日射熱の収支を考えると、「南面の窓が大きいほど良い」(夏の日射対策と耐震性確保は必要)というのはわかりますが、東西北面に関して最適な窓面積はどのくらいなのでしょうか。
なんとなく、「小さいほうがいいんだろうな」くらいに思っていたところ、松尾先生による以下の設計基準を見つけました。
これによると、
東西北面の窓はできるかぎり小さくする。(中略)南面以外の各部屋の窓は0.5㎡以内のものを一箇所というのを目安にする
とのこと。
明確・明瞭ですが、正直なところ、「小さっっっっ!」と驚きました。
0.5㎡以内というと、40cm x 120cm とかのサイズです。いくら何でも、やりすぎではないか、と。
これについて思ったことを、いくつかの観点から書いてみたいと思います。
採光・デザイン的にどうか
まず最初に思ったのは、暗すぎるのではないかということです。
わが家にはシャッターを閉めたときの窓面積が 0.5㎡ くらいになる居室がありますが、電気を付けないと、なかなか暗めです。
わが家の場合、最初に三井ホームの建築士の方に提案していただいた窓を打ち合わせで小型化したのですが、それでも各部屋 0.5 ㎡は余裕で超えています。
改めて初期の図面を確認してみると、南面以外でも、4畳半の部屋で 1.6㎡、6畳の部屋で 2.6㎡の窓が提案されていました(開放感のあるデザインを要望したせいかもしれません)。
また、以前、「ハウスメーカーのUA値から逆算して試算条件の住宅モデルを考えてみた」という記事で、マインクラフトで作成した高断熱モデル住宅の図を紹介しましたが、窓面積が極端に少ない住宅のデザインは微妙です。
南面の窓だけは大きいとはいえ、窓の少ない住宅でデザイン性を確保することは設計士の腕が問われそうです。
法的にどうか
建築基準法では採光のため、居室では床面積の 1/7 以上の窓面積が必要と規定されています。
窓面積が 0.5㎡ ということは、居室の床面積は 3.5㎡(約2畳)までということになってしまいます。
これについては、松尾設計室の追加のブログ記事で補足されていました。
0.5㎡ 以内というのは「1面につき」であり、なるべく北面に居室を配置しないようにするなどの工夫をしたうえで、例外措置をとる場合もあるようです。
居室の多くが南面にも面しているのなら問題ないし、北側の部屋で南面から採光する裏技もあります。
それでようやく安心すると同時に、そこまで考えている設計者がどれだけいるのだろうかと心配になりました。
窓が小さいことのメリットは多い
以上の課題さえクリアできれば、東西北面の窓が小さいことには多くのメリットがあります。
どんな高断熱仕様の住宅でも、単位面積当たりの熱貫流率を見ると、窓は壁より数段劣ります。
参考 部位別の断熱性能比較
外皮平均熱貫流率やQ値などの断熱性能は、窓面積が小さいほど改善することは明らかです。
また、窓が小さいと住宅全体の費用も安くなるし、人が通れないほど幅の狭い窓であれば、高額な防犯ガラスにする必要もなくなります。
冷房期の日射遮蔽においても、2Fなどは外部から日射遮蔽を行うことが難しかったりしますが、ガラス面積が小さければ日射の悪影響も比例して小さくなります。
窓が小さければ、外壁面の耐力壁を増やして耐震性を強化することも可能です。
そういうわけで、これから住宅を建てる方は、最初に紹介した窓の設計基準を参考に検討してみてはいかがでしょうか。
なお、個人的に、東西北面のそれぞれを小さくすべき優先度順に並べると、高い順に、西面、北面、東面だと思います。夏の西日は悪影響でも、気温の低い時間帯に入る朝日(東日)はそこまで不快でないし、暖房期に入る朝日は気持ちいいからです。隣家があるとどちらも日が入らなかったりしますが。。
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