エアコン1台での全館冷房が全館暖房よりも難しい理由

松尾設計室の松尾和也先生(YouTube チャンネル)から Facebook で当サイトをご紹介いただき、嬉しい反面、第一線の専門の方々にも見られるようになり、変なことを書いていなかったかとソワソワしているさとるパパです。
コロナの影響による影響で更新が滞っていますが、今日も住宅の課題について考えてみたいと思います。素人個人の想像に過ぎないため、幅広い実測データや精密なシミュレーションに基づくものではないことをご了承ください(わかっているでしょうが…)。

さて本題です。
高断熱住宅では、熱収支だけを考えた場合、ルームエアコン 1 台で家中の冷暖房をまかなえることは、さんざん書いてきたとおりです。しかし、実際にいろいろ工夫されている方々のブログを読んでいると、1F のエアコン 1 台で家中を暖房することはできても、エアコン 1 台の冷房で家中を快適にするのは難しいという意見も見かけます。

わが家は各部屋にダクトで冷気を送る全館空調システムを採用しているため、あくまで想像ですが、この問題の原因と対策について考えてみました。

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エアコン 1 台冷房が難しい理由

エアコン 1 台での冷房が難しい理由について思い当たるのは以下の点です。

冷房期は暖房期よりも温度差に敏感

暖房より冷房が難しいと感じるのは、冷房期のほうが温度差を感じやすいことが大きいと思います。

室内で 4 ℃の温度差がある状況を考えてみてください。暖房期にそれぞれ 19℃と 23℃の部屋があるとすると、23℃が快適なのは言わずもがなですが、19℃の部屋に移動したとしても、大きな不満は感じないはずです。不満を感じるとすれば超快適な住宅に身体が慣れているせいであり、最低室温が 10℃を切るような住宅に住んでいた方にとっては、19℃でもずっと快適に感じることでしょう。

しかし冷房期に同じ 4 ℃の温度差がある場合はどうでしょうか。それぞれ 25 ℃と 29 ℃の部屋があるとすると、前者はやや寒く、後者は(よほど湿度を抑えられていない限り)暑く感じられ、いずれも不満に感じるのではないでしょうか。

物理的には同じ温度差であっても、夏のほうが温度差に敏感なため、より細かい温度調整が要求されるのだと思います。

そんなわけで、冷房では暖房以上に温度ムラが小さくなるように工夫する必要がありそうです。

暖房期と冷房期では熱が出入りする箇所が異なる

住宅において熱が出入りする箇所は、暖房期と冷房期とでは異なります。冬に寒い部屋と、夏に暑い部屋は同じとは限りません。このことも、冷房を難しくする要因だと思います。

暖房期は外気温より室温のほうが常にずっと高く、熱抵抗の小さい窓などを中心に熱が流出していきます。大窓付近が寒い傾向にありますが、日射熱が入る場合にはそれが緩和されます。

一方の冷房期は、外気温と室温の差はさほど大きくなく、断熱による影響は小さくなります(日射で高温になる屋根・壁面からの熱を断つための断熱は重要です)。日平均気温と室温にはほとんど差がないので、外気温の影響を受けにくい高断熱住宅では冷房も要らないのではないかと思ってしまいそうなくらいです。

それでも実際には、高断熱住宅ではエアコンは必要です。それは、西面を中心に侵入する日射熱と、LDK を中心に発生する内部発熱(人体、調理、家電など)が結構あるからでしょう。これらは共に、限られた時間に局所的に発生するため、冷房期は温度ムラが生じやすいのだと思われます。

これらの熱を放っておくと、断熱性能の高い住宅ほど室温に大きな影響が出ます。西面を中心に徹底して日射を遮蔽し、内部発熱は極力減らしたり、室温に影響しないよう排熱したりする必要がありそうです。

参考
夏の日射熱対策のカギは西日にあり。その理由と対策
冷房が効かない原因?内部発熱の影響をワット単位で考える

冷気は遠くに届かない?

