気密性能(C値)は断熱性能(Q値)にどれだけ影響するか | さとるパパの住宅論

気密性能(C値)は断熱性能(Q値)にどれだけ影響するか

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「いくら高断熱でも気密性能が低いと意味がない」ということはよく言われます。
すきま風が多いと寒くなるのは、直感的にもわかることです。

では、気密性能(C 値)は断熱性能や暖房費などにどの程度影響するのでしょうか。

断熱性能というと最近は UA 値(外皮平均熱貫流率)ですが、UA 値は換気による熱損失を反映できません。
そこで、暖房費にほぼ比例する Q 値(熱損失係数)に対して C 値が及ぼす影響について考えてみました。

上記の用語がよくわからない場合は、以下の記事をご覧ください。

参考
C値(相当すき間面積)について
熱損失係数Q値とは?暖房費の手計算でわかる本当の意味
空調方式ごとの断熱レベル(Q 値)と暖冷房エネルギーの関係

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Q値にC値は影響しない?

実のところ、住宅会社などで算出される計算上の Q 値には、C 値は影響しません
Q 値計算において、換気分の熱損失量は次式で算出され、式に C 値が含まれないためです。

0.35 x n x B

0.35:空気容積比熱(Wh/m3K)※温湿度に左右され、0.335 としている式もあります。
n:換気回数(/h)
B:建物の気積(m3

この換気回数 n は、ほとんどの場合、設計上の換気回数 0.5 回/h で計算されます。
しかし実際の換気回数が 0.5 回/h で収まっているかどうかには疑問の余地があり、これに C 値が関係してきます。

参考)
この「建物の気積」は、(延床面積) x (天井高) で計算されます。
Q 値の計算は、各所の熱損失量を合計し、最後に延床面積で割ることによって行われます。
つまり、最終的に延床面積は相殺されるので、熱損失係数の内の換気分 Qv は次式で計算できます。

Qv = 0.35 x 0.5 x (天井高)

天井高に比例しますが、だいたい 2.4 m とすると、Qv は約 0.4 のほぼ定数と見なすことができます。

以下に、温暖地における HEAT20 G2 レベルの高断熱住宅と、H28 省エネ基準レベルの住宅の Q 値の内訳を示します。

換気分の熱損失が固定なら、G2 にするためには外皮(壁・窓・天井・床など)の熱損失を約半分にする必要があります。
また、Q 値の小さい高断熱住宅ほど Q 値に占める換気の割合が大きくなることもわかります。

熱交換換気の場合、これは 0.4 以下にできます。
計算上は、熱損失から熱回収分を減らした上で、換気用消費電力の増分も考慮した、「見かけの換気回数」を使用します。
単に熱回収分だけを減らし、Qv≒0.04 として Q 値を計算しちゃってるハウスメーカーもあるとかないとか…

参考 〇条工務店の Q 値計算が正規の方法ではない件

計算上と実際の違い

そういうわけで、計算上の Q 値は変わらなくても、実際の熱損失量には換気量や漏気量、C 値が関係しています。
暖房代に影響するのは、もちろん実際の熱損失量のほうです。

換気分の熱損失量は換気回数に比例する

計算式からわかるように、換気分の熱損失量は換気回数に比例します。
実際の換気回数が 0.5 回/h ではなく 1.0 回/h だとしたら、実際の熱損失量は計算上の 2 倍であり、Q 値換算で 0.8 前後になるということです。
計算上 Q=2.7 のはずが、実質 Q=3.1 ということになり、暖房を同じだけ効かすためには暖房費が 15% ほど増える計算になります。

この換気回数 1.0 回/h は非現実的なものではありません。
例えばダイニチの必要加湿量計算フォームでは、木造住宅の換気回数を 1 回/h と見込んでいます。

また、『本音のエコハウス』では、S55の省エネ基準で建てられた住宅は換気回数 1.5 回/h として計算すると暖房エネルギーが実測値と合うとされています。

H11の次世代省エネ基準で建てられた近年の住宅でようやく 0.5 回/h 程度になったとすると、ダイニチの見込みはその中間なので、妥当な感じがします。

自然換気量はC値に依存する

自然換気量とC値、換気方式の関係は「低気密・中気密は何がどう問題なのか」という記事に詳しく書いています。

簡単に書くと、自然換気は温度差換気と風圧換気に分解でき、温度差換気は C 値に比例します。
その量は、おおよそ、C 値 × 0.1 回/h に相当します。

これに加え、気密性が悪ければ悪いほど風の影響を強く受けるようになります。

自然換気量をQ値に換算すると…

自然換気量を C 値 × 0.1 回/h、0.5 回/h の換気分の熱損失係数 Qv を 0.4 とするなら、換気分の熱損失係数を C 値で表すことができます。
大雑把にいえば、熱損失係数の換気分は、0.4 + (C 値 x 0.08) と計算できます。

第三種換気の場合、C 値 2 以下程度であれば、この式に関係なく、総換気量は 0.5 回/h、Qv=0.4 程度に収まるものと思われます(詳細は「第三種換気で中気密の場合」を参照)。

なお、『ホントは安いエコハウス』で紹介されている必要暖房能力の計算式(こちらの記事で紹介しています)では、(Q値 + C値/10) という変数が含まれています。これは、C 値の 0.1 倍を Q 値と同列に扱えるということです。上記の計算ともほぼ合致します。

以上より、C 値の微妙な差で悩むことがあれば、C 値の影響力は Q 値の 1/10 程度と考えておけばよいでしょう。

風の影響

ただ、少し触れたように自然換気には風が影響し、風の影響は C 値が大きいほどに無視できない量になります。
数値的には風速や周囲の環境によって大きく左右されるので説明しづらいですが、風の影響を小さくするには少なくとも C 値は 2 以下、できれば 0.8 以下くらいがよいのかなと思います。

わが家の C 値は 1 台前半くらいですが、たまに風速 5 m/s くらいの日があると、暖房の効きが少しだけ弱く、足元が少しだけ寒い気がします。気のせいかもわからない微妙なところですが、強い風が吹く地域にお住いの場合は特に注意したほうがよいかもしれません。

また、低気密の悪影響は断熱性への影響に限らないので、その点もご注意ください。

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