0.3 以下が理想とされていたと思います。ちなみに、第三種でも強風の影響を受けない C 値は 0.7 以下、という別の論文を読んだ覚えもあります。
これらより、換気による熱損失の観点からは第一種換気は風の影響を受けやすい、と言えます。
また一方で、第一種換気のほうが風の影響を受けにくい、という意見もあります。第三種換気では給気口が家中に配置され、風上面と風下面で圧力差ができるのに対し、第一種換気では一つの面に給気口と排気口が配置できるうえ、ファンで強制送風されるため影響を受けにくい、というわけです。
第三種換気では、風上面からばかり空気が入ってきて、風下面の給気口からは空気が入ってこない、ということは大いにありえることだと思います。一方、第一種換気では給気にもファンを使うため、どんな状況でも確実に空気を取り込むことができます。
上記 2 つの意見は一見相反することのようですが、よく見るとそうでもありません。前者は換気量と漏気の総量の話であり、後者は各部屋の換気が計画どおりに行われるかどうかという分布や空気質の話であるからです。
第一種換気が効くのは C 値 2.0 未満?
第三種換気に高い気密性能が必要なことはわかりやすいのですが、第一種換気の場合、それ以上の高気密が必要なのか、それ以下でよいのかはよくわかりません。一般的な低気密住宅の場合、第三種換気が機能せず、給気口から空気が取り入れられることがないのは明らかですが、第一種では低気密でも給気口から空気が取り入れられることは確かです。
私が参考にしたのは、西方里見氏の著書『最高の断熱・エコ住宅をつくる方法』です。高気密住宅の C 値は 2.0 以下との記載があり(東北以北の旧省エネ基準のこと?)、第三種ではダクト式で1.5以下、ダクトレスで 1.0 以下の高気密が要求されると書かれているいっぽうで、第一種換気の気密要求レベルについては明確な記載がありません(第一種では部屋により換気量が不足する問題などが指摘されています)。
おそらく、第一種では 2.0 以下でもそれなりに機能する、ということなのでしょう。少なくとも私は都合よくそう解釈し、三井ホームの標準仕様レベルで妥協したしだいです(本当はもっと高い水準を要求したつもりでしたが…)。
もちろん、より高気密なほうが望ましいことは確かです。安全を取れば、C 値 0.3 以下を目指すべきだと思います。しかし、かなり高気密に詳しい工務店に注文するか、よほどの知識を付けて注文を付けない限り、それが難しい場合が多いのが日本の建築業界の現状だとも思います。
生活体験としては、C 値 1.0 を切っていないわが家の第一種換気では、換気量は不足していないと思います。以前の住宅より換気の効果を感じることはあっても、不足を感じることはありません。ただし、強風時に過剰に換気され、熱損失や湿度に影響しているのではないか、という疑念を払拭することはできません。強風時に寒いなど、体感でわかることはないのですが。
追加情報
換気設備の業界団体は、次の記事において、第一種熱交換換気が機能するために必要な C 値は 0.5 以下と主張しています。
また、ここにも触れられていますが、『本音のエコハウス』によると、第一種換気では温度差による自然換気量(換気回数/時間)は C 値の 0.1 倍程度の数字になるようです。つまり、C 値 が 2.0 なら 0.2 回/時間の換気が自然に行われるので、0.5 回の換気回数を実現するには機械換気は 0.3 回/時間 でよいということです。これでは熱交換の効果は期待できませんが。
しかし、これらは局所換気を考慮しておらず、実際にはトイレなどで常時排気を行っていると第一種換気でも圧力差ゼロではなく室内が負圧になっている可能性があり、さらに複雑です。
わが家を例に換気量を計算してみると、わが家の換気は平常時ですでに過剰であり、熱損失が無駄に多く発生しているという結論に達しました。
風圧換気、温度差換気、局所換気の存在と換気量の分布、すき間の存在などを考えると複雑すぎて頭が整理できませんが、とりあえず、高気密で適切な換気計画を行うことは重要でしょう。
さらに追記:少し整理できた気がしてきたので以下の記事を追加しました。
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