エアコンの設置場所も重要です。冷暖房に使用するのなら、冬に寒い部屋からも、夏に暑い部屋からも遠くないことが望まれます。

私は以前、マンション暮らしのとき、熱帯夜にエアコンの風が直接当たらないよう、離れた部屋でエアコンを付けて寝るということを試したことがあります。中間地点に扇風機を置いてみたりといろいろやってみましたが、結果としてエアコンが影響するのは隣の部屋までで、廊下を経由して奥の部屋を冷やしたりするのは難しい、という結論に至りました。

この経験から、ルームエアコンでの全館冷房は、各部屋に接するホールのような空間にエアコンを設置しないと難しいのかな、と思います。各部屋までの距離が長いと難しいので、床面積が大きい住宅、細長い形状の住宅などは難易度が増すことでしょう。

つまり、ルームエアコンによる全館冷房の効率を重視すると、間取りが制約を受けることになります。かといって各部屋にエアコンを設置したほうがよいかというと、そうも思えません。高断熱住宅では、最小の 6 畳用エアコンであっても部屋単位だと能力過剰になりがちだからです。

解決策(想像)

考えてみた解決策は以下のとおりです。

エアコン台数を増やす

吹き抜けがあれば 1F と 2F の空気が均一になりやすく、温度差が小さくなることが期待できます。が、それだけで微妙な温度コントロールがうまくいくかどうかは少し心配です。吹き抜けの効果を否定するわけではありませんが、吹き抜け空間は 2F 建てなら階段に必ずあるものです。それに加えて、1F と 2F それぞれにエアコンを設置し、それぞれ設定温度をキメ細かくコントロールしたほうが、容易に快適な温度を実現できるのではないでしょうか。

実際に暮らしてみて、必要なければ一方だけを使用したり、時期によって使い分けたりすることもできます。

エアコンの台数が増えると電気代が増えそうな気がしますが、全館冷房するなら理論上は大差はないはずです。

1F と 2F のエアコンの能力の振り分けについては悩むところです。私なら、1F は家全体を暖房できる大き目(5 kW 前後?)のエアコン、2F は家半分を冷暖房できる程度の中くらい(2.8 kW 程度?)のエアコンを選択すると思います(家の条件によります。ただの思い付きですのでそのまま参考にしないでください)。

床下エアコンの住宅の場合、1F のエアコンが冷房にあまり向いていない(足元が冷える)ため、これを冷房に利用するかどうかで事情が変わりそうです。

安価な全館空調を採用する

全館空調システムを採用すれば、間取りの制限を減らして、ドアを閉めたままでの全室の空調が実現しやすくなります。ただし、(三井ホーム・スマートブリーズのような)従来の全館空調システムは 10kW~ などと容量が大きすぎて過剰であるうえ、高価格なのが難点です。

しかし最近では、ヒノキヤの Z 空調のように天井埋込型のダクト式エアコンを利用する安価な全館空調システムも出現しています。このようなシステムなら 2.8 kW x 2 台などの組み合わせも可能であり、各部屋に直接冷気を送ることができるので、効率的に温度差を小さくすることができるのではないでしょうか。

鎌田紀彦先生の『本音のエコハウス』(p.246)によると、新住協でも近年、ダイキンの住宅用ダクトエアコン(10畳用)を使用した全室暖冷房システムを模索しているそうです。

マッハシステムやYUCACOなど、エアコン1台の全館空調システムもあります。

安価な全館空調システムの普及は今後ますます期待できそうです。

参考 三井ホームの新しい全館空調システムについて【エアコン1台の全館空調いろいろ】

コメント

  1. さとるパパさん

    こんにちは。
    コロナ騒動真っ只中ですね。

    お元気されていますか?

