在来工法とツーバイフォーのいいとこどりの工法?

木造軸組工法で、壁全面に構造用合板などの面材を張る工法(以下、パネル工法とします)を採用している住宅会社は、よく、「在来工法とツーバイフォーのいいとこどりの工法」というような説明をしています。

ツーバイフォーは、阪神大震災後に増えてきたパネル工法と比べると、目新しさがありません。一方、より新しいパネル工法は一見するとツーバイフォーと同じような外見の構造ですが、加えて太い柱や梁が使われているので、さらに優れた工法であるかのように感じてしまう人は多いのではないかと思います。

しかし私は、このような説明を見るたびに、いつももどかしい気持ちになります。

在来工法の筋交いが頼りないので替わりに面材で補強しているだけのパネル工法と、枠材と面材を組み合わせた壁で最初から構成していくツーバイフォー工法(枠組壁工法)とは、まったくの別者であり、パネル工法が一概に優れているとは言えないからです。

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壁倍率の比較

耐震性の面で重要な耐力壁の強度は、壁倍率で表されます。大雑把に言えば、地震などの水平力に対する耐震性は、(壁倍率) × (壁量) で決まります。

軸組工法(パネル工法)の場合、構造用合板を使用する場合の壁倍率は、2.5 倍です。

ツーバイフォーの場合、一般的な 2 級構造用合板 9mm 厚を使用して、壁倍率は 3.0 倍です。

ここにも差はありますが、それだけではありません。ツーバイフォーでは内側にせっこうボード(1.0 倍)を張るので、両面で合わせて 4.0 倍の壁倍率がふつうに出るのです。

つまり、壁の量が同じなら、ツーバイフォーのほうがパネル工法よりも約 1.6 倍も耐震性が高いことになるのです。

ツーバイフォーでは、1 級の構造用合板(3.5 倍)を使用したり、構造用せっこうボード(A 種 1.7 倍)を使用したりすれば、最高倍率の 5.0 倍も可能です。

また、パネル工法でも、スーパーウォール工法や一条夢の家 I-HEAD 構法など、壁倍率 5.0 倍を実現しているところもあります。全箇所で 5.0 倍になるわけではなさそうですが。

地震の結果

壁倍率だけでは説得力に欠けるので、過去の震災や耐震実験の結果についても検討してみましょう。

まず、過去の震災の結果について、ツーバイフォーに関するデータは日本ツーバイフォー建築協会でまとめられています

熊本地震の記事でも紹介しているように、ツーバイフォーではどの震災でも全壊・半壊がほとんどないだけでなく、95% 以上の住宅で当面修理をしなくても居住に支障がないレベルの損傷しか受けていません。

いっぽう、パネル工法のハウスメーカーなどでこのような調査データを公開しているところはありません(倒壊しなくても揺れる鉄骨住宅も同様です)。

なお、パネル工法でもスーパーウォール工法は、過去に全壊なしとの結果までは公表しており、さすがの壁強度です。

耐震実験においては、ツーバイフォーを代表する三井ホームが最大 5,000 gal を超える実験を行っているほか多数の強震実験(スウェーデンハウス、グランツーユーなど)が行われているのに対し、パネル工法では阪神大震災(900 gal 未満)レベルの実験しか行われていません(シャーウッド、アイフルホームなど)。調べたなかの最大は、一条工務店の夢の家の実験で、それでも阪神の約 1.5 倍です。より強い振動を加えたときの動画を公開する自信がないのでしょうか。

また、パネル工法では、地震や耐震実験で強く加振されると、壁に亀裂が入るなどの被害が散見されます。完全な壁構造のツーバイフォーと比較して、力を分散して受けることができていない結果ではないでしょうか。

以上から、耐震性能に関して、パネル工法がツーバイフォーに勝っているとは言えない、というのが私の見解です。

パネル工法のメリット

しかしながら、パネル工法にはツーバイフォーにないメリットもあります。

それは、軸組工法に慣れている工務店が多いことと、設計の自由度の高さです。

ツーバイフォーでは壁を基本に構成するため、壁の配置や割合などについてさまざまな制約がありますが、パネル工法ではそれがありません。

それゆえに大開口をつくったりすることも可能ですが、その分、耐震性が落ちる可能性についても併せて検討し、対策を考えたほうがよいかもしれません。

参考
ツーバイシックス工法の優れた特長とデメリット
積水ハウス・シャーウッドは本当に地震に強いのか
面構造と軸組工法

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