熱交換型第3種換気について調べてみた

換気システムには、排気・給気にそれぞれファンを使用する第一種換気(わが家)と、排気のみにファンを使用する第三種換気(一般的)があります。
外が寒くて暖房を使用しているときに換気すると、換気によって室内の熱が失われるわけですが(熱損失係数 Q 値換算で 0.4 ほど)、熱交換器(Wikipedia)を使用する熱交換換気では、換気による熱損失を回収できます。
近年、全館空調などとともに採用が増えている(?)第一種換気システムには、ほとんどの場合にこの熱交換換気が採用されています。
住宅では、熱交換換気といえば第一種換気、第一種換気といえば熱交換換気が当然といった感じです。

しかし第一種換気には問題点も多くあり、メンテナンスやコスト、ダクトの汚染などを考えると、第三種換気が優れている点も多くあります。

参考 第一種換気と第三種換気 – 特徴とコスト、デメリット

それならば、熱交換が可能な第三種換気システムがあればよいのでは?と思って調べてみました。

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熱交換型第三種換気が珍しい理由

熱交換型第三種換気について日本語で調べてみると、ほとんど情報が見つかりません。
見つかっても、どう考えても第一種と第三種を勘違いしている記述や、そんなもの存在しないという意見ばかりです。

「存在しない」という意見には、納得できる面もあります。
一般的な第三種換気では、各部屋にある自然給気口(レジスタ)から新鮮な外気を取り込み、汚れた室内空気は排気専用の換気扇から排出するので、熱交換できるような空気の交差箇所がないからです。熱交換できる第一種換気とは、空気の流路がまったく異なります。

このため、熱交換型第三種換気はふつうに考えればありえないものなのですが、私が「ある」と思ったのは、とある記事を読んだからで、次章で紹介します。

また、よく調べると、日本でも熱交換型第三種換気を行っている工務店も見つかりました(これも後述します)。

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スウェーデンでは熱交換型第三種換気が主流?

私が熱交換型第三種換気を知ったのは、日本輸入換気システム連盟(JVIA)による次のコラムを読んだからです。

本当の換気を知る第2回 熱回収換気(HRV)を薦めない理由~歴史の教訓~ | ブログ | JVIA

JVIA のコラムは第一種換気の問題点などを豊富な経験に基づいて解説していて個人的に信頼を置いているのですが、この記事では換気先進国スウェーデンの衝撃的な歴史が紹介されています。

詳細は読んでいただくとして、私が驚いたのは、第一種熱交換換気のブームが去ったスウェーデンの現在の新築住宅では熱交換型の第三種換気システムが主流であるということです。

とはいえ、第三種換気といっても、日本で主流の壁付けの換気扇(もっとも低コストな方式)ではなく、排気にダクトを使用するセントラル排気システムです(各部屋からムラなく換気できる方式)。この方式なら、暖かい室内空気を外に直接捨てるわけではないので、排気の熱を室内の一箇所で利用できるのでしょう。

また、熱交換型といっても、第一種の熱交換器のように「空気→空気」で(全)熱交換する方式ではなく、「空気→水」へと顕熱を回収する方式だそうです。熱交換といっても間違いではありませんが、熱回収といったほうがイメージしやすいかもしれません。

この記事によると、このような排気型換気システムは「水タンクに50%以上熱交換する」ことができるそうです。

熱交換率がそれほど高くないとはいえ、スウェーデンで主流となっているからには、空気の清浄さやコスパの観点などから総合的に優れている実用的な方法なのでしょう。

この熱回収型セントラル排気システムを日本で扱っている会社はないのかと思いましたが、日本語で現行の情報を見つけることはできませんでした。※

さらに調べると、スウェーデンエネルギー庁(Swedish Energy Agency)の Web サイトにこの換気システムに関連しそうな解説が見つかりました(英語)。

Exhaust air ventilation
In an exhaust air ventilation system, a fan runs continuously and this generates a slight vacuum in the house.

省庁のホームページが非常に簡潔でわかりやすいのが羨ましいですが、それはさておき、これによると、どうやら家の排気空気をヒートポンプに接続し、そこで熱を回収して温水暖房などに利用しているようです。寒冷地では外にヒートポンプを置いても外気の温度が低すぎて使いにくいので、室内に設置し、それに換気の排気を活用しているのでしょう。

日本のエコキュートのことは詳しく知らず、室内設置はできるようですが、換気と併せたこういう使い方は難しそうです。

※ スウェーデンでは NIBE社などが Exhaust Air Heat Pump(排気熱回収型ヒートポンプ)を販売しており、NIBE社は三菱重工と提携していたり、ガデリウス社がNIBE社の日本向けモデルを2011年に発表したり(現在は不明)しているようです。

ついでに、海外の情報を調べていたら、日本語化されていない興味深い情報を見つけたので、以下にリンクだけ貼っておきます(英語)。

全熱交換器だけではない、多種様々な Heat Recovery Ventilation(HRV、熱回収換気)