    まさしく、記事の通りですね。
    すごく共感でした。

    全館(風)暖房よりも全館(風)冷房の方がはるかに難しい。
    新住協系の工務店さんでも試行錯誤のようです。

    小屋裏エアコンが難しいのはこの辺りですよね。

    最近は階間エアコンに取り組み始められていますが、
    これも一長一短があります。

    とくに難しいなと思うのが、2階の居室で扉を閉めるときです。

    暖房期は、居室の扉を閉めるのは就寝する時が多いので、
    この場合は布団に入るので、リビングなどの室温よりも1~2℃低い方が寝やすい。

    高気密・高断熱な家では室温の温度低下も少ないので、
    就寝中、室内トビラを閉めきっていても、さほど問題にならない。

    一方で、冷房期はそういかないんですよね。

    夏場で室内トビラを閉めきると、内部発熱もあり、
    居室の室温が上がる。

    寝苦しいんですよね。

    といっても、夜間の間ずっと室内トビラを開けっ放しというのも
    プライベートの観点で難がある。

    小屋裏エアコンも、冷房の場合、なかなか冷気が降りてこず、
    また水平方向には移動しにくい。

    一般的にはブースターファンを使いますが、
    音の問題もありますし、配管の結露の問題もある。

    全館風の冷房はかなり難易度が高いように思います。

    さとるパパさん邸のように専用の全館空調があれば、
    冷房期は最も快適ですね。

    記事の通り、Z空調やマッハシステム、yucacoなどが
    今のところ、そこそこの費用で快適な全館冷房を
    可能にできるシステムなのかなと思います。

    いつも勉強にさせて頂いています。
    ありがとうございます。

    松尾先生のお話は分かりやすいですね。
    更新を毎日、楽しみにしています(*^_^*)

    • さとるパパ より:

      お世話になっております。返信が遅くなり申し訳ありません。
      コロナは仕事には直接影響ないのですが、子供が大変ですね。松尾先生のYouTubeをじっくり見る時間がとれません。
      4/22の専門家会議は非現実的で単純なシミュレーションに固執するようになってしまったので、この状況は長引きそうな予感がしています。。

      冷房の難しさは、実践し、いろいろな高断熱住宅の相談を受けているくろーばーさんも感じるところなのですね。
      寝室には冷房が少しだけ確実に効けばよいのですが、ルームエアコンはそれが難しいですね。

      内部発熱が 200W ある 8 畳の寝室を空調無しで閉め切るとすると、Q=3 の部屋では外が 5℃低ければ熱収支は平衡状態になりますが、Q=1.5 では外が 10℃低い必要があります。
      つまり、(室温)-(外気温) < 10℃ だと寝室の室温は上がり続けてしまいます。

      ルームエアコンでも、室内ドアを開けて寝るか、 CF(循環ファン)で空調の効いた部屋との空気循環を強制すればよいと思いますが、実践例はあまり聞かないのでどうなんでしょう(一条ブロガーがやってそう)。
      ファンの音はサーキュレーターのように小型で回転数が多いとうるさいので、大きめをゆっくり回せば静かになる気がします。

      わが家ではこれまで特に意識することなく全館空調の恩恵を受けていたようですが、電気代が結構かかってます。これについて今度書きたいと思っています。

      • さとるパパさん

        お忙しい中、返信ありがとうございます。

        そうですね。

        居室と廊下をつなぐCFがあれば、夜間の内部発熱で
        ぎりぎりトントンぐらいまで持って行けそうな気がします。

        オーブルデザインの浅間先生もそのようにブログ記事を書かれていました。

        https://arbre-d.sakura.ne.jp/blog/2018/06/01/post-17023/comment-page-1/

        音だけが気になりますね。
        ファンの音もですが、居室内での音。

        主寝室では気にされる方もいらっしゃるかも。
        年代によって異なるかもですが(*^_^*)

        そういう意味では、さとるパパさん邸のような
        全館空調はやはり高性能ですよね。

        電気代だけ気になりますが(^_^;)
        また、全館空調の電気代の記事を楽しみにしています。

        我が家はまだ子どもが小さいので個室は使っていないので、
        室内扉を閉めきる機会がない感じです。

        子どもたちが思春期に入ったら、さてどうなるやら
        という感じです。

        一応、各居室にエアコン配管は通しているので、
        居室ごとのエアコンは設置できるようにはした感じです。

        仕事お忙しそうなので、時節柄、
        お身体には気を付けてお過ごしくださいね(^o^)/

        いつもありがとうございます。

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