屋根の断熱性能が低すぎるという問題を調べてみた結果

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ホントは安いエコハウス』を読んでいると、日本の住宅は「屋根の断熱性能が低すぎる」という問題が取り上げられていました。私はこれまで屋根の断熱まではあまり注意を払っていなかったので、これを機に調べてみました。

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屋根を高断熱にすべき理由

熱の移動を計算するときは外気温との温度差を比較するのが簡単ですが、実際には日射熱があるため、屋根や壁の表面温度は気温より高くなります。

特に屋根は、日射熱で非常に高温になることがあります。この熱が室内に伝わると、冬は問題ありませんが、夏は 2 階が暑いことになってしまいます。

このため、屋根には壁より高い断熱性能が必要になります。

どの程度の断熱性能が必要か

おおまかに言って、壁の 2 倍の断熱性能が必要になります。断熱材として一般的な高性能グラスウールで言うと、厚さ 20 cm ほどにもなります。ケチっているのか施工が大変なのかは不明ですが、一般的な工務店ではこれをきちんと守っているところが多くないそうです。

なぜ 2 倍か

なぜ 2 倍の断熱性能が必要なのでしょうか。

温暖地の場合、壁と室内の温度差は冬季で最大 25 ℃くらいですが、夏の屋根が 70 ℃になるとすると(*)、その室内(27℃)との温度差は 43 ℃にもなります(約 1.7 倍)。

同じ夏季だけで比較すると、壁の温度を仮に 40 ℃とすると室温との温度差は 13 度なので、屋根との温度差は壁との温度差の 3.3 倍にもなります。壁と屋根の断熱性能が同じ場合、屋根から流入する熱(単位面積当たり)が壁の 3.3 倍になるということです。

これを考えると、2 倍が最低というのも納得できるのではないでしょうか。

* 通気層下部の温度は屋根材や通気層によって差が出ます。瓦屋根の場合、通気層下部の温度はそこまで上がらないかもしれません。55 度くらい?

熱抵抗値 5 が最低ライン

熱抵抗値(㎡・K/W)とは、断熱材の厚み(m)を熱伝導率(W/(m・K))で割った値で、大きいほど断熱性能が高いことになります。

上記の本によると、屋根の断熱性能は、この熱抵抗値 5 が最低ラインとのことです。

参考までに、住宅金融支援機構の『断熱等性能等級4技術基準』(PDF)を見ると、屋根の断熱材の熱抵抗値の基準は温暖地で 4.6 以上となっています。

三井ホームの場合

三井ホームの屋根は、発泡ポリスチレン(EPS)を OSB(構造用面材)でサンドイッチしたダブルシールドパネルというものを採用しています。 通常は厚さ 6 インチ(EPS 140 mm)です。

高断熱と言っているし、発泡ポリスチレンなら高断熱そうだから問題ないだろうと特に調べずに安心していたのですが、実際に確認してみると、驚き、がっかりしました。

EPS とはいえ、熱伝導率は高性能グラスウールと同程度の 0.038(W/(m・K))しかなかったのです。つまり、ツーバイシックスの壁と同程度の断熱性能しかないのです。

熱抵抗値を見ると 3.962 しかありません(熱橋部を除く)。これでは、断熱性能等級 4 の技術基準すら満たしていません(等級 4 の資格がないわけではありません)。

上記の本で大きな問題とされているのはグラスウール 100 mm なので、それよりは 4 割増しになります。が、最低ラインとされている数値と比べると、2 割足りないことになります。

実はアップグレードが可能らしい

この件について、「三井ホームで高気密の家!?」のむらやんさんはいち早く気付き、8 インチの DSP パネルに変更したそうです(当該記事は現在ありません)。

さすがです。私は早く気付けなかったことを後悔しています。等級 4 の仕様くらいは三井ホームならクリアしているだろうと、勝手に期待しすぎていました。

これから三井ホームで建てる方には、この変更は私もお勧めです。というか、三井ホームは今すぐにでも 8 インチを標準仕様にすべきです。

追記:コメント欄で教えていただきましたが、8インチパネルはもう製造していないそうです。。

暑さの実感はない

ちなみに、我が家は一般的な 6 インチ仕様ですが、屋根からの熱の影響を感じることは特にありませんでした。これは、全館空調で 24 時間冷房していることが影響していると思われます。冷房を切った場合の暑さは違ってくることでしょう(気が向いたら確認します)。

生活上の影響は大きくないとはいえ、実際には見えない形で夏の冷房費に影響しているものと思われます。やはり熱抵抗値 5 以上は目指すべきなのでしょう。

私のように、もう家を建ててしまって手遅れという場合は、逆に冬は屋根の暖かさを享受できるかもしれないと考えることにしましょう。冬も断熱材追加によるメリットのほうが大きいかもしれませんが、そこまでは検討しないことにします。

追加記事屋根の断熱材は 140mm で足りない?猛暑日に測定した結果…

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コメント

  1. むらやん より:

    リンクありがとうございます! むらやんです。
    DSPの実際の性能は数値よりも良いような気がします。近くの住宅展示場で雪の溶け具合が他のメーカーより遅かった事からの想像ですが。数値が気になったのでアップグレートはしましたが…
    三井ホームは外壁を6インチ標準にした際に、屋根は8インチ標準にしても良かったと、私も思うのです… あるいはリクシルの屋根材のように、EPSではなく硬質ウレタンフォームにするべきですが、強度の問題があるのでしょうかね(可能なスパンは短いですので)?

    • さとるパパ より:

      コメントありがとうございます!
      体感ではよくわからない問題なので微妙ですが、外壁の断熱性能とバランスが取れていないのは良くないと思います。
      ウレタンフォームは経年劣化の問題がある(参考PDF)ので微妙ですが、せめて同じ EPS でもより熱伝導率の小さいグレードを採用するなどして欲しいものです。
      声を上げる人が多くなれば変わるかもしれないので、今後に期待します。

  2. けんとうちゅう より:

    いつも拝見させて頂いています。
    いろいろ勉強になり、助かります。
    8インチはもう生産していないらしく、代わりに屋根裏にロックウールを提案してもらいました。

    • さとるパパ より:

      情報提供ありがとうございます。
      今後この問題に向き合う方の参考になるかと存じます。

  3. Beethoven より:

    昨年9月から戸建て計画を進めてきた者です。

    現在、ハウスメーカーの最終候補に三井ホームも挙がっていまして、先日、長時間に渡り説明を聞いてきたところです。その時にDSPのU値について聞いたところ、本部の技術に問い合わせていただきU値 0.34W/㎡・K との回答をいただきました。

    なのでやはり「ちょっと足りないよなぁ・・・」という感想です。

    自分でも色々調べていますが中々に大変な上に、理想の家を建てられるメーカーは本当に存在するのか?という気分になっています。そして、このブログにもっと早くたどり着きたかった。

    • さとるパパ より:

      コメントありがとうございます。励みになります。
      記事中にリンクを貼っている三井ホーム子会社のページには6インチDSPの実質熱貫流率としてU値 0.263W/(m²K)と記載されているのですが、それより悪化しているのだとしたら気になるところです(まさか4インチが標準になったのでしょうか?)。
      ハウスメーカーで理想の家を建てるのは難しいですよね。三井ホームは特別大きな不満はないですが、屋根断熱のような不満は多々あります。

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