家庭の温排水の熱を回収し、その熱で水道水の温度を予熱して利用するシステム

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日本の熱交換型第三種換気

先ほど日本においても熱交換型第三種換気システムを見つけたと書きましたが、それは以下で解説されている、「スーパー澄家」です。

スーパー澄家 | 光輝建設
健康的な室内環境に換気が大切な理由 最近ではシックハウス症候群や化学物質過敏症といった、室内の空気質を原因とす

北海道の工務店で、地中熱を利用しつつ、セントラル排気による室内熱も回収するとのこと。給気は室内各所の自然給気口からではなく、一箇所から床下経由で取り込むようです。

地熱を利用して外気を取り込むというのは Wikipedia の Heat Recovery Ventilation の項目にも下図が紹介されていたので、世界的にも注目されている方法のようです。

Ventilation unit with heat pump and ground - cooling

この「スーパー澄家」方式を見て、まず疑問に思ったのは、「負圧をかけたときに隙間からではなくちゃんと1カ所の給気口から空気が取り込まれるのだろうか」ということでした。第三種換気では、C値 1.0 でも半分は自然給気口ではなく隙間から外気が入ってしまうというのに、ダクトを含めると抵抗の大きい給気口1カ所のみから空気を取り込むようにするには、かなりの高気密が要求されます。

と思ったら、こちらの工務店では C 値 0.1~0.5 を確保しているようです。さすが北海道、高気密高断熱のレベルが違います。

実測された熱交換効率は 57% で、全熱交換型第一種換気の熱交換効率と比べると低く感じるかもしれませんが、そもそも第一種換気には特有の課題もあるし、通常の第三種換気は 0% なわけで、十分な差です。
温暖地に向くかは不明ですが、総合的には興味深い方式だと思いました。

関連 第一種換気の熱交換率は本当に90%もある?

日本の温暖地ではどうか?

これまでに紹介した熱交換型第三種換気は、どれも寒冷地で採用されているものです。
寒冷地では水道水の水温が低く、水を温めるのにも大きなエネルギーを要するので、地熱や排気空気・排水の熱を利用するのが合理的になるのもわかる気がします。

しかし、東京などの温暖地ではやはり事情が異なります。真冬でも水道水の水温は8℃くらいはあるし、外気が氷点下になることは少ないので、ヒートポンプは外に置くことができます(騒音の観点からは外が良い?)。

また、夏は暑くなるので、暖房だけでなく冷房機器のことも考えなくてはならず、そうするとエアコンのほうが汎用性があります。

それに、給湯エネルギーは、太陽熱温水器や、太陽光発電+エコキュートでまかなうこともできます。

そういうわけで、現時点では(※)、温暖地で熱交換型第3種換気システムを採用することは、まだあまり現実的ではないかもしれません。円安なのに輸入品に頼る必要がありそうですし。

なお、第3種換気で換気による熱損失を減らす方法としては、冬季の換気量を減らす方法もあります。換気量を4割減らすことができれば、換気による熱損失も4割減らすことができるので、高効率な熱交換換気と同様の効果が期待できます。

参考 換気回数はもっと少なくていい?

※(補足)「現時点では」というのは、将来的には期待できる可能性もあると思っています。

熱回収技術は一般に、温度差が大きいほど、エネルギー価格が高いほど、費用対効果が改善します
つまり、どの仕組みがベストかは、地域や経済情勢によって変わってくるということです。

なお、脱炭素の観点からは、一見、省エネと同時に各建物でのエネルギー自給を目指すことが望ましいように見えます。そのためには、費用対効果をいくらか度外視してでも、省エネ(熱回収)、再エネ発電や蓄電池、電気自動車を推進する、というのが、行政とか woke な人々が理想としている方向性です。

しかし、太陽光や風力などのほとんどの再エネは需要に合わせて供給量を調整することができず、バックアップ(蓄電池や他の電源など)が必要です。そのため、再エネの比重を高めれば高めるほどにエネルギーの統合費用は高くなってしまいます(下図はエネ庁のPDF資料より)。

各家庭で考えてみても、エネルギーを自給しようとすればするほど、設備の費用が高くなるのは当然です。エネルギー価格が高騰すれば元は取れるかもしれませんが、そのときに被害を受けるのは、高い設備を購入できない低所得層です。設備にしても光熱費にしても、エネルギーにかかる費用が増えれば余裕資金は減るので、生活はただ貧しくなるだけです。日本の製造業を支えることもできません。

それでも脱炭素を達成しなければならないとすれば、二酸化炭素を排出しない安定したエネルギー源、すなわち原子力発電を推進するほかありません(ほかに方法があれば何でもよいです)。原子力発電の比重を高め、エネルギー価格を程々に抑えることができるなら、各家庭で省エネやエネルギー自給に励む必要性もなくなります。

この頃は電気代が高くなってきて、太陽光発電の自家消費などのメリットが大きく感じられるようになりましたが、それは決して望ましい状況ではなく、国としては本来、安価で安定したエネルギー供給を目指すべきであると私は思います。

とはいえ、「再エネ最優先の原則」などといってる日本が今後うまく舵取りできるとも思えず、ドイツ同様、エネルギー政策等の混乱や価格高騰が続くと予想しています。結局のところ、日本に住む個人としては、状況に応じて補助金などを活用し、省エネ・創エネを図ったほうが、うまく乗り切れるのかもしれません。本望ではありませんが。

関連 住宅を高断熱化しても脱炭素にはならない